法務に求められるものは何か、山本部長に水を向けると、「できる限り現場の最前線に赴き、契約交渉、トラブル解決に参加する姿勢で業務に臨むこと」という答えが返ってきた。
「事業部とは、『こんなリスクが考えられますけど、どうしますか?』というかかわり方もあるでしょう。しかしそこから一歩進んで、利益とリスクについての自分の考えを持ち、むしろ全体をリードする法務たれ、ということです。会社はどんどん新しいビジネスにチャレンジしますから、前例から〝解〞を引き出せないことも多い。そんな時でもきちんとリスクを認識し、どう解決するかの道筋を示せる能力、それに取り組むのが面白いと感じられるセンスが大事だと思うのです」
センスを磨くため、個々の能力アップは欠かせない。同部では、若手を対象に1年半程度の「海外留学」を制度化している。
山本部長は、「従来は米国のロースクールに留学し、米国の弁護士資格を取るというパターンでしたが、一昨年初めて1名が中国での研修に出て、今年戻ってきました。6月には宮川さんが英国のロースクールに留学する予定です。今後もビジネス面で注目されているロシア、南米なども含めて、積極的に外に出てもらうつもりです」と話す。
ところで、法務部には独自の〝マスコット〞がいる。フクロウをモチーフにした「ホーガル君」だ。愛称は〝法〞と〝リーガル〞をかけたもの。「〝森の賢者〞といわれ、一方で猛々しい猛禽類でもあるフクロウのように、知恵を持ち、最前線まで飛んでいけ、というメッセージを込めました。みんながその思いを忘れないよう、部長席の周囲にはフクロウグッズがあふれているんですよ(笑)」
実はこの「ホーガル君」を考案したのも、井上さんと篠原さんの二人。「法務部の社内研修用資料などにもプリントして、私たちの姿勢をアピールするのに一役買ってもらっている」そうだ(井上課長)。
そんな彼女たちの働きぶりも目にしつつ、「出産や育児を理由に、優秀な女性が職場から去るのは、実にもったいない。法務の女性部員の力をそぐことなく、継続して能力を発揮してもらえるために、組織として何ができるのかを真剣に考えていきたい」と山本部長は言う。
最後に、若き読者向けに企業法務の魅力を語ってもらった。「最初の段階からビジネスの現場とかかわって仕事をすれば、それが『自分の案件』になって、愛着がわく。ビジネスを育て上げていく企業法務の仕事は、事務所弁護士の仕事とは違った面白さがある。そんな〝切り口〞を持って働くことに興味を持つ方は、ぜひ挑戦してみては」