Vol.85
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左から、小西絵美弁護士(75期)、末吉 亙弁護士(35期)、佐藤安紘弁護士(62期)、辻川昌徳弁護士(59期)。スタッフ2名を加えて全6名の陣容

左から、小西絵美弁護士(75期)、末吉 亙弁護士(35期)、佐藤安紘弁護士(62期)、辻川昌徳弁護士(59期)。スタッフ2名を加えて全6名の陣容

STYLE OF WORK

#173

KTS法律事務所

世代・専門・経験の異なる弁護士が、複眼的思考で問題解決を図っていく

紛争解決に大きな強み

2020年1月に、知的財産法分野で知られる末吉亙弁護士と佐藤安紘弁護士が共同設立したKTS法律事務所。立ち上げの経緯を、両弁護士が教えてくれた。

「前事務所で約10年、様々な経験を積ませてもらいました。お客さまとのコミュニケーションの機会をもっと増やしていきたい、事務所を運営してみたいという思いが強くなり、末吉弁護士に相談したことが、きっかけになりました」(佐藤弁護士)

「私は前所属先である潮見坂綜合法律事務所を皆で設立した時から、『60歳になったら次代に事務所を譲り、独立する』と、宣言していました。予定より少し遅れたものの、佐藤弁護士から相談を受け、一緒に事務所をつくることにしました。彼は、私が東京大学法科大学院で教鞭を執っていた時のゼミ生で、仕事上の付き合いも長い。気心が知れているし、仕事ぶりもよく知っているので、素晴らしい事務所がつくれると確信してスタートしました」(末吉弁護士)

同事務所は民事紛争、行政紛争、刑事紛争などの紛争解決に強みを持ち、メーカー、金融、ソフトウエア・システム関連、およびベンチャー企業など、多様な企業・機関の企業法務をサポートしている。これまで関与した案件について、佐藤弁護士にうかがった。

「知的財産法分野の一例としては、事務所設立後に関与した、特許訴訟の大型案件があります。クライアントは外国企業で、日本で侵害訴訟が係属したものです。日本のみならず、海外でも同時に複数の訴訟が併行したため、現地の法律事務所と連携して、各国の訴訟と歩調を合わせる必要のある難しい案件でした。手続法上の論点や侵害論に入る前の分析など、それらをしっかり鑑みた争点や主張を末吉弁護士と日々議論。私たちだけでなく知財に強い法律事務所、特許事務所ともコラボレーションしながら、全員で密に合議を繰り返した印象深い仕事となりました」

  • KTS法律事務所
    事務所名は「神田・東京・サステナブルの頭文字をお借りして、『この地で未来に向けて確固たる戦略・変革を描いていただけるようなアドバイスを』という思いで名付けた」と、末吉弁護士・佐藤弁護士。フロアを増床し、今後の陣容拡大に向けた準備も完了。新しいフロアはすっきりクールな印象のデザインとなっている
  • KTS法律事務所
    設立時からのフロアはこだわりの欧風デザイン

仲間が増えてM&Aなども得意分野に

紛争解決、会社法、経済法、労働法といった伝統的な分野はもとより、不正競争防止法などの知財分野では特に「技術、文化、国などの様々な要因が絡む最先端の問題」に挑戦し続けている同事務所。23年1月に、辻川昌徳弁護士と、小西絵美弁護士(75期)が新たに参画し、4名体制となった。辻川弁護士はこれまで、国内外の大手企業、中小企業、ベンチャー、医療法人、PEファンドなどをクライアントとする多様なM&Aを取り扱ってきた。独占禁止法、国際紛争、契約紛争、労働問題といった多数の訴訟案件にも携わり、顧問業務や社外役員の経験も豊富だ。辻川弁護士が、意気込みなどを語ってくれた。

「M&A、訴訟、ゼネラルコーポレートなど、私が得意とする分野を中心に、依頼者となる経営者の方々とこれまで以上にコミュニケーションを密に取り、きめ細やかな対応をしていきたいと思っています。当事務所に参画後、『依頼者がたどり着きたいゴールはどこか?』『“その先”で必要となるサービスは何か?』などについてじっくり考える時間が持てています。多くの対話を重ね、依頼者にとって有益で、メリハリのあるアドバイスを提供していく所存です」

そんな辻川弁護士のクライアントには、ベンチャー企業も多い。

「立ち上げ時から顧問としてお手伝いしているベンチャー企業が、資金調達などを行って成長していく過程をそばで見られることに大きな喜びを感じます。そうした醍醐味を、小西弁護士にもたくさん経験してほしいと思います」

実際、辻川弁護士は小西弁護士とは様々な案件で協働している。

「小西弁護士には案件の最初から最後までかかわってもらい、意見をどんどん述べてもらいます。小規模事務所ならではの二人三脚といったところですね。私自身、小西弁護士から学ぶことがたくさんあり、新たな刺激や発見に満ちた毎日です。当事務所は小規模ですが、我々には、豊富な知見と確かな実績があります。その実務をダイレクトに学べる環境であることは、若手弁護士にとって魅力的だと思います」

小西弁護士は、厚生労働省所管の独立行政法人、特許事務所、法律事務所等の勤務を経て司法試験に合格し、弁護士となったユニークな経歴の持ち主だ。

「知的財産法分野に興味があって当事務所に入所しました。今後もそこを軸として持ちつつ、プラスアルファの得意分野を見つけていきたいです。現在はIT関連の技術がかかわる法分野に興味がありますが、日々の業務に取り組むなかで、事務所の新たな軸となるようなものを見つけていきたいと思います」

末吉弁護士は、小西弁護士に関して、次のように語る。

「小西弁護士は当事務所に入所するまでの間に、10年以上の社会人経験、異業種経験を有しています。過去のキャリアをハンデではなく、きちんと弁護士としての今につなげていることに大変感心しました。彼女には、そのキャリアをぜひ“自分自身のウリ”として、これからも生かし続けてほしいと願っています」

KTS法律事務所
写真中央の赤い柱は、末吉弁護士の大のお気に入り。「邪魔っけだった柱が、内装デザイナーのアイデアでおしゃれに変身。イタリアから取り寄せたタイルを貼った存在感ある柱は、今や事務所のシンボルです!」(末吉弁護士)

多様な人材が集うことの大切さ

同事務所の強みについて、佐藤弁護士にあらためてうかがった。

「現在は弁護士4人の事務所ですから、重要な論点に関する合議はその場ですぐに行えます。ゆえに、お客さまへの対応をスピーディに行えることが、まず強みの一つ。それでいて私たちは30期代・50期代・60期代・70期代と、世代・経験・価値観が異なる弁護士ですので、少人数ながらも多面的な分析ができているということが、もう一つの強みです。紛争を例にとると、裁判所では裁判官が3名で見て評価しますよね。これに象徴されるように、法律の世界では、一つの物事を複数の視点から捉えて、『どの視点に最も説得力があるか』が重要になることが多いと、私は考えます。ですから、これから事務所が拡大しても、世代や価値観が異なる多様な弁護士で構成される事務所であること、たくさん合議を行って、それぞれの主張を述べ合える風土の事務所を、維持していきたいと思います」

辻川弁護士も佐藤弁護士と同様に、「若い時から、主任として案件判断できる立場で仕事をしてもらい、年中議論することで、私たちも若手と一緒に成長していくといった風土を大切にしたい」と付け加える。

末吉弁護士は、「一人で複数の視点を持って評価することはなかなか難しい。しかし合議のうえで複数の視点を鳥瞰して、どれが最も説得力があるかを自分で判断できることは大切です。自ら合議を持ちかけ、きちんと判断できる弁護士をこの事務所で育てていきたいですね」と語ってくれた。

そのように、若手弁護士が主体的に仕事に臨んでいけるよう、同事務所では留学制度の実施や、個人事件受任の経費納入なしを掲げている。

「留学制度は、あらゆる経験を自分の実にして、人として成長してほしいという思いがあるから。経費納入なしは、私自身が駆け出しの頃、そのように育てていただいたから。自分で責任を持ってやり遂げなくてはならない究極形が個人事件ですが、若いうちは『なんでもできる』と思いがちで、“自分のリスク”に気づけないものです。リスクを意識して『ここは合議しておこう』といった感覚を身に付けてもらいたいので、『お金はいらないから相談してごらん』というスタンスで、経費納入なしとなっているのです」(末吉弁護士)

最後に、辻川弁護士に、これから事務所をどのように発展させていきたいかをうかがった。

「今は、事務所の土台を全員で築いていこうという段階。所属弁護士4名とスタッフ2名で、事務所理念について、話し合っているところです。我々には、弁護士としてこれまでの経験で培ってきた仕事の進め方や働き方へのこだわり、伝統、あるいは共通の価値観があります。それらを大切にしながら議論を積み重ね、自由に、新しい事務所、新しい仕事を創造していきたいと思います。そんな未来を一緒につくっていくことにワクワクできる仲間を増やしていきたいですね」

Editor's Focus!

末吉弁護士の師は、故・古曳正夫弁護士(森綜合法律事務所ファウンダーの一人)。「教育者でもあった古曳弁護士の教え、『若い世代に恩返しをしていく』が、私の根底にある」と、末吉弁護士。目標は「所員全員の“コラボレーション”(リーダーシップ型組織の対抗概念として)で、事務所を盛り立てていくこと」と語る

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