Vol.61
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法務部は33名の陣容(部長、リーガルチェック担当14名、訴訟・債権担当12名、統括・企画担当6名)。同部に所属する弁護士資格保有者は12名(全社で13名)。

法務部は33名の陣容(部長、リーガルチェック担当14名、訴訟・債権担当12名、統括・企画担当6名)。同部に所属する弁護士資格保有者は12名(全社で13名)。

THE LEGAL DEPARTMENT

#78

株式会社ゆうちょ銀行 法務部

圧倒的な顧客基盤と進む運用の高度化・多様化。新たな挑戦、進化する組織を支える法務部

新規事業に積極的に関与

2007年に日本郵政公社の民営化・分社化を経て誕生し、15年に東京証券取引所市場第一部に上場した、ゆうちょ銀行。近年、外債投資やヘッジファンドなど多様な投資手法に着手、地域金融機関と連携した投資先開拓にも乗り出している。投資信託などの資産運用商品販売事業も強化し、持続的な収益拡大の柱とする。そうしたチャレンジをサポートする法務部の成り立ちを、法務部長の五十畑昭彦氏に伺った。

「民営化した頃、主業務は相続関係の貯金払戻請求訴訟対応が重きをなし、いわゆる企業法務の経験者は少なく、銀行法務部としての役割を果たせる組織として十分とはいえませんでした。しかし当時の社長が『あらゆる業務に法務部がコミットせよ』と宣言し、全社が法務の重要性を意識し始め、業務範囲は拡大していきました。増強・増員で弁護士やロースクール出身者を採用したのが11年からなので、まだ若い組織といえます」

株式会社ゆうちょ銀行 法務部

現在はリーガルチェック担当、訴訟・債権担当、統括・企画担当と、法務部内に3つのラインを置く。各担当のもとには、どんなに小さな事案でも「まず法務部に」と相談が寄せられる。存在感を増す同部のミッションについて聞いてみた。

「低金利下にあって、当行も新たな投資運用手法にかつてないスピードでトライし続けています。当然、そこには金融商品取引法や外国法など様々な法律が絡むので、法務部が現場と協働、時には率先して整理に走ります。フィンテックの進化や決済手段の多様化など、お客さまからの利便性への期待も大きくなり、市場運用、営業などの現場、そして経営サイドと並走しながら、それぞれを成功に導くべく、法的に漏れがないようサポートするのが存在意義です」

  • 株式会社ゆうちょ銀行 法務部
    不定期に部内勉強会を開催。外部セミナーも活用する。希望者には、事務職員能力認定試験(日弁連)、ビジネス実務法務検定試験(東京商工会議所)の受講料などをサポートしている
  • 株式会社ゆうちょ銀行 法務部
    有資格者の中には新卒総合職として入行した人も多い。中途入行者は現在7名。省庁や金融企業での社会人経験を経てロースクールで学んだ人など。なお全社では総合職の約半数が女性。休暇制度などが充実し、復職者も多い

現場と協働。ダイナミズムを体感

実際に〝現場と並走〞しているリーガルチェック担当の辰巳華子氏にやりがいを聞いた。

「例えば、市場部門でヘッジファンドやプライベートエクイティといったファンドへの投資案件が持ち上がれば、契約書を詰め始める段階から加わります。投資タイミングとの関係で期限がタイトな場合も多いため、連携を密にして協働する必要があるのです。私の場合、法務部の執務室で仕事をするだけでなく、より積極的にコミュニケーションをとるようにしています。現場のメンバーとの協働により、事業ダイナミズムを感じられることが、この仕事の魅力です」

訴訟・債権担当の西浴啓太氏も、現場とのかかわりは深いと語る。

「訴訟では、法務部が統括管理しながら、支社機能を担うエリア本部と協力し、社内外の弁護士やエリア本部のメンバーと共に訴訟対応を進めています。債権回収業務も同じくエリア本部と協力して行っています。私自身、エリア本部に籍を置き、法務部と協力しながら訴訟対応・債権回収業務を行っていたこともあり、訴訟の相手方や債務者に直接交渉する、ある種泥臭い仕事も多く体験しています」

「そもそも当行では貸付を行っていなかったので、全社的に与信管理のDNAがありませんでした。そこで法務部が前面に立ち、専任ラインを置き債権回収を主導する流れをつくり、彼にはその先導役を任せました。自発的にエリア本部で勉強会を開くなどしてくれたお陰もあり、法務への関心が深まりました」と五十畑氏。西浴氏は「私はいわば法務の伝道師役。〝草の根的な啓蒙活動〞の一翼を担っています」と笑う。

五十畑氏に、法務部の将来像を伺った。

「一言でいえば〝社内法律事務所〞です。クライアントとなる現場の専門性の高い事案に積極的に関与していけるスキル・気合・自覚・志向を備えたプロフェッショナル集団でありたい。今後も現場の要望を受け止め、どんどんアイデアを提案できる法務コンサルタントのような専門性を蓄積していきます。そのうえで法的にサポートできる機会を貪欲に見つけ、自らの活躍の機会とする人材が集まる専門部署として、法務部の存在感を一層増していきたいと思います」

株式会社ゆうちょ銀行 法務部
日本郵政グループ傘下の銀行。貯金残高は邦銀トップクラス、資産運用額は200兆円を超える。巨大資産の運用と、全国の郵便局を窓口とし、「地域との接点を大事にして利便性を供給する」という二面を有するのが同行の特徴