Vol.28
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業務の傍ら大学院で学ぶ向学心に富んだメンバーが多い。コンプライアンスオフィサーやプロジェクトマネジメントの資格を取得するスタッフも多数

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THE LEGAL DEPARTMENT

#29

ベーリンガーインゲルハイムジャパン株式会社 法務部

法律知識を高め、ビジネスを知り、常に“Yes,but”のスタンスで、研究主導型製薬企業を支える

知財をめぐる綱引きにも対応

ベーリンガーインゲルハイムジャパン株式会社 法務部
企業法グループマネージャーの芹生幸一氏は、大学院の博士後期課程で反トラスト法を研究している

同社はドイツに本拠を構えるグローバル製薬企業、ベーリンガーインゲルハイムの日本法人だ。傘下に、医療用医薬品の日本ベーリンガーインゲルハイム、大衆薬のエスエス製薬のほか、動物薬のベーリンガーインゲルハイムベトメディカジャパン、製造部門のベーリンガーインゲルハイム製薬の、100%子会社4社を置く。

法務部は現在12名の体制。

「当社の企業活動に関連する法律問題に幅広く対応する企業法グループのほか、知的財産、コンプライアンス、リスクマネジメントの各グループがあります。企業の法務部としてバランスのとれた組織だと思いますが、こうした体制が整ったのは、ここ数年です」と、セバスチャン・グルゾン法務部長は説明する。

法務部の仕事の一つが契約書のレビュー。そこには、研究開発型製薬企業ならではの〝大変さ〞もある。芹生幸一企業法グループマネージャーは言う。

「いくつもの特許技術が組み合わさって一つの製品を構成しているような他の製造業とは違って、製薬企業にとっては医薬品の物質特許が〝命〞です。大学などと共同研究を行う際、得られた知的財産権は確実に当社に帰属させていただくのがポリシー。ただ最近は、いずれの大学も同じようなポリシーを持っておられますので、けっこう綱引きが激しくなっています。契約交渉でこの問題を収める能力も法務部員の重要な資質の一つ」

何よりも力を入れる人材教育

グルゾン氏が日本に赴任した2003年当時、法務のメンバーは3人しかいなかった。

「日本は米国に次ぐ大きな販売シェアがあります。そこで、ドイツ本社との連携強化やグローバル対応の必要から、新しい法務部の体制づくりが求められました。私には日本への留学経験があったので、白羽の矢が立ったのでしょう」

しかし、当時兵庫県川西市にあった本社に赴いたグルゾン氏は、「強いカルチャーショック」に見舞われる。

「ドイツ本社の法務部はまさに法律事務所のたたずまいで、全員が弁護士資格を持っている。ところが日本に来てみたら、皆さん優秀だけれど、法学部出身者は芹生さんだけだし、服装はすごくラフ(笑)。欧米企業の法務部といえば、ポジションの高い人がスーツ姿できびきび働いている。これでは経営陣から信頼を得られないだろうと思っていたところ、社長がある事案を直接弁護士に持ち込んだと聞き、ショックでした。ドイツ流を押しつけるつもりはありませんでしたが、法務部の地位を改善する必要を強く感じました」

以来10年教育を重視してきた。

「まず、部内でしっかりした教育プログラムをつくって、問題解決に必要な法律知識を身につけ、法務部のレベルアップを図りました」

現在は、独占禁止法などの専門家を招いた勉強会を開くほか、ポテンシャルのある若手には、法科大学院などで学ぶ機会も提供している。また、ドイツや日本の学生にインターンシップの場を積極的に提供してきた。

ベーリンガーインゲルハイムジャパン株式会社 法務部
ミカルディス、スピリーバなどが代表薬

求められるビジネスの能力

実は、教育の中身は「法律」だけではない。

「コミュニケーション能力、そして何よりもビジネスの能力が不可欠。『法務部は法律知識が豊富でも、会社のビジネスがわかっていない』という声が、時々聞こえるのです。自社のビジネスの中身も知らずに契約書の完璧なチェックなどできませんから、これではいけない」

そう考えたグルゾン氏は、多忙な業務の傍ら自ら率先してビジネススクールでMBAを取得し、さらに進んだ法務部を目指している。今では法律問題に加え、定期的に会社のビジネスに関する勉強会も開く。

「部門の担当者を呼んで、セールス部門はどのような営業活動をしているのか、マーケティング戦略はどうなっているのかといった話をする。現場の苦労を知ることができるのは、非常に意義深いこと」と芹生氏は話す。自身もMRに同行して、朝早くから医者を待ち続け、商談時間30秒という世界を体験。現場の苦労を分かち合った。

グルゾン氏の目標は、「“No”ではなく“Yes, but”であること」。

「現場が求めるのは、『いいでしょう。でもここが問題だから、解決策を考えよう』と、親身に相談に乗ってくれる法務部のはず。そうなるためにも、ビジネスを知る必要があるのです」

最後に「自らに課せられたミッション」を語ってくれた。

「私の仕事で重要なことの一つは、日本のリーガルチームを本社に〝売り込む〞マーケティング。早い時期からコンプライアンスの重要性を認識していましたので、全社の意識を高めるために、Eラーニングで全社員向けのコンプライアンス教育を実施しました。欧米よりも声を大にしてこうした取り組みをアピールした結果、コンプライアンスはグローバル法務の最重要課題となったのです」

ベーリンガーインゲルハイムジャパン株式会社 法務部
ベーリンガーインゲルハイム ジャパンの扱う製品やその活動がひと目でわかるセンスのいいショールームが受付裏にある