Vol.28
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海外売上高比率77%、海外生産比率56%というグローバル企業。20代から50代までバランスよく法務部員を構成しているのも堅実さの表れ。このほかに中国と台湾にも部員がいる

海外売上高比率77%、海外生産比率56%というグローバル企業。20代から50代までバランスよく法務部員を構成しているのも堅実さの表れ。このほかに中国と台湾にも部員がいる

THE LEGAL DEPARTMENT

#28

太陽誘電株式会社 法務部

積極的な海外展開、M&A……未来を見据えた経営戦略を事業に即した合理的な組織でサポート

契約相手など基準に4チームを置く

世界で初めて追記可能なコンパクトディスク「CD-R」を世に出した企業と聞けば、同社の技術力の高さが理解できるはず。ただし売上構成から見ると、半分近くをスマートフォンやテレビ、デジカメ、PCなどのあらゆる電子機器に欠かせないコンデンサと呼ばれる電子部品が占める。電気を蓄え、必要に応じて放出するこの部品、例えばスマートフォンには400~600個搭載されている。

そんな同社に山岡次郎法務部部長が大手エンジニアリング会社から転職したのは、2003年のこと。同時にできた法務部は、まだ10年ほどの歩みしかない。現在、総勢15名の陣容で、4チームがあるが、「それぞれの仕事の中身はほとんど変わらない」という。

「各チームとも年齢や経験面でバランスの取れた構成にして、契約の相手方や、依頼元の拠点別に担当分けをしています」

主として顧客を基準に組織化したのには、理由がある。

「お客さまも海外に多くの子会社を持っていますが、法律上別会社でも、実際には親会社の意向が経営に強く反映されています。そうした企業と当社の海外子会社が契約を結ぶような場合には、過去に日本国内で親会社同士が行った契約交渉が参考になります。条件はどうだったか、トラブルはなかったか。そういった情報が共有できれば、リスク回避や統一した対応が可能になるわけです」

ただし、こうした組織形態に落ち着いたのは、「ほんの2、3年前」のこと。それまでは「契約ごとにやりたい人間に手を挙げさせたり、試行錯誤の連続だった」そうだ。

太陽誘電株式会社 法務部
日本で採用され、希望して法務部に異動してきた王晨(ワン・チェン)さんと入社4年目の中野静香さん

成長に向けたM&Aにも対応

独自の研究開発をベースに成長を遂げてきた同社は、ここ数年、M&Aにも積極的だ。

「2007年以降、3社の事業買収を行いましたが、これからも案件は増えるはず。法務部としても、そうした新たな経営戦略に、的確に対応していかなければなりません」

企業法務は、M&Aにどのようにかかわるのだろう。

「いつも同じというわけではないが、まずは互いに秘密保持契約を結び、関係する情報を交換します」

実際にはこの段階で〝破談〞になるケースもあるのだという。

「交渉が本格化すれば、さらにお互いを拘束する条項を含む契約を締結します。これには、今後のスケジュールや買収金額のめど、さらには途中で第三者に乗り換えないという約束などを、織り込みます。そして、買収対象が損害賠償を抱えていないかといった精査、いわゆるデューデリジェンスを実施します。このステージは外部の法律事務所なども活用し、問題がなければ本契約となるわけです。M&Aは事業変革につながるなど大きなメリットをもたらしますが、問題のある企業を買ってしまったら、経営責任を問われる事態になりかねません。責任の重大さも自覚しています」

ところで、多種多様な部品を供給する同社のこと、まれに製品の不具合も起こる。

「高額の賠償を請求されることもあります。その場合、法務部ができる以前は、リーガルに解決するという視点が希薄な時もあったようです。当然ですが、不具合事故について契約書ではどうなっていたのか、記載がなければ法律に照らしてどこまで責任を負うべきなのかなどを詰めたうえで、きちんと交渉しなければなりません。そこに法務部が本格的に〝介入〞するようになって、実際に賠償額を何十分の一に減らせたこともあります。こうした交渉に法的観点を持ち込めたという点では、微力ながら貢献できたのではないかと思っています」

太陽誘電株式会社 法務部
最先端の積層セラミックコンデンサは、もはや肉眼で確認するのも困難なほど小さい

ますます広がる企業法務の可能性

同社は現在、欧米や中国、東南アジアに40の海外拠点を置いている。中国に1名、台湾に2名の「法務要員」がいるが、本社法務部がワールドワイドに管轄している。

「主にメールでやり取りしていますが、取引の中身を十分理解しないで契約書だけを見ていると、〝字面のレビュー〞になってしまう。その一方でスピードも要求されますから、なかなか大変です。グローバルな法務活動を展開できるよう、本社法務部・海外現地拠点、また外部の法律事務所などのリソースを最大限生かすことが大事です」

山岡氏は前職時代を含めて、およそ40年間、法務の一本道を歩んできた。

「私が社会人になった頃は、法務部のある企業など、ほんのひと握り。あの時代から考えれば、今は文字どおり隔世の感があります。社会が企業法務の必要性を強く認識しているわけですね。特に法律の知識を持った人たちがビジネスの領域で活躍できる場は、今後ますます広がっていくはずです」