金融機関のビジネスは、法律や詳細な行為規則などの遵守が不可欠の条件となる。ルールは多岐にわたり、改正の頻度も極めて高い。
「そうした情報収集も行いながら、ビジネス部門にリーガルリスクについて、きちんと理解してもらうのが我々の役目。ただし、規制で制約されているということは、逆にいえば規制緩和によってビジネスチャンスの広がる可能性があることを意味するのです」と金兵氏は言う。
「今は、日本に再び活発な金融マーケットを呼び戻そう、というトレンドですから、そうした方向の法改正も頻繁に行われます。それをいち早くとらえて、どこまでが可能になったのかを的確にアドバイスできるのは、我々法務部しかありません」
実際、2011年に、新たな債券市場「東京プロボンド」が開設。当初ほとんど活用されなかった仕組みだったが、同社の法務部が証券取引所などと共同して検討を重ね、制度のボトルネック解消などに貢献。当該市場を活用した最初の資金調達案件を同社が担当するなど、ビジネスの拡大に結実した。
そうしたリーガルアドバイスの基本は、「〝ネバー・セイ・ノー〞だ」と金兵氏は強調する。
「〝ノー〞と言うのは簡単。でも必ずソリューションを用意するからこそ、現場は我々を信頼してくれる。本当にダメな〝ノー〞もわかってくれるのです」
それを貫くためには、法務部員としての、一人ひとりのレベルアップが欠かせない。
「ネットで調べれば、出る結論もあります。それを提示すれば、顧客は満足するかもしれません。でも本人の血肉にはならない。時間がかかっても自分の頭で考え、納得するまで勉強する人とは、時間の経過と共にどんどん差が広がっていく。それが、私の経験から得た〝良い弁護士〞になれるかどうかの分岐点です」
続けて柏尾氏は、「弁護士数が急増する中、弁護士の役割や仕事の範囲を固定観念で決めつければ、縮まるパイを奪い合うことになるだけ。自分が持つスキルを社会にどう生かしていくのかという新しい視点を持てば、インハウスロイヤーも含めて、いろいろな進路が開けてくるはず」と、若き法律家へのメッセージを語ってくれた。