Vol.39
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#7

久保利 英明
日比谷パーク法律事務所代表。専門分野は、コーポレートガバナンス及びコンプライアンス、M&A、株主総会運営、金融商品取引法、独禁法等企業法務、知的財産権(特にエンターテインメント・ビジネスや通信・放送ビジネス等)。

久保利 英明
日比谷パーク法律事務所代表。専門分野は、コーポレートガバナンス及びコンプライアンス、M&A、株主総会運営、金融商品取引法、独禁法等企業法務、知的財産権(特にエンターテインメント・ビジネスや通信・放送ビジネス等)。

SPECIAL REPORT

#7

実践的法律実務上の問題を克服するエンターテインメント専門家育成を目指す、会員数600人のNPO法人

特定非営利活動法人エンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワーク

エンターテインメント業界に精通した法律家、法的視点を持った人材の育成を目的としたNPO法人「エンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワーク(ELN)」が、この5月で設立10周年を迎える。久保利英明理事長と、牧山嘉道氏、三尾美枝子氏、横山経通氏の3専務理事に、ここまでの歩み、今後の展望などについて聞いた。

法律とコンテンツ両方に精通した人材が日本には不可欠だ

――まずは設立の経緯を。

【久保利】日本が生き残っていくためには、従来のものづくりからソフトパワー重視に転換する必要があるという問題意識を背景に、小泉総理大臣を本部長とする知的財産戦略本部が発足したのは2003年。私も本部員として議論に参加していたのですが、「日本にはリーガルとコンテンツの両方に精通した人材が非常に少ない」という指摘がありました。確かに、知的財産にかかわる弁護士は特許関係が中心で、著作権、不正競争などをやる人は限られていた。コンテンツビジネスを発展させるためには、その分野の専門家の育成は不可欠だと感じ、ELNを立ち上げることにしたのです。

この問題は〝鶏が先か卵が先か〞みたいなもので、業界は詳しい弁護士がいないから使わない、使わないから弁護士が育たない。それぞれが別個に何かやろうとしても限界がありますから、〝鶏〞も〝卵〞も一挙に解決するために、弁護士や法を学ぶ学生、エンタメ関連企業の経営者、現場で働く人たちなどに広く参加を呼びかけました。

エンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワーク

――具体的にはどんな活動を?

【久保利】月1回(現在は隔月)の定例研修会で業界の実務やその時々のトピックスなどを勉強するほか、年に1回シンポジウムを開きます。昨年は堺屋太一さんらに基調講演をお願いした後、コンテンツ保護のパネルディスカッションを行いました。両方とも非会員でも参加可能なオープンな場で、年によってシンポジウムの中身を出版しています。ちなみに今年のテーマは「スポーツビジネスと弁護士」です。

――会員が600名を超えてい ます。発展の理由は?

【久保利】もちろん、業界は専門の弁護士が欲しい、弁護士の側はそこに参入したい、というニーズの合致が、根底にはあると思います。同時に私は、ロースクールの功績がとても大きいと実感しているんです。新分野としてコンテンツを学びたい学生、逆に業界にいるけれど法律に強くなりたいからロースクールで勉強する、という道が開けました。おかげで、結果的に法曹資格は取れなかったけれど、エンタメ企業にとって極めて役に立つ、そんな人材も生まれています。実際ELNの会員には、法律も業界も両方がわかっている人たちも増えてきました。ロースクールについて揶揄する人は多いですが、それがなければみんなが新しい分野に目を向けることはなかったし、ELNもできなかったと思っています。

〝エンタメロイヤー〞の将来性は十分。新分野にチャレンジを

――今後の目標を中心に、専務理事から一言ずつお願いします。

【牧山】ELNは毎年、東京国際映画祭で無料法律相談のブースを出しており、私はその責任者を務めています。相談を受けていて感じるのは、日本発のコンテンツを、アジアを中心とする国際展開に結実させていくことの重要性。我々もそうした取り組みに積極的にかかわり、頼りにされる存在でありたいですね。

【三尾】アベノミクスの成長戦略として、クールジャパン戦略の強化がうたわれ、放送コンテンツの海外展開などに必要な資金は、国が支援するべく予算計上もされています。いまや、我が国のコンテンツが海外へ打って出る基盤は整いつつあると感じます。キーワードは〝海外展開〞であり、海外企業との契約交渉などに弁護士の出番も多くなります。我々としても、常に最先端の状況を把握しつつ、いざという時に直ちにコンテンツ制作者やコンテンツ関連業界などをサポートできるように、十分な準備を整えておくことが使命だと思っています。

【横山】〝エンタメロー〞がわかる弁護士、企業法務を増やしていく、というELNの元々の目的を達成するために、さらに力を尽くしたいですね。カギになる情報発信についても、どんなやり方があるのか、今後も研究していきたいと考えています。

――最後に理事長からメッセージを。

【久保利】プロデューサーが弁護士でない国は、実は日本だけ。クリエーターを経験した人が弁護士になって、初めてハリウッドの弁護士たちと対等に渡り合えるし、そうした時代がもうすぐくるでしょう。状況的に今は〝踊り場〞で、だからこそチャンスでもある。「もう弁護士では食えない」などというけれど、エンタメの世界に通じていて、知財法を理解し、語学力がある弁護士は、世界中どこに行っても通用します。法律家を目指す若い人たちに、ぜひこの世界に飛び込んできてほしいですね。