同団体に寄せられる情報で、全国の伝統行事における動物利用に関するものの次に多いのは、SNSや動画投稿サイトなどで見つけた〝虐待ギリギリ〟の小動物の扱いに関するもの。ほかにも、動物園での飼育環境に関してなどの情報も寄せられる。「情報提供者にとってひどいと思うものが、普遍的・社会的に虐待といえるかどうか。その判断は難しい」と細川弁護士。
中島獣医師は言う。
「獣医師の仕事は、目の前の患畜を助けることが第一。しかし、飼い主の管理ミスやネグレクトによって、繰り返し同じ症状で運びこまれる患畜も少なくありません。事情を聞けば、そこにあるのは飼い主である〝人の問題〟が大きい。つまり、動物に起きてしまう様々な事件は、すなわち人間の事件といえます。人間世界の歪みが正されない限り、犠牲になるのは弱い動物ばかりです。12年の動物愛護法の改正をきっかけに、経営を持続できないペット業者が100頭もの子犬を放置する事件が起きたり、近年では、SNS上で面白半分に小動物を痛めつけ、その動画配信によって利益を得るといった〝人間の営みによって動物たちに被害が及ぶ〟という悲劇が多々あるわけです」
20年の改正動物愛護法の施行で、獣医師に対して動物虐待の都道府県・警察への報告義務が加わったが、「目の前の動物の治癒を最優先するのが獣医。それから〝どうしたらいいか〟を、ともに考えてくれるどうぶつ弁護団は非常に大切」と、中島獣医師は語る。同団体ではこれまで、「奈良県王寺町における猫傷害事案」「東大阪市における多数の猫の遺棄事案」「北海道佐呂間町における犬多頭飼育崩壊事案」などを告発してきた。特に動物の受傷事案で要因を特定する際など、弁護士にとって獣医師の知見と協力は重要になる。
「必ずしもすべての事案で〝縄付き〟を出すとは思っていません。人間に、動物の命を軽んじる行為を止めさせ、冷静に反省させ、動物虐待の抑止につなげる。人間が間違った方向に向かっていれば、正しい方向に誘導する――それがどうぶつ弁護団の役割です。弁護士会には多くの弁護士がいますから、どうぶつ弁護団が告発した事案で、被疑者側につく弁護士も弁護士会内で出てくるでしょう。お互いに指摘し合いながら、丁々発止やり合ってほしい。そうして犠牲になっている小さな動物ちが少しでも救われる社会に、報われる社会になることを望みます」(中島獣医師)