Vol.80
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法務部は14名の陣容。法務部メンバー主導で、コンプライアンス研修、また著作権、個人情報保護法といった事業部リクエストに応える研修も多数開催。全社の法教育に注力する

法務部は14名の陣容。法務部メンバー主導で、コンプライアンス研修、また著作権、個人情報保護法といった事業部リクエストに応える研修も多数開催。全社の法教育に注力する

THE LEGAL DEPARTMENT

#121

株式会社GA technologies 法務部

テクノロジー×イノベーションで、不動産ビジネスの“変革”と“業界初”に挑戦!

事業成長を加速させる体制を整備

設立から5年で、東京証券取引所マザーズ市場に上場を果たした株式会社GA technologies。プロップテック領域(不動産×テクノロジー)を基軸に、オンライン不動産取引の「RENOSY(リノシー)」の開発・運営、不動産業務DX化促進事業など、AIや各種データを活用した革新的なサービスとソリューションを次々創出している企業だ。

その挑戦を法的にサポートしている法務部の体制について、石川佳宏法務部長にうかがった。

「法務部は、①企業法務課、②ガバナンス・コンプライアンス課、③業務管理課(内部統制など)、④全グループ企業の法務担当の4ユニットで構成しています。特徴は、①の組織下に“事業部コンプライアンス担当(略称BCO)”を設け、専任担当を法務部から事業部ごとに配していること。BCOメンバーは、常に事業に寄り添うかたちで、事業部メンバーへの法務ナレッジの“落とし込み”、契約書作成やレビュー、コンプライアンス研修などを行っています」

今でこそ法務部のメンバーも14名までに増えたが、上場準備のタイミングで法務部を立ち上げた際は、鍋谷恵氏、たった一人でのスタートだったという。

「私が入社した時の社員数は、90名ほどでした。当時から若い世代が多く、管理や法務の役割を知ってもらうことはもちろん、上場にあたり、契約書の管理体制整備、取引先の反社会的勢力チェックなど、企業としての基本的な“地固め”に奔走する毎日でした。事業部のあらゆる場に顔を出して、『それはどんなビジネスですか?』『なんでも相談に乗ります!』と声をかけ、自ら課題を見つけては解決していくという、まさにスタートアップ企業らしい、やりがいがありました」と、笑う鍋谷氏だ。

現在も社内での法務部のプレゼンスは高い。これは現場と一体で動く法務、前線に出る法務、頼りになる法務を行動で示してきた鍋谷氏の功績だ。石川氏は言う。

「上場、国内外企業のM&A、新規事業立ち上げに伴い、組織は短期間でスケールしました。その成長速度を止めないためにも、事業部ごとに現場で課題を発見し、難しい事案は法務部が一緒に解決するという流れをつくっていきたい。また今後は、予防法務や臨床法務のみならず、戦略法務に一層主体的に関与していく必要がある。BCOを配したのはそのためで、各事業部が高い法務ナレッジを持って自走できるよう尽力しています」

“まだないもの”をつくり出す醍醐味

同社では2021年11月、業界で類を見ない新・賃貸管理プランをリリースし、“サブリース問題”に一石を投じた。このプロジェクトについて、古澤賢太郎クリストフ氏が説明してくれた。

「従来は当社も、不動産物件の貸主(オーナー)と転借人の間に当社が借主・転貸人として入る、広義でのサブリース方式のサービスを提供していました。20年にサブリース新法が施行されましたが、マスターリース契約の借地借家法の適用はそのままで、貸主にとって不利となる条件が残ることを当社は従前から課題に感じていました。新法施行前に、当社代表から『サブリースのかたちを当社が先導して変えていきたい。透明性や公平性が担保できる方法を考えてほしい』という宿題が。結果、石川、鍋谷と試行錯誤しながら『将来集合債権譲渡』という貸主にとって有益となる新しいスキームを設計し、プラン名称『NEOインカム』としてリリースすることができました。このプロジェクトは、経営層、財務、経理のメンバーと協働で行いましたが、我々法務部がアイデアを出し、主導で進めたもの。特に貸主にとっては、従来のマスターリース契約のデメリットを解消し得る、画期的なプランになったと自負しています」

同プランは「将来集合債権譲渡型賃料収受スキーム」として、商標登録、ビジネスモデル特許を出願中とのこと。しかしながらリリースまでには、多くの関係者との交渉や調整が必要だった。

「不動産業界では初めてとなるスキームであり、プランのため、従前と異なる会計処理が必要になります。そのため、監査法人と交渉しました。また、“債権を売って対価を得る”スキームのため、税務上、不動産所得に該当し続けるか、国税庁と協議し、さらに、各金融機関に権利保全の説明に回り……と、社内はもちろん、多くの関係機関とコミュニケーションを取りながら走り続けました。我々には、このプランを業界スタンダードにしていきたいという目標があります。そのためにはまず、不動産業界内の理解を得ていくことが不可欠。そのうえでプランの運用機会が増えていけば、社会的意義の高い取り組みとなることは間違いありません。こうした慣例や慣習を打ち破るようなプロジェクトにかかわれることも、当社法務部ならではの面白さです」(古澤氏)

また同社では、やはり業界初となる“不動産業界のDX化”にいち早く着手。主導した鍋谷氏は、その取り組みを、こう説明する。

「発端は、石川が法務からも『不動産業界のDX化を決行したい』と宣言したこと。しかし、売買契約や賃貸借契約一つとっても、買主・売主・買主側の仲介・売主側の仲介と、最低4者がかかわります。その全者がDX化しなければならないことが一番の難題。パソコン一台あればできるはずのDX化ですが、『第一歩がなかなか踏み出せない』と。そこで我々主催で、不動産企業を招いたセミナーや研修などを何度も開催しました。その甲斐もあって、DX化に乗り出す不動産企業が徐々にではありますが増加中。手応えを実感できています」

「国内の不動産企業は約12万社あり、最小規模は1~2名体制です。また、小さな不動産企業では高齢化が進み、後継者問題に悩むケースも少なくありません。そうした企業ほど、DX化しておかないと事業承継が難しくなる。我々は、不動産業界全体でそのように手付かずになってしまっている課題について、最先端のテクノロジーを活用しながら、変革していきたいと思っています」(古澤氏)

  • 株式会社GA technologies
    東京・六本木のヘッドオフィス。エントランスから広がるカフェスペースやガラス張りの会議室など、コミュニケーションの円滑化を促す仕掛けが随所にみられる
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    一方で、1人用の作業ブースも。ただし新型コロナ禍以降は、リモートワークが主流

ビジネスと企業統治の両輪を回していく

同社のコア事業はプロップテックだが、不動産に紐づく領域としてフィンテック(金融)やコンテック(建設)など、ほかの“X-テック領域”にビジネスが広がる可能性も高い。法務部であっても、古澤氏のように、ビジネス寄りの立ち位置で新規事業を進め、法律家としての創造性を発揮するチャンスが多々あることが、同社で働く魅力といえるだろう。

「自ら現場に踏み込んで事業にコミットし、コミュニケーションを取れる人、その時の当社のフェーズを理解したうえで『ここまでのリスクなら許容できる。よし、やろう!』と、事業部メンバーの背中を押してあげられる人。そんな気概と覚悟、大胆さを持っている人なら、十分当社にフィットすると思います」(古澤氏)

最後に、石川氏にこれからどのような人づくり・組織づくりをしていきたいか、うかがった。

「我々法務部のビジョン&ポリシーは、『ステークホルダーからのオーダーに、リーガルマインドを駆使して“価値ある解”で応えると同時に、慣例に囚われない攻めの法務を“和衷協同”で実現する』です。社内外を含めて法務部のメンバーが接する相手は多様で、実に様々な相談や課題が日々持ち上がります。法的な観点をベースに持ちつつ、簡単にノーと言わず、解決につながる選択肢を複数提示していくことが求められます。その積み重ねの先で、法律という得意分野を持ったジェネラリストとして、法務部出身者が様々なほかの部署で多数活躍している――そんな未来に期待しています。そのような人材を法務部から多数輩出できれば、当社自体の“企業としての厚み”も増していくはずですから。現状、法務部の業務はかなりビジネス寄りにあると感じています。一方で、上場していますから、ガバナンスもきちんと効かせる必要がある。その両輪を回していくのが我々の使命なので、法務部メンバー全員、その視座を持って、“両輪を同時に最適化していく”、“我々が当社を牽引していく”という意気込みで仕事に向き合っていきたい。そう考えています」

※取材に際しては撮影時のみマスクを外していただきました。