――FLIJの具体的な活動をお聞かせください。
中川:現在は、大きく分けて調査研究と教育の2つを主に展開しています。前者では、国内外におけるファッションの法的保護に関連する判例などの情報を集めたり、海外の法制度・実務を調査するなど、会員企業の皆さんと共に、ファッションデザインの適切な保護のあり方について検討・研究を重ねています。後者では、ファッション・ローに関するセミナーや勉強会を開催し、具体的な事例を元に法律を利用してファッションデザインやブランドを保護する方法を紹介したり、ファッションビジネスの現場で働く方々と意見交換・議論を行うことで、知見を共有しています。過去に開催した無料セミナーの参加者は100名を超え、関心の高さがうかがえました。セミナー参加者は業界で働く方々が中心ですが、学生や弁護士などの法律実務家もいらっしゃいます。
金井:例えば今、アメリカでは若手デザイナーの斬新なデザインを大手企業が模倣するトラブルも起こっています。個人デザイナーは権利侵害で訴えたくても訴訟に莫大なお金と時間がかかるので、泣き寝入りを強いられることが多く、こういうことが続けばデザイナーの創作活動が阻害されてしまう。そんな事態を防ぐためにクリエイターを保護する制度が必要なのですが、保護が強過ぎると今度は新しい作品が生まれづらくなる。そのバランスが非常に難しいのです。
中川:例えばこの辺りまではセーフ、この辺りからはアウトという大まかな線引きだけでも業界全体で共有できれば、ファッションデザインの保護と自由なクリエイションの領域の確保とのバランスがある程度実現され、無用な紛争が減ると思います。その際の線引きは明確な一本線で白黒をはっきりつけるのではなく、グレーの濃淡によるグラデーションでもいい。それが共有されるだけでも、適切なバランスを目指すうえで大きな意義があると考えています。
金井:そのために国内外の一つひとつの事例を地道に収集、調査、研究して、より多くの業界の方々と一緒に結果を発信、共有、啓発していきたいのです。