Vol.85
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前列左から、井上雅之弁護士(64期)、大友秀剛弁護士(64期)、秋野卓生弁護士(50期)、田中 敦弁護士(67期)。後列左から、永瀬英一郎弁護士(58期)、吉川幹司弁護士(60期)、滝澤啓太弁護士(68期)、丹羽 響弁護士(73期)。ほか6名の弁護士が所属

前列左から、井上雅之弁護士(64期)、大友秀剛弁護士(64期)、秋野卓生弁護士(50期)、田中 敦弁護士(67期)。後列左から、永瀬英一郎弁護士(58期)、吉川幹司弁護士(60期)、滝澤啓太弁護士(68期)、丹羽 響弁護士(73期)。ほか6名の弁護士が所属

STYLE OF WORK

#175

弁護士法人匠総合法律事務所

建築訴訟をはじめ、IT・個人情報保護法、倒産法など、多様な分野の“匠”を育成

建設業界の隅々まで法の光を照らす

東京、大阪、名古屋、仙台、福岡に拠点を置く弁護士法人匠総合法律事務所。前身となる秋野卓生弁護士の個人事務所時代から、住宅・建築・土木・設計・不動産分野に強い事務所として成長してきた。代表の秋野弁護士は、1998年の弁護士1年目から第二東京弁護士会の消費者問題対策委員会土地住宅部会に所属し、同委員会内にシックハウス被害者救済ワーキンググループを設立、住宅品質確保法の施行準備などを行う機関で判例調査業務を手伝った。「専門性を持ちたい」と考えて取り組んだ活動だったが、「住宅関連業界は、手がける弁護士が当時少なく、若手弁護士にも温かかった」と言う。

「建築紛争は難しい技術用語を理解しなくてはならないし、訴額も大小様々で、ありていにいえば手間がかかる。しかし、労を惜しまず全力で取り組めば、業界の知見が深まり、キャリアが浅い若手弁護士でも実力者としての評価が得られる、やりがいのある分野です。私自身が若手だった頃にそこに魅力を感じて今に至っています。また、建築業界の国内労働人口は500万人を超えます。法の光で照らさなくてはならない領域がたくさんあり、これからも、弁護士がサポートできることはまだまだあると思っています」

そのように、特定の業界に強みを持つ事務所ならではの解決例がある。2019年に千葉県で起きた、市原ゴルフガーデンの鉄柱倒壊事故がその一例だ。

「台風の強風で倒壊したゴルフ練習場の鉄柱が、多数棟の近隣住宅に被害を与えた事件。事後の対応や補償をめぐって被災住民とゴルフ練習場側に軋轢が生じていたなか、ゴルフ練習場側の2人目の代理人として入りました。ゴルフ練習場を更地にしたうえで売却し、住民への補償費に充てることで、約1年かけて全住民と和解。この時は、千葉県弁護士会の『災害ADR』を選択しました。まず、人身・建物、ネット飛散、車両と、被害項目を3つに分類。千葉県弁護士会災害ADRのあっせん人の弁護士の皆さんが住民の皆さまに真摯に対応くださったおかげで、依頼者も住民も納得のいくかたちで解決することができました」

「争う趣旨ではなかった」ことが、災害ADRを選択した理由だ。

「東日本大震災発生後、岩手県庁の依頼を受け、現地で防災集団移転促進事業(高台移転)の法律相談に携わりました。震災という不可抗力にもかかわらず、裁判に発展する案件もありましたが、ふたを開けてみれば“足して2で割る解決”、いわゆる和解が多かったのです。『防ぎようのなかった損害で、誰もが争いたくなかった』裁判を、弁護士である私が提案してしまっていたわけです。その反省を踏まえ、5年後の熊本地震の処理の際は、『裁判はしません。互譲の精神で、手を携えていきましょう』といった方針を貫き、様々な揉め事を早期解決に導くことができました。そういった経験を経て、千葉の案件でもゴルフ練習場側と住民側で手を携えていくことが最善であると考え、災害ADRを活用したのです」

一方で、「地裁で負けて高裁で戦うにあたり、業界により詳しい弁護士に頼みたい」という依頼も多く受ける。「『負けられない』という依頼者の本気に応えるかたちで、しっかり結果を残せてきたと思う」と、秋野弁護士。例えば、『判例時報』2199号に載る「太陽光反射光逆転勝訴判決」もその一つだ。

「『太陽光パネルの反射がまぶしい』という隣地建物所有者が、建て主と建設会社に対して、不法行為に基づく損害賠償請求を行ったものです。一審で、パネル撤去と損害賠償請求の一部が認められる判決が出ましたが、それが確定してしまうと、太陽光パネルの設置を推進している住宅関連業界全体に多大な影響が及ぶ。そこで各ハウスメーカーの法務担当者から相談があり、この案件に入りました。春夏秋冬の太陽軌道を計算するなどして、太陽光パネルの反射光による被害は受忍限度を超えるものではないことを突き止め、一審判決のうち、建設会社の敗訴部分の取り消しと同社への請求棄却を果たし、逆転勝訴となりました」

ほかにも21年に群馬県渋川市から、運動場の擁壁倒壊は施工不良が原因であると指名停止措置を受けた建設会社の代理人として自治体側による指名停止措置を違法と断じる勝訴判決も勝ち取っている。

「構造欠陥や不同沈下などの重大な瑕疵や建築基準法の解釈が問題となる訴訟など、高度な建築的知識を要求される紛争案件についての実績を豊富に有していることも私たちの強みです」

弁護士法人匠総合法律事務所
同事務所では、コンテンツマーケティングを重視。セミナーの開催や、建築業界に関連する法律情報を発信する月刊誌の発行などを行っている

若手弁護士が主体的に活躍

同事務所には、住宅・建築・土木・設計不動産分野の紛争解決をはじめ、企業法務、個人情報保護法対応やIT関連業務への助言、事業再生・倒産を得意とする弁護士が所属。ちなみにパートナー弁護士の平均年齢は44歳で、50期代後半から60期代の弁護士が中核だ。

「『事務所の特徴は何か』と聞かれたら、住宅・建築関連分野が得意であることよりも、『所属する弁護士が優秀であること』と、自信をもって答えています。例えば前述の渋川市の指名停止措置の裁判では、滝澤弁護士が入所1年目から主任弁護士として地裁・高裁と勝訴判決を勝ち取ってくれました。また、震災復興関連、インターネットの誹謗中傷、個人情報保護法対応など、依頼者の要望はもちろん、時流に応じた法的問題についても、若手弁護士が主体的に取り組んでいます。紛争事案においては、当事務所の弁護士は所属3年で多くの勝訴・勝訴的和解の実績を残しています」

同事務所では、新人弁護士も、建築紛争や知的財産事件など難易度の高い事件で主任を務める。

「修習期に関係なく、一つの事件を最初から最後まで担当してもらいます。理由は、事件の全領域を担当することの積み重ねで、パートナーになるために必要な事件処理のノウハウが身につくと考えるからです。ですから当事務所では、いわゆる“かばん持ち”のような下積みは一切ありません。誰かの下につくのではなく、自らが主体的に案件処理することをモットーとしています。まずは“3年で一人前”を目標に、幅広い分野の訴訟案件を担当し、5年目頃には自分の得意分野を確立、10年経過時にパートナーになってもらいたい。妥協を許さず、高いプロ意識を持って、一人前から“一流”を目指してほしいと思っています」

とはいえ、難易度の高い事件を一人きりでこなすわけではない。当該分野で経験を積んでいる先輩弁護士が指導者として寄り添い、事件処理方針に関するミーティングを全体で行う。また、新法対応を中心とした研修を毎月1回開催し、弁護士間の交流を密にする。

「事務所の風土として、一体感が強いと思います。そして事務所運営をブラックボックスにしないことも掲げており、売り上げ数字もオープンです。弁護士が対等な立場で、切磋琢磨し合える環境づくりに注力しているのです」

弁護士法人匠総合法律事務所
「正義の追求が第一。そのうえでレベルの高い組織内で互いに尊敬し合い、質の高い業務を遂行」の理念のもと、スタッフ、弁護士の一体感を強化

新たな価値の創造と効率性の飛躍的向上

秋野弁護士は、事務所の事業目標を「常に新たな価値を創造し、効率性の飛躍的向上が果たせる法律事務所に成長させること」と語る。

「当事務所は、31年に設立30周年を迎えます。それに向けて今年、事業計画をつくりました。そのなかで新たな価値の創造につながる戦略の一つとして準備を始めたのが、生成AIを用いた法律に関する質問への自動回答サービスです。設立以来、“若手弁護士による労を惜しまない対応”を事務所の価値としており、法律相談対応に際し、法律見解書(リーガルオピニオン)の作成を、所内のルールのもと全弁護士が行ってきました。約20年で蓄積された4000通を超えるリーガルオピニオンを有効活用していきます。効率性の向上という点では、リーガルテックの活用を進めています。これは所内の効率性の向上もさることながら、労働人口500万人と言われる建築業界を支える職人の方々――法の光で照らせていない層の方々にもリーガルサービスを届けたいという思いがあるからです。例えば一人親方の職人など、弁護士費用が支払えないのでリーガルサービスを受けられない大勢の人たちに、我々の知識をアウトリーチしていきたい。そのようにして、建築業界内での社会貢献を果たしつつ、永続性のある事務所を全員で運営していく所存です」

Editor's Focus!

「匠と呼ばれる職人の集団であり続けたいと考え、この事務所名にしました」と秋野弁護士。独立したのは弁護士3年目。「依頼者や相手方から、若手弁護士と見られることで苦労したこともあった」からこそ、“若手弁護士による労を惜しまない対応”を事務所の価値として、それを理解してくれるクライアントを大切にしている

弁護士法人匠総合法律事務所