Vol.40
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#8

SPECIAL REPORT

#8

国境を越えて世界の人権問題に取り組む日本発の国際人権NGO

認定NPO法人ヒューマンライツ・ナウ

2006年に発足した日本発の国際人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ(HRN)」が今年3月、認定NPO法人に認められた。事務局長の伊藤和子弁護士に、活動内容や国際協力に関心のある弁護士へのメッセージなどを語っていただいた。

世界の人権侵害を見つけ、調査し、改善を求める

――まずはHRNの活動を教えてください。

主に、世界各地の深刻な人権侵害が起こっている現場に出かけて調査をし、政府などに改善を求め、現地で活動する人々を支援するといった人権活動に取り組んでいます。

私たちの活動のプライオリティは、弱い立場に立たされた女性や子どもなどの人権、そして、生命の危機など最も深刻な人権侵害です。

――これまでで特に印象に残っている具体的な活動は?

ひとつは、HRNとして初めて取り組んだフィリピンでの人権侵害の調査です。

現地では2000年以降、人権活動家が攻撃・暗殺される状況が長く続いていました。その犠牲者は700人に上るともいわれており、私たちの現地調査の結果、政府や軍の関与が明らかになりました。

調査結果をふまえ、記者会見を開いて公表したところ、反響がとても大きく、国連でも人権侵害として取り上げられ、日本政府もフィリピン政府に対して人権侵害をやめるように要請したのです。そしてその後、攻撃が激減しました。現地の活動家から「我々の命を救ってくれてありがとう」と言ってもらった時は胸が熱くなりました。

この経験を通じて、国際的な事実調査が効果的であること、〝誰かが見ている〞ことを知らせることが人権侵害の抑止力になることを強く実感しました。

また、軍事政権下のミャンマー(ビルマ)の人権侵害に長く取り組み、国連決議を採択するための働きかけや、女性の人権侵害に関する国際キャンペーンを展開する中で、永遠に続くかと思われた軍事独裁政権の終焉を目撃することになりました。

もうひとつ、私たちは09年以降、タイ・ミャンマー国境で、次世代を担うミャンマーの若者に向けた人権教育を行ってきました。今ではヤンゴンで、弁護士や若者を対象とする人権教育を本格的に進めています。

  • 認定NPO法人ヒューマンライツ・ナウ
    ミャンマー(ビルマ)の民主化を草の根レベルで支援するため、タイ・ミャンマー国境付近のメイソットに設立された法律学校「ピースローアカデミー」を2009年から支援
  • 認定NPO法人ヒューマンライツ・ナウ
    ミャンマー(ビルマ)軍が行っていた女性への人権侵害に対する責任を問う「ビルマ女性国際法廷」を、ニューヨークと東京(写真)で開催した

新たなテーマCSRと人権にも注力していく

――最近はどのような活動を行われているのでしょう?

最近取り組んでいるのは、「企業の社会的責任(CSR)と人権」という分野です。

人権侵害は多くの場合、その国の政府に責任がありますが、民間企業が人権侵害を助長しているケースも少なくありません。例えば、アジアやアフリカの途上国では劣悪な環境下で子供たちを働かせる児童労働が横行しています。また、企業が毒性の強い排水や排気ガスを、そのまま川や海、大気中に垂れ流して環境を汚染し、地域住民の人権を侵害する公害問題も深刻となっています。

近年、海外に進出する日本企業が増えるなか、現地で業務を発注した先の企業が人権侵害にかかわっているケースが多々あります。結果的には日本企業が海外諸国に進出したせいで、人権侵害の犠牲にあう人が増えるという、新しい人権問題が生まれています。

――このような問題に対してはどのような対処を?

日本企業がこのような現状を正しく知って、現地企業に改善を求めるなど、リスク管理を徹底すれば、必ず人権侵害を減らすことができます。

そこで今年はバングラディシュや中国などで、企業に関連した人権侵害の現地調査を集中的に行っていく予定です。

国連は最近「企業と社会的責任に関するガイドライン」を採択しました。私たちは様々な企業にこのガイドラインを遵守してもらうよう、勉強会やセミナーなども開催しています。

この問題については企業側も意識が高く、今後、継続的に情報を発信していくことによって、様々な問題を改善していけると確信しています。

――国際人権分野に関心を持つ弁護士にメッセージを。

人権を侵害されている人々の力になりたいけれど、世界的な人権問題にかかわるのは難しいと、私自身、HRNを設立するまでは思っていました。でも、実際に動き出してみると、人権侵害を止めるために様々な貢献ができるとわかりました。

今は、インターネットなどを活用すれば、国際的なキャンペーンによって、国連を動かすことも可能な時代です。法律や人権問題の基礎知識があれば、トレーニングや調査などの活動にすぐ参加できます。弁護士は世界をよりよく変えるための力を持っているので、ぜひその力を活用してほしいと思います。

HRNの会員・サポーターになっていただければ大変嬉しいです。そして、私たちと一緒に、世界のどこかで人権侵害に苦しんでいる人たちのために活動していただければと、切に願っています。

  • 認定NPO法人ヒューマンライツ・ナウ
    北東インド・メガラヤ州での炭鉱における児童労働調査。同地域の児童労働・人身取引の実情を把握し、それらを根絶するために政策提言とキャンペーンを実施
  • 認定NPO法人ヒューマンライツ・ナウ
    2000年以降、約700人の人権活動家が攻撃・暗殺されたフィリピン。現地NGOの要請を受け、フィリピンでの事実調査後、現地にて記者会見を行った