Vol.92
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左から、石田周平弁護士(64期)、早川皓太郎弁護士(61期)、大下良仁弁護士(64期)

左から、石田周平弁護士(64期)、早川皓太郎弁護士(61期)、大下良仁弁護士(64期)

STYLE OF WORK

#190

善国寺坂法律事務所

弁護士自身が“楽しく仕事に臨む”ことで、“クライアントの心を掴む”を体現していく

仕事の〝強度〟や熱意が共通する仲間

善国寺坂法律事務所は、2024年1月、3人の弁護士によって設立された。創業メンバーは、国内・国際商事紛争、損害保険関連業務などを得意とする早川皓太郎弁護士、事業再生やM&Aに強みを持つ石田周平弁護士、元裁判官であり、訴訟や不正調査・危機管理に精通した大下良仁弁護士。事務所設立のきっかけは、かねてからの信頼関係と、各自が独立を考えるタイミングが重なったことにある。石田弁護士は言う。

「私と大下弁護士は、司法修習で同期・同クラスという間柄です。大下弁護士は裁判官の道に進みましたが、その後、弁護士に転身。『自分たちで法律事務所を始める時は、ぜひ一緒にやろう』と、よく話していました。私たちが独立を考え始めた時期と、前事務所の先輩の早川弁護士が独立を検討していた時期が重なったこともあって、早川弁護士に、『私たち同期同士の気安い関係を〝締めてくれる存在〟になってほしい』と頼み込み、共同設立に至りました」

3人は、ともに所属していた前事務所での業務を通じ、「必要なときはタフに動くこと、コミュニケーションの取り方やレスポンスの速さといった仕事に対する〝強度〟が同じと感じた。だから共同で事務所を設立することに不安はなかった」と、石田弁護士は振り返る。

「得意分野も、出自も――大下弁護士は元裁判官、石田弁護士は事業再生とM&Aを得意とする法律事務所出身、私はいわゆる四大法律事務所出身――異なる3人なので、互いの経験や知識を持ち寄れば、ユニークな法律事務所をつくっていけると確信しています」と、早川弁護士。大下弁護士も、「3人しかいない事務所のわりに、業務分野は幅広いし、バランスがとれている。そこが、当事務所の強みだと思います」と、語ってくれた。

こうした3人が共通の約束事としているのは、「クライアントは原則、紹介制」としていることだ。

「理由は、『この人・この会社を支援したい』と思える相手と出会う確率を増やしたいからです。私たちは『自分たちが楽しく仕事をしたい』という思いを何よりも大切にしていて、やりがいを感じられ、楽しく仕事に向き合えてこそ、クライアントによいサービスが提供できると考えています。前事務所の代表弁護士の心に残る言葉があります。それは『クライアントは、満足させるのではなく、〝感動〟させなければならない』ということ。飲食店に例えれば、『あの店はうまかったな』で終わるのではなく、『あの店はすごかったから、ぜひ人に紹介したい』と思わせることが必要。この話を聞いた時は『ハードルが高いな』とも感じましたが、実際に今、紹介制で事務所がうまく回っています。これができているのは、各自が高い仕事のクオリティを担保し、『この人・案件のために』という熱意を持ち続け、実際によい結果を出してこられたからだと、自負しています」(早川弁護士)

顧問先企業からの日常的な相談・依頼に加えて、新規依頼者からの案件も多い。例えば、早川弁護士は、顧問先の投資家から、別のスタートアップ企業の支援を依頼されるようになった。石田弁護士は、事業再生で相手方となった金融機関やスポンサーから新たな案件を紹介されることもあれば、中小企業活性化協議会などの公的機関を通じて、新たな経営者を紹介されることもある。大下弁護士の場合は、不正調査・危機管理の際にチームを組んだ、弁護士や公認会計士などの関連士業から、同種案件を依頼されることが多く、多くの不正調査・危機管理案件にかかわるようになった。専門家からの評価が、クライアント紹介につながっているようだ。大下弁護士は言う。

「紹介者自身の信用にかかわりますし、私たちとしても紹介者の信用に応えないといけないというプレッシャーがかかります。そうしたプレッシャーと戦いながらも、クライアントとの〝つながり〟を広げ、きちんと事務所が運営できていることはありがたいことです。弁護士に転身して6年が過ぎましたが、今はとても恵まれた環境ですし、私たち自身、仕事そのものが楽しい毎日を過ごせています」

善国寺坂法律事務所
パーティションを低くし、コミュニケーションの取りやすさを重視した執務スペース。「私たち3人とも声が大きいので、互いの邪魔にならないようデスクの位置を離しました」と笑う、三弁護士

得意分野の違いによる相乗効果の高さも

設立から1年の間に、数多くの案件を手がけてきた同事務所。例えば、昨今、世間を騒がせた〝吸血型M&A〟と呼ばれる案件への対応がある。これは、財務的に厳しい企業を買収した後に資産を流出させ、事業を放置するという悪質な態様のM&Aが社会問題化しているもの。あるクライアントがこの手口に巻き込まれ、経営権を取り戻す必要に迫られた。

「この案件では、大下弁護士と連携しました。紛争解決を得意とする大下弁護士が、迅速に経営権を取り戻すための戦略を策定。一方で、経営権の取り戻しにはどうしても一定の期間が必要。その間に金融機関からの支援が打ち切られては元も子もありませんので、私はメインバンクを中心に金融機関との交渉にあたり、経営権取り戻しの方針やスケジュールなどを金融機関にご理解いただけるよう努めました。結果、金融機関にも我々の経営権取り戻しの方針を了解していただき、支援が打ち切られることなく、無事、経営権の取り戻しを認める判決が確定。クライアントは経営権を回復し、会社再生に向けた体制を整えることができました。大下弁護士がいなければ、あれほど早く経営権の適切な取り戻しはできなかったでしょうね」(石田弁護士) 
 
大下弁護士が得意とする調査案件や訴訟においては、早川弁護士との協働も多々ある。

「特に上場企業のガバナンス問題に関する調査案件では、企業の透明性確保と信頼回復のため、慎重かつ迅速な対応が求められます。特別調査委員会の設置や社内ヒアリング、データ解析を通じて、コンプライアンス上の課題を洗い出し、再発防止策を提案するといった業務を、早川弁護士と行っています」(大下弁護士)
 
早川弁護士は、「例えば、私のクライアントである損害保険会社で被保険者が破産した時には、管財人は損害保険実務に、保険会社は破産に、それぞれ精通していないケースもあります。私自身、倒産については詳しくないため、石田弁護士に〝ちょっと聞く〟。それで管財人の考えや実務に沿ったよいアドバイスが自信をもってできます。また、M&Aの過程で知財紛争が見つかった時には、東京地裁の知財部にいたこともある大下弁護士の知恵を借りることも。具体的に協働している案件でなくとも互いに気軽に相談できるので、この点でも3人で事務所を運営しているメリットが大きいと思っています」と話してくれた。

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    「事業再生は、厳しい状況にあるクライアントと“再生”というゴールに向けて一緒に走っていく仕事。クライアントが少しでも明るくなれるような仕事・コミュニケーションを心がけています」と、石田弁護士。
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    「昨今は、世間から注目を浴びる調査委員会事案が増えています。社会の期待に応えられるように頑張りたい」と、大下弁護士。

協働・共創できる後進育成にも力を注ぐ

各自、得意分野はある。しかし、それらを〝専門分野〟とはとらえていないという。「好きになったクライアントに必要とされるなら、どんな案件でも受けて、死力を尽くす」というのが3人のスタンスだ。「事務所として特定の分野を極めたいわけでもなく、大規模化を目標にはしない。メンバーが楽しく仕事をしていくことで、結果的にクライアントによいサービスが提供でき、ひいては経済活性化など社会に貢献ができる――弁護士として、そのようなサービスを世の中に提供できて、仕事を通じて自己実現を図っていけること、また『弁護士でよかったな』と思える仕事を増やすことが、しいて言えば事務所の理念。事務スタッフも含めて、事務所全員がやりがいを強く感じて、楽しく仕事ができる環境を大切にしていきたい」と、声を揃える。この4月からは77期の弁護士が1人、仲間に加わる。

「クライアントに選ばれ続け、紹介していただくためには、私たち自身が弁護士として進化していくことが必要です。4月には仲間が1人増えますが、これからもご縁があれば仲間を増やし、私たちを育てていただいた先輩たちへ〝ご恩を返す〟という意味でも、後進育成に取り組んでいきます。そして若手弁護士と協働するなかで、法的議論を交わし、〝教え・教えられ〟ながら、弁護士としていつまでもアップデートしていきたいです」(早川・石田・大下弁護士)

Editor's Focus!

「事務所の看板で仕事をするのではなく、個人の看板で仕事をする。“弁護士は対等”の意識が強い。“仕事を楽しく”という点は一致するが、互いを縛ることはない」と語る、早川弁護士。得意分野もキャラクターも異なるので、「クライアントもこれから入所する弁護士も、3人のうち誰かにはハマるはず」と、笑う。

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