大手企業の営業職から弁護士を目指し、司法試験勉強中の体力づくりで始めたボクシングではプロテストも受けた――そんなユニークな経歴を持つ若井亮弁護士。都内法律事務所で実務を学んだ後、2019年に若井綜合法律事務所を開業した。若井弁護士に事務所の特徴をうかがった。
「一般民事案件のなかでも、DV、金銭トラブル、ストーカー被害といった男女トラブル、不当要求・クレーム対策が特に多いです。事務所の土台づくりのため、個人クライアントにフォーカス。さらにターゲットを絞り込み、詐欺被害金の返金、繁華街でのトラブル、ホストクラブの売掛金整理といったサービスも開発しました。実績がない事務所なので、まず“依頼してもらえるお客さまを探して、斬りこむ”ことからスタートせざるをえなかったのです。そうした類型をベースに、不貞慰謝料請求・被請求の事案、離婚、刑事事件、相続、不動産トラブル、インターネット上でのトラブル、債権回収と、幅広く展開し、毎月約1500件の新規ご相談があります」
これまで取り扱ってきた案件の一例を若井弁護士が教えてくれた。
「詐欺被害金返金について、警察に被害相談しても対応してもらえず、証拠がないことを理由にほかの事務所では依頼を受けてもらえなかったという相談者がいました。相談者の話を聞くなかで、プロによる組織的犯行ではなく、回収可能性もゼロではないと判断して受任。身元の特定と証拠の収集をすべく、相手を喫茶店に呼び出してもらい、隣席で待機。依頼者にチャットツールで指示を送りながら、詐欺の全容について録音・録画をして証拠を収集し、収集が完了した段階で隣席より介入、身分証明書の提示と返金を求めて全額回収しました。そのように『証拠がないから無理』と簡単に諦めず、少しでも可能性のある案件においては『証拠がないならこれから見つける』『客観的な証拠を一丸となって集めていく』というスタンスで業務に臨んでいます」
反社会的勢力からの恐喝案件では、警視庁の組織犯罪対策課と連携しつつ、依頼者による恐喝の証拠収集を支援。結果、暴対法上の中止命令に結び付けて相手方との関係遮断に成功した。相手方の属性によっては“警察をいかに動かすか”が重要で、同事務所にはその知見がある。ほかに、ネット上で知り合った相手方(18歳未満)の親族を名乗る人物から身の危険を感じるほどの嫌がらせを受け、和解金を恐喝されているという依頼者に対応したこともある。
「まず、依頼者の身の安全を守るべく所轄の警察と協力し、相手方の行為について刑事事件化。代理人として相手方の要求をブロックしました。一方、依頼者の行為も条例に触れるものだったので、依頼者自身の刑事事件の弁護も行いました。そのように我々は現場に出向き、相手方と対峙するケースが多々あります。心身の負担は大きいものの“依頼者のニーズに最も応えられる手段を選択する”といった思いが原動力。知恵を絞り、工夫をこらして、粘り強く、結果を出す。そして新しい情報を取り入れ、自らの業務を客観的に分析し、さらなる価値を生み出す――それらを可能にする“固定観念にとらわれない柔軟性”を、所員全員が常に意識しています」