法務最前線:2018年1月号 Vol.61

法務最前線

アトーニーズマガジン 法務最前線

経営そのものに深くかかわる企業法務部。現場からの相談に瞬時にかつ的確に判断することが求められる組織に必要なファクターとは、その精鋭が弁護士に期待することとは何か?各社の法務部長へ伺いました。

圧倒的な顧客基盤と進む運用の高度化・多様化。
新たな挑戦、進化する組織を支える法務部

法務最前線

株式会社ゆうちょ銀行 法務部

新規事業に積極的に関与

2007年に日本郵政公社の民営化・分社化を経て誕生し、15年に東京証券取引所市場第一部に上場した、ゆうちょ銀行。近年、外債投資やヘッジファンドなど多様な投資手法に着手、地域金融機関と連携した投資先開拓にも乗り出している。投資信託などの資産運用商品販売事業も強化し、持続的な収益拡大の柱とする。そうしたチャレンジをサポートする法務部の成り立ちを、法務部長の五十畑昭彦氏に伺った。
「民営化した頃、主業務は相続関係の貯金払戻請求訴訟対応が重きをなし、いわゆる企業法務の経験者は少なく、銀行法務部としての役割を果たせる組織として十分とはいえませんでした。しかし当時の社長が『あらゆる業務に法務部がコミットせよ』と宣言し、全社が法務の重要性を意識し始め、業務範囲は拡大していきました。増強・増員で弁護士やロースクール出身者を採用したのが11年からなので、まだ若い組織といえます」
現在はリーガルチェック担当、訴訟・債権担当、統括・企画担当と、法務部内に3つのラインを置く。各担当のもとには、どんなに小さな事案でも「まず法務部に」と相談が寄せられる。存在感を増す同部のミッションについて聞いてみた。
「低金利下にあって、当行も新たな投資運用手法にかつてないスピードでトライし続けています。当然、そこには金融商品取引法や外国法など様々な法律が絡むので、法務部が現場と協働、時には率先して整理に走ります。フィンテックの進化や決済手段の多様化など、お客さまからの利便性への期待も大きくなり、市場運用、営業などの現場、そして経営サイドと並走しながら、それぞれを成功に導くべく、法的に漏れがないようサポートするのが存在意義です」

現場と協働。ダイナミズムを体感

実際に〝現場と並走〞しているリーガルチェック担当の辰巳華子氏にやりがいを聞いた。「例えば、市場部門でヘッジファンドやプライベートエクイティといったファンドへの投資案件が持ち上がれば、契約書を詰め始める段階から加わります。投資タイミングとの関係で期限がタイトな場合も多いため、連携を密にして協働する必要があるのです。私の場合、法務部の執務室で仕事をするだけでなく、より積極的にコミュニケーションをとるようにしています。現場のメンバーとの協働により、事業ダイナミズムを感じられることが、この仕事の魅力です」
訴訟・債権担当の西浴啓太氏も、現場とのかかわりは深いと語る。「訴訟では、法務部が統括管理しながら、支社機能を担うエリア本部と協力し、社内外の弁護士やエリア本部のメンバーと共に訴訟対応を進めています。債権回収業務も同じくエリア本部と協力して行っています。私自身、エリア本部に籍を置き、法務部と協力しながら訴訟対応・債権回収業務を行っていたこともあり、訴訟の相手方や債務者に直接交渉する、ある種泥臭い仕事も多く体験しています」
「そもそも当行では貸付を行っていなかったので、全社的に与信管理のDNAがありませんでした。そこで法務部が前面に立ち、専任ラインを置き債権回収を主導する流れをつくり、彼にはその先導役を任せました。自発的にエリア本部で勉強会を開くなどしてくれたお陰もあり、法務への関心が深まりました」と五十畑氏。西浴氏は「私はいわば法務の伝道師役。〝草の根的な啓蒙活動〞の一翼を担っています」と笑う。
五十畑氏に、法務部の将来像を伺った。「一言でいえば〝社内法律事務所〞です。クライアントとなる現場の専門性の高い事案に積極的に関与していけるスキル・気合・自覚・志向を備えたプロフェッショナル集団でありたい。今後も現場の要望を受け止め、どんどんアイデアを提案できる法務コンサルタントのような専門性を蓄積していきます。そのうえで法的にサポートできる機会を貪欲に見つけ、自らの活躍の機会とする人材が集まる専門部署として、法務部の存在感を一層増していきたいと思います」

■企業概要

  • 株式会社ゆうちょ銀行
  • 設立 2006年9月1日
  • (2007年10月1日、「 株式会社ゆうちょ」から「 株式会社ゆうちょ銀行」に商号変更)
  • 資本金 3兆5000億円
  • 取締役兼代表執行役社長 池田憲人
  • 従業員数 1万2965名
  • ( 2017年3月31日現在)
  • 所在地 〒100-8798
  • 東京都千代田区霞が関1-3-2
  • TEL 03-3504-4411
  • (日本郵政グループ代表)
  • URL http://www.jp-bank.japanpost.jp/