Vol.30
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取引法務と知的財産権に特化する法務局(前列中央が久保田局長)

取引法務と知的財産権に特化する法務局(前列中央が久保田局長)

THE LEGAL DEPARTMENT

#32

株式会社アサツー ディ・ケイ 法務局

クライアントも“仕入先”も多種多様。広告業界ならではのデリケートな課題にも鍛えられたスキルでソリューションを提供

一般企業と比べてかなり独特な法務

「1997年に中途入社する前は、ゼネコンの法務部門に在籍していました。建設業界の契約関係は仕様がほぼ決まっていて、たいていのものは法務以外の現場でも結べる。だから法務の仕事は、そこから派生して生じる事柄への対処が中心で、本業のすべてにタッチすることは少なかった。でも、広告業界の場合は違います。一つひとつの取引について、契約内容の組み立てからすべて携わっていかなければ、仕事になりません。今はどっぷり本業に浸かっている感じがしていますね」

久保田直法務局長は、広告業界における法務のスタンスをそう語る。

広告会社の〝本業〞は、商品や企画などをPRしたい顧客と、テレビや新聞などのメディアの間を取り持ち、訴求力のある広告をつくりあげること。だからこそ、この業界の法務に求められる役割は、一般企業と比べてかなり独特なものとなる。

佐藤和人法務局法務室長は、「クライアントの業態は非常に多岐にわたり、広告をつくる際の関連法規などもそれぞれ異なります。一方、広告の成否に大きく影響するコンテンツの仕入先も、タレント事務所、アニメ制作会社、CM制作会社などと実に様々。当然、そうした〝分野の違い〞を踏まえて、個々の契約を結ぶ必要があるわけです」と説明する。

さらに、「実は我々にとって、〝権利〞は重要な商材の一つ」なのだと、久保田氏は言う。

「広告制作に関しては、クライアントの意向はもちろんのこと肖像権、著作権など様々な権利保有者の意向もしっかりくみ取らなければ、いい契約は結べません。権利処理の範囲と制作の幅の拡がりは相関します。そうした問題に直面した時、よいコンテンツを制作するにはどのような契約内容にすべきか、クライアント担当の営業、クリエイター等のスタッフその他関係者とじっくり話します。そのあたりも、デリケートな対応が求められるのです」

同時に、「重要な事柄をすべて契約書に反映させることがなかなか難しい場合もあります。あとになって隠れた要素が顔を出して、誤解が誤解を生むこともあり得る。そうしたトラブルが起きないよう、契約に基づく事後のオペレーションをきちんと想定しておくことも、我々、法務の任務です」と話す。

株式会社アサツー ディ・ケイ 法務局
久保田氏(左から2人目)と佐藤氏(同3人目)

営業の取引法務に特化する新体制へ

そんな同社法務局には、現在9名のスタッフが在籍。今年から会社法関連の法務とは分離し、法務局は現場に対する法務サービスに特化している。1名いる弁理士が商標を中心とした知的財産権を担当し、他のメンバーは適宜チームを組んで営業の取引法務を担うという体制だ。

デリケートな契約を結ぶ際にも、正しいオペレーションを行うためにも、「現場とのコミュニケーションを良好に保って、お互いの理解を高め、協力していく姿勢が不可欠」だと久保田氏は言う。この点については、「法務が現場に近い関係性が持てているというか、頻繁かつ気軽に相談を持ちかけてきてくれます。特に営業とはかなり密接な関係が築けていると思いますよ」というのが、佐藤氏の評価だ。

むろん〝コミュニケーション〞の中で、強くブレーキを踏むこともある。久保田氏は言う。

「いうまでもなく我々の仕事はクライアントのイメージアップを図ることです。万が一、世の中に向けて露出している広告に契約の不備などの問題が起きたらどうなるか。クライアントのダメージとなってしまうこともあります。法務としては、何よりも投資のマイナス効果を生じさせるような事態を、避けなければなりません。〝取引の品質管理〞をしっかりやろうということを、現場にも繰り返し話しています」

人材育成については「ベテランと組んで、できるだけ多くの案件を経験するOJT(オンザジョブトレーニング)が基本。同時に、意識的に外部の優秀な弁護士と一緒に仕事をしてもらい、法務パーソンとしてのスキルアップを図っている」そうだ。

ところで同社は昨年、初めて法科大学院修了者を対象にした募集を行い2名が合格、うち1名が法務局配属となった。

「昔に比べて企業が何を求めているのかを理解した若者が確実に増えました。ロースクール修了生については、今年も採用を目指したい」と久保田氏。

「企業法務にとって大事なのは〝現場感覚〞です。みんな何らかの問題を抱えているからこそ、法務に相談にやってきますし、答えを求められるのだと思います。しっかり解決していい契約が結べた時は、大いに感謝もされますし、我々がやりがいを感じる瞬間でもあります。その思いを共有できる、若い人材がぜひとも欲しいですね」

株式会社アサツー ディ・ケイ 法務局
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