Vol.37
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#6

GTL実証プラント全景

GTL実証プラント全景

SPECIAL REPORT

#6

資源の安定供給を担う独立行政法人で活躍し、弁護士が求められる新分野の開拓に挑む

独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構

経済産業省所管の独立行政法人「JOGMEC」は、石油、天然ガス、石炭、地熱などのエネルギー資源や、レアメタルなどの鉱物資源の探鉱、探査、開発、備蓄などに携わる、〝資源小国ニッポン〞になくてはならない存在だ。そこに2012年から紺野博靖氏が、13年から平野洋一氏が、それぞれの所属事務所から出向し、活躍している。日本ではまだ資源分野に携わる弁護士は少ない。二人の奮闘ぶりを聞いた。

海外事務所で学んだノウハウを生かし資源の安定供給を支援

――出向のきっかけは?

【紺野】 NY州の弁護士資格を取得後、日本の大手石油会社への出向、鉱業法改正に係る法制調査の従事といった経験を通じ、資源に携わる方々が好きになり、お手伝いしたいと思うようになりました。

そこで、所属事務所に相談し、資源開発の本場である豪州の法律事務所の資源エネルギー部門に勤務させてもらう機会をいただきました。この経験も重要でした。豪州滞在中に3・11の震災、原発事故が起きました。すると「原発停止により、LNG(液化天然ガス)の需要が増えるだろう」ということになり、LNGの長期売買契約の価格条項の検討が始まりました。資源が世界の情勢に直結することを改めて実感しました。帰国して、これまでの経験を日本の資源確保に生かしたいと思い、自ら提案してJOGMECに出向させてもらうことができました。

【平野】 私は、11年に米国のロースクールへ留学し、その後、テキサス州に本部を置き、資源・エネルギー分野の実績が豊富な法律事務所に勤務しています。

当時の米国は「シェール革命」の真っただ中、石油・ガスの輸出国に変貌しようとする大国では資源エネルギー案件が目白押しで、いろいろな経験ができました。帰国してからは、紺野さん同様、そこでの経験を生かしたいと思い、出向させていただきました。

――具体的にどのような仕事をしているのでしょうか?

【紺野】 私は戦略企画室に所属しています。業務は多岐にわたりますが、一例として「技術ソリューション事業」という新事業の立ち上げに関与しています。日本の最先端技術を適用し、資源国の増産、コスト削減、環境保護といったニーズに応え、資源国との関係を強化する事業です。法律知識を生かしてスキームの骨格づくりから携わっていますし、日本の先端技術を提供する見返りに資源の日本への優先的な供給義務を海外の資源会社に課す交渉などを現地で行うこともあります。法務のニーズは多く、対応しきれないところもあったのですが、13年夏に平野さんが加わって、活動の幅が広がりました。

【平野】 私は、紺野さんと異なり総務課に所属していますが、基本的に共同で業務に取り組んでいます。13年8月に勤務を開始してから、早速、資源国政府との契約、国営石油会社とのJV契約や共同研究契約、地熱やメタンハイドレートといった国内資源のプロジェクトなどに携わっています。

例えば、JOGMECは、海外で行われる石油・天然ガスの探鉱開発事業に出資し、探鉱開発後生産を開始すると、出資持分を譲渡するといった事業を行っています。そこでは産油国・産ガス国から取得する権益の条件、一緒に探鉱開発を行う海外の石油・ガス会社とのJV契約の内容、日本企業と共に現地SPCを組成して出資を行う場合は、その出資契約の内容などについて、法的分析が必要となります。JOGMECの目的は資源の安定供給という国益ですので、権益の譲渡のあり方一つとっても独特の考え方があり、その観点からの契約のチェックは、日本人弁護士だからこそできることかもしれません。

  • 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構
    メタンハイドレート海洋産出試験の様子
  • 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構
    チリ・銅プロジェクト掘削作業風景
  • 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構
    電磁探査(SQUITEM)作業風景

資源の分野における日本人弁護士の役割を探究していく

――自ら心がけていることは何でしょう?

【紺野】 この分野で日本人の弁護士が活躍できる領域を探究しています。海外のいわゆる資源メジャーは、世界中に多くの権益を保有し、充実した法務部を備えているので、権益や契約について大量の前例や参考例のデータ蓄積があり、それを駆使して交渉をしています。他方、個々の日本企業の権益保有数は、メジャーと比較すると少ない。しかし、各日本企業に先駆けて、産油国・産ガス国での調査、出資などを行ってきたJOGMECには、多くの権益獲得に関与した実績と、参考例が蓄積されています。ここでの経験は、JOGMECのみならず、日本企業の権益獲得交渉にも付加価値を提供できると感じています。

【平野】 我々は地熱をはじめとする国内の資源にも着目しています。日本の地熱資源量は世界第3位と言われています。地熱発電は固定価格買取制度の対象にもなっていますが、地下水の権利関係や環境法の法的論点は多く、法律家の出番は少なくないと実感しています。

――読者に向けたメッセージをお願いします。

【平野】 資源の分野で活動している日本人弁護士はまだ数えるほどしかいません。しかし、必要とされる基本的なリーガルマインドは共通しています。

【紺野】 非在来型の資源や大水深や極地などの資源を日本の先端技術をつかって採取しようとする動きが進んでいます。知的財産権の知識を生かして貢献できる可能性もあると思います。

【両名】 もちろん課題はありますが、日本人弁護士が資源の分野で活躍できる場はまだまだあると思っています。