Vol.94
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#30

SPECIAL REPORT

#30

複雑化するM&Aに、経営者視点で最適解を。自己資金で投資も行うアドバイザリー

株式会社KSGキャピタルパートナーズ

企業価値向上や後継者問題、カーブアウト、私的整理など、M&Aは多様な経営課題の解決手段として活用され、スキームは複雑化している。法務・財務・人事が絡む局面では、実行力あるアドバイザーの存在が成否を左右することもある。

再生投資型M&Aに強みを持つ独立系アドバイザリー、株式会社KSGキャピタルパートナーズは、自社資金による投資や経営支援を通じて、迅速な交渉と着地までの調整を支援――。代表の寺崎公彦氏に、近年のM&A市場の動向や、同社における取り組みなどについてうかがった。

―― どのような目的・パターンのM&Aが増えていますか?

経営者の高齢化や後継者不在による事業承継型が主流である一方、債務超過や資金繰り悪化といった局面における再生型も増加中です。なかでも、裁判所が関与する民事再生手続きに伴うM&Aや、弁護士と連携した私的整理スキームによるM&Aは、従業員や取引先への影響を抑えつつ、事業継続を図る手段として注目されています。買収側の動機も多様化が進み、売り上げや人材の確保、シナジー創出を目的とした戦略的M&Aのニーズが拡大。法務部や弁護士であればご承知のとおり、経営資源の最適化に向けた事業ポートフォリオの見直しが進むなか、親会社によるノンコア事業の売却や特定事業の切り出しといったカーブアウト型の事例も増えています。こうした案件では、スキーム設計をはじめ、契約・労務・税務などの論点が複雑に絡むため、専門的知見と柔軟な実務対応力が求められます。

このようにM&Aは、「成長・承継・再生・再編」の各フェーズで活用される経営手段として、今後さらに重要性を高めていくと思われます。

―― M&A市場におけるプレイヤーも多様化しています。

M&Aの仲介やアドバイザリー業務は免許や業法上の登録が不要なため、不動産や金融商品取引に比べて参入障壁が低く、未経験者や知見の乏しい事業者の流入が課題となっています。売却側による粉飾や、買収後に資産を収奪して破産させるといった詐欺的スキームも見られ、M&A市場の健全性や社会的評価の棄損が懸念されます。法制度や自主ルール、罰則の整備も必要だと思いますが、M&Aは〝個別性〟が高いため、過度な規制が実務を硬直化させる懸念もぬぐえません。市場の活性化が続くなか、すべてのプレイヤーの質的向上と倫理意識の確保が喫緊の課題ではないかと、実務者として痛感しております。

事業の主軸は、M&Aアドバイザリー事業、企業再生投資事業、不動産関連事業。各戦略設計から実行支援まで一気通貫で提供。経営課題の本質に向き合い、”発想力”を持って最適解を導くことを得意とする

―― 貴社の特長や強みは、どのような点にありますか?

当社は、M&Aアドバイザリー、企業再生投資、不動産関連を三本柱として事業展開しております。企業再生投資においては、自社資金での投資も行う稀有な存在で、買い手当事者としての視点を有することも特長の一つです。ちなみに、自社による投資対象企業の事業規模は大小あり、例えば、飲食業1~2店舗を譲り受けて当社で経営し、自社が保有する企業と併せて一定規模に成長させたのち、買収希望先に譲渡するといったことも行っています。

他社を介さず有力案件が直接集まる構造であることに加え、そのように〝自己ポジション〟であるがゆえに、粉飾などのリスクを初期段階で見極められる力も備わっていると思います。

―― 近年、注目を集める〝不動産M&A〟にも早期から取り組まれていますね。

一見異なる領域に思える不動産とM&Aですが、企業再生や事業承継、再編といった局面では密接に関係してきます。企業が保有する不動産は経営判断に直結する重要資産であり、その扱いはM&A戦略のカギとなります。例えば、将来の売却を見据えて法人名義で不動産を取得し、法人ごと株式を譲渡することで、税務や資産移転の効率を高めるのが〝不動産M&A〟。再開発時の〝権利床〟処理などでも、法人売却による対応が有効に機能しています。こうした手法は当初、不動産・M&A双方の業界において理解が進まず、活用例も限られていましたが、近年では戦略的に採用されるケースが増えつつあります。私は不動産関連企業出身で、不動産実務とM&A実務の両方に通じており、それらを融合させた独自のアプローチを得意としてきました。数年前までは、双方の領域を実務として統合できる人材はほとんどいなかったので、業界内でも稀有な存在になれたのだと思います。

―― 不動産M&Aの事例を教えてください。

一例ですが、虎ノ門ヒルズ(港区)や、クロスエアタワー(目黒区)における、再開発に伴う権利床の譲渡案件を手掛けました。前者は、虎ノ門ヒルズおよび道路拡張に伴う再開発プロジェクトに関連した、やや特殊な案件でした。対象となったのは、再開発エリア内に権利床を保有していたある企業で、同社は森ビルおよび東京都との締結に基づき、既存の所有ビルを明け渡す代わりに虎ノ門ヒルズ内に完成予定の特定区画(権利床)を取得する契約を締結していました。ただし、取得予定の権利床は建物完成前の段階(将来得られる予定のスペース)であって登記簿に記載できず、第三者への直接譲渡は困難。そこで私たちが提案したのが、対象企業自体の株式譲渡(会社売却)によるM&Aスキームです。法人名義で契約された再開発権利を移転可能にするため、開発前権利床を保有する〝会社ごと〟買収するかたちで、譲受人に引き継ぐ手法でした。

当該企業の株主は全員ご高齢で、株主以外に従業員もおらず、株主の希望を汲んで、不動産の売却ではなく会社株式の譲渡による〝ハッピーリタイア〟をご提案した次第です。これにより、資産を最大化したうえで承継問題の根本的な解決を図ることが可能となりました。実行に際しては全株主の合意形成と、とりまとめを行い、さらには再開発が進行中であったことから、東京都と森ビルとの交渉も並行して実施。開発前権利床に関する契約上の地位を新たな株主のもとで維持できるよう、ステークホルダーの調整を行いました。会社の存続をスキームの基軸に、登記不能な資産の譲渡や開発中プロジェクトへの対応といった、法務・不動産・再開発の複合課題をクリア。法人単位での株式譲渡による不動産M&Aという手法は、単なる物件売買では実現し得ない高度な解決策として機能した好例となりました。

後者のクロスエアタワーも、開発前権利床がカギとなる不動産M&Aです。開発前権利床を取得する際の新会社設立のサポート、建築時の内装業者の選定、竣工後のテナント誘致まで――開発前権利床取得からイグジットまでのトータルサポートを行い〝会社ごと売却〟、オーナーにとってのベストイグジットを実現できました。

――経営者や企業法務部にとって、貴社との協働はどのようなメリットがありますか?

企業法務部が直面するM&Aや企業再生の課題では、グループ会社や子会社の整理のみならず、取引先の再建支援など、外部に知られずに早期解決が強く求められるケースが多々あります。実際、当社にも小売り・サービス業や製造業をはじめとする多様な業種の企業法務部・経営者からの相談が寄せられています。〝事業の立て直し〟という課題解決にあたっては、〝自社資金による投資経験〟があるので、当事者目線――つまり〝経営者視点〟で臨めることが、クライアントに価値をもたらすと考えています。ちなみに、これまで私自身が携わったM&A、企業再生・投資案件で、失敗したケースは一つもないことが誇りです。

―― 同様に、弁護士にとってのメリットはどうでしょう。

弁護士の方々が受ける相談のなかには、法的助言だけでは解決できない、複雑な利害調整や経営判断が伴う案件も少なくないと思います。当社は、スキーム設計や進行管理において多様な選択肢を提示しつつ、弁護士の方針に沿ったかたちで実行支援を行っています。特に、私的整理のような裁判所を介さない場面では、経営者視点を取り入れた柔軟な提案を行い、状況整理を担うなど、後方支援として活用いただいています。

当社には法務機能がないので、法務デューディリジェンスはもちろんのこと、クロージング後にクライアントへ顧問弁護士を紹介する場面などにおいても、信頼できる弁護士とのネットワークは不可欠です。当社で取り扱う案件・事業内容は幅広いため、M&Aやコーポレート系をはじめとして様々な専門分野の弁護士の方々と、ネットワークを構築していきたいと思っています。

―― 経営者・企業法務部、弁護士の方々へ、メッセージをお願いします。

〝依頼者のために案件を成就させる〟ことは、私たちにとっての最優先事項です。M&Aや企業再生は、想定どおりの着地に導けるかどうかがすべて。私たちはそのゴールに向けて、調整力と実行力をもって伴走します。

当社は大手ではありませんが、十分な体制を持つ独立系アドバイザリーなので、クライアントが納得できる成果を出すことは大前提として、〝スピーディに、水面下で、確実に〟課題を解決できることを最大の提供価値としています。情報が外に漏れにくい構造であり、経営者と直接対話する〝ひざ詰め〟の実務スタイルが信条。その距離感だからこそ、対象企業と本音ベースで議論でき、表に出せない事情に踏み込んだ提案や、発想力を生かした新鮮な具体策を提示できています。

また、繰り返しになりますが、当社は自己資金を投じて企業再生を手がけていますから、その〝真剣度合と覚悟〟は、他社と一線を画していると思っています。すべての案件において私たちが意識するのは、単なる助言者ではなく、〝自分事〟として関与すること。人や在庫の状態、営業プロセスといった経営の現場にまで踏み込み、最後まで〝やりきること・やらせきること〟にこだわります。机上の論理ではなく、実行力を伴った支援ができるのは、この覚悟ゆえだと思っています。

M&Aは、売り手と買い手の利害が必ず対立する取引です。相思相愛に見えても、価格や条件面での駆け引きは避けられませんし、成就しなければ売り手も買い手も不幸です。私たちは、経営の当事者として積み重ねた実務経験を土台に、その調整力にも長けていると自負しています。これからもこの調整力や経営者視点を強みに、対象企業やかかわるすべての方々にとって最適な着地に導けるよう、尽力していきます。