「私が入社したころには、ほとんどなかったのですが、近年は海外案件の増加が顕著です。英国・米国企業との合弁事業、フィリピンのビール会社への資本参加、オーストラリア企業との提携などが相次ぎ、語学力のあるスタッフが必要不可欠になっています。法務部の仕事も国際化が進んだといえますね」
海外案件の増加に加えて、国内のM&Aや、それに伴う事業再編も同時に進行していく。
「06年に行ったメルシャンへの資本参加に続いて、08年には協和発酵工業とキリンファーマが統合し、協和発酵キリンとなりました。その際には、公正取引委員会との折衝なども法務部がサポートしています。グループとしてM&Aや事業再編の動きが増え、同時に法務部の業務も多様になっています」
国内・海外事案を着実に解決する法務部は、部長の指導のもと『相談しやすい組織』を目指し、さらに積極的な活動を展開するようになる。
「敷居の高くない法務部にしたいと考えています。気軽に相談できないと困難に直面して初めて法務部に来るようになり、お互いが困るからです。ですから法務部からも積極的に各社に出向くよう努めています。また信頼を受けて早め早めに相談してもらえるように、事業やグループ各社の実情をよく理解するよう、メンバーにはお願いしています」
その法務部に今年、キリン初となる弁護士資格者が入社した。
「経験者を想定して行った昨年の募集で、実務未経験ながら将来性の高い資格取得者がいたのです。企業法務に熱意を持ち、英語も得意。初めての資格者採用なので手探りのところはありますが、相談しながらルールづくりをしています。たとえば『国選弁護は有給休暇で対応する。資格維持に必要な研修は業務の一環とし会社が費用負担する』という具合です。彼には主として海外契約業務を担当してもらっていますが、やはり法的問題への着眼点が鋭い。『資格のある人は違う』と高評価です。今後は専門性を伸ばしながら、弁護士活動や法曹界のネットワークで得た知識や経験を社内業務に生かしてほしいと思います」