善国寺坂法律事務所は、2024年1月、3人の弁護士によって設立された。創業メンバーは、国内・国際商事紛争、損害保険関連業務などを得意とする早川皓太郎弁護士、事業再生やM&Aに強みを持つ石田周平弁護士、元裁判官であり、訴訟や不正調査・危機管理に精通した大下良仁弁護士。事務所設立のきっかけは、かねてからの信頼関係と、各自が独立を考えるタイミングが重なったことにある。石田弁護士は言う。
「私と大下弁護士は、司法修習で同期・同クラスという間柄です。大下弁護士は裁判官の道に進みましたが、その後、弁護士に転身。『自分たちで法律事務所を始める時は、ぜひ一緒にやろう』と、よく話していました。私たちが独立を考え始めた時期と、前事務所の先輩の早川弁護士が独立を検討していた時期が重なったこともあって、早川弁護士に、『私たち同期同士の気安い関係を〝締めてくれる存在〟になってほしい』と頼み込み、共同設立に至りました」
3人は、ともに所属していた前事務所での業務を通じ、「必要なときはタフに動くこと、コミュニケーションの取り方やレスポンスの速さといった仕事に対する〝強度〟が同じと感じた。だから共同で事務所を設立することに不安はなかった」と、石田弁護士は振り返る。
「得意分野も、出自も――大下弁護士は元裁判官、石田弁護士は事業再生とM&Aを得意とする法律事務所出身、私はいわゆる四大法律事務所出身――異なる3人なので、互いの経験や知識を持ち寄れば、ユニークな法律事務所をつくっていけると確信しています」と、早川弁護士。大下弁護士も、「3人しかいない事務所のわりに、業務分野は幅広いし、バランスがとれている。そこが、当事務所の強みだと思います」と、語ってくれた。
こうした3人が共通の約束事としているのは、「クライアントは原則、紹介制」としていることだ。
「理由は、『この人・この会社を支援したい』と思える相手と出会う確率を増やしたいからです。私たちは『自分たちが楽しく仕事をしたい』という思いを何よりも大切にしていて、やりがいを感じられ、楽しく仕事に向き合えてこそ、クライアントによいサービスが提供できると考えています。前事務所の代表弁護士の心に残る言葉があります。それは『クライアントは、満足させるのではなく、〝感動〟させなければならない』ということ。飲食店に例えれば、『あの店はうまかったな』で終わるのではなく、『あの店はすごかったから、ぜひ人に紹介したい』と思わせることが必要。この話を聞いた時は『ハードルが高いな』とも感じましたが、実際に今、紹介制で事務所がうまく回っています。これができているのは、各自が高い仕事のクオリティを担保し、『この人・案件のために』という熱意を持ち続け、実際によい結果を出してこられたからだと、自負しています」(早川弁護士)
顧問先企業からの日常的な相談・依頼に加えて、新規依頼者からの案件も多い。例えば、早川弁護士は、顧問先の投資家から、別のスタートアップ企業の支援を依頼されるようになった。石田弁護士は、事業再生で相手方となった金融機関やスポンサーから新たな案件を紹介されることもあれば、中小企業活性化協議会などの公的機関を通じて、新たな経営者を紹介されることもある。大下弁護士の場合は、不正調査・危機管理の際にチームを組んだ、弁護士や公認会計士などの関連士業から、同種案件を依頼されることが多く、多くの不正調査・危機管理案件にかかわるようになった。専門家からの評価が、クライアント紹介につながっているようだ。大下弁護士は言う。
「紹介者自身の信用にかかわりますし、私たちとしても紹介者の信用に応えないといけないというプレッシャーがかかります。そうしたプレッシャーと戦いながらも、クライアントとの〝つながり〟を広げ、きちんと事務所が運営できていることはありがたいことです。弁護士に転身して6年が過ぎましたが、今はとても恵まれた環境ですし、私たち自身、仕事そのものが楽しい毎日を過ごせています」