自動車メーカーの法務業務には、どのような特徴があるのだろうか。
「自動車メーカーには、車両設計・開発、部品調達、製造、品質管理、販売、アフターサービスという業務があり、取引を行う企業も関連会社・サプライヤー・代理店など多岐にわたります。そのほか製品をお使いいただくお客さまへの対応や当社では広告媒体として貴重な浦和レッズへの支援業務もあります。これら全てをカバーするため業務は広範かつ膨大です。近年は従来の業務から一歩踏み込んだ仕事も増加しています。例えば資本提携や株式買収先企業の事業形態・経営内容を調査し、提携や買収に関する経営判断をサポートするいわゆるデューデリジェンスなど。さらに順法意識の向上・コンプライアンス強化など社内体制整備の一端を担いつつ、独禁法に沿った取引の適正化、製造物責任に起因する訴訟への対応、国際的な事業提携、合弁などあらゆる企業活動に関わります。また全体売り上げの80%を超える海外販売のサポートでは日・英文を中心とする書信類や契約書のレビューと起案、海外拠点との電話・テレビ会議を日々、行っています」
経営判断への関与が高まったのは、どのような理由からだろうか。
「2000年以降のリコール問題処理において、当社は全ステークホルダーへの責任として、過去の経営陣を訴える姿勢を取りました。それが現在の経営における順法意識の高さ、企業価値向上への強い思いにつながっており、経営陣は社会的責任・後進への責任を強く意識し、緊張感のなかでかじ取りを行っています。そういう経緯のもと、さまざまな場面において法務の助言が求められる環境ができ、私たちの存在意義が理解されるようになったのです。取締役会、常務会には必ず法務部長が臨席。また重要案件の全てが法務チェックを経るシステムができました。細かいところでは、社長や役員が外部に出す書簡も、言語問わず法務部がレビューしています」