Vol.73-74
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法務部メンバーは安田浩之氏、中本緑吾氏、マネージャー・中村友紀氏(左から2人目)の3名(右から2人目は、法務及び人事総務担当取締役・鈴木啓子氏)

THE LEGAL DEPARTMENT

#104

HJホールディングス株式会社 法務部

組織の成長を牽引する役割も期待される、クリエイティブとビジネスの“橋渡し役”

全社員にとって〝頼れる法務〟

2011年、国内でサービスを開始したオンライン動画配信サービス「Hulu」。自社オリジナルコンテンツ制作などの新たな取り組みに次々と着手しながら、同事業を運営するのがHJホールディングスだ。14年に日本テレビが同事業を承継し、17年に株式会社へと組織変更。米国Hulu社、ヤフー、東宝、讀賣テレビ、中京テレビへの第三者割当増資を実施、経営基盤の強化を図った。現在、同社の社員数は約100名。企業のライフサイクルでいえば、まさに成長期といっていいだろう。

同社が取り扱うコンテンツ数は7万を超えるというから、契約書レビューだけでも相当な数だ。しかし法務部の陣容は部長以下3名。この“少数精鋭チーム”が担う役割を、中本緑吾氏にうかがった。

「当社は、メディア企業から提供されるコンテンツのインターネット配信を中心として、コンテンツの企画・制作・販売などを行っており、それらに絡む契約対応などが法務部の主な業務ですが、私たちの仕事は単なる契約書レビュー・作成にとどまりません。むしろ、各プロジェクトに初期段階から積極的に入り込み、担当者と共にビジネスを構築・推進することが、重要な役割となっています」

「何か事を起こす時は、まず法務に相談」という認識を経営陣・社員が持っており、法務メンバーは“常に頼られる存在”となっている。最近、法務部が活躍した案件を、中本氏が教えてくれた。

「今年6月、当社は新たにHuluストア(都度課金制)サービスを開始しました。既存の会員(定額料金で見放題)とのアカウントの取り扱いをどうするか、そのためのシステムの設計、景品表示法に照らした広告宣伝など、様々な部署の状況を考慮しながら、法務部としてアドバイス。経営陣に、グレーゾーンにあるリスクを可視化し、ビジネス上の選択肢を提示するなど、事業を左右するような決断の場にも関与しました」

コンテンツの配信や制作など、いわゆる“ザ・エンタメ”まわりの法務のみならず、IT、プロダクト、広告宣伝、マーケティングなどあらゆる事業・部署の細部まで目を配り、かつ大局的見地に立ち、予防法務から戦略法務までを一気通貫で行う法務部といえる。

 

HJホールディングス株式会社 法務部
各部署の担当者と気軽なスタイルで打ち合わせ。時には立ち話から新規事業の話に発展することも。フリードリンク・フリーフードのサーバが多数設置されている

ビジネスマインドを持つ法律のプロが揃う

法務部の業務はおおまかに、中本氏が国内案件、中村友紀(ひとみ)氏が海外案件を担当。部長の安田浩之氏もプレイングマネージャーとして、国内外を問わず多種多様な案件に対応している。

中本氏は都内法律事務所勤務から経済産業省商務情報政策局コンテンツ産業課を経て昨年入社。日本のコンテンツ産業政策を立案・執行する側にいたものの、政策の具体的実現に民間の立場で挑戦し、業界活性化に貢献したいと考えて転職した。

中村氏は台湾でLL.M.を修了後、世界トップクラスの米国系法律事務所の台北オフィス、台湾大手の法律事務所などに勤務し、主に日系企業に向けた業務に従事。オーストラリアと台湾で8年間を過ごして入社。

安田氏はニューヨークをベースに欧米を駆け回って映像制作に携わったのち、ニューヨーク州とワシントンDCの弁護士資格(JD)を取得し、マンハッタンの大手法律事務所に勤務。都合30年余をニューヨークで過ごし、帰国後、国内大手企業の法務部長・執行役員を経て、同社へ入社――と、3名の経歴は、それぞれユニークだ。中村氏は、企業法務の仕事の醍醐味を次のように語る。

「法律事務所でも多くの大型案件に関与してきましたが、そこでは目にすることがなかった“外に出ない契約内容”を扱えるのは、企業法務ならでは。契約内容を細部まで精査し、買い付け担当などと交渉内容や交渉の仕方について協議しながら案件を進めていく。そこに、とてもやりがいを感じます」

「例えば、友紀さんが担当する海外スタジオとの大型契約において、当社は歴史も浅く、小さな企業と見られる場合もあります。しかしそこを気にせず、交渉力を発揮し、まとめ上げる。海外の大手企業と対等に渡り合える交渉力、知恵と経験を持つ実力者が、当社には揃っているという自負があります」と、安田氏が付け加える。

法務部メンバーとして今後、注力していきたい業務について、中本氏に聞いてみた。

「今後、海外プロダクションとオリジナルコンテンツを共同製作する機会が増えていくと思われます。そうなると、例えば新たにLLCなどを設立するかしないか、資金調達や税金面はどう対処するのかなど、様々な権利まわりやスキームを考慮してビジネスを成立させていかねばなりません。今、日本国内にそれができる人材が少ないことを省庁時代に痛感していました。当社は、そのリーディングカンパニーとなっていきたい。業種柄、当社はどうしても“クリエイティブ寄り”の人材が多い。そこに“お金を稼ぐ”“ビジネスとして成立させる”という観点を持つ、いわゆるビジネスプロデューサーを育成していかねばという意識もあります。例えば、今扱っている案件の権利者は誰か?将来マルチ展開するにあたって懸念はないか?など、契約一つとっても、先の観点を武器に、ビジネスにあと一歩踏み込めるチャンスは多々ある。当社にその知見を有した人材が増えれば、さらに企業として成長していけるはず。そして、その実現には法務部の知見が必要不可欠。ゆえに法務部としては、従来業務に加え、その教育にも注力していきたいと考えます」

社内外でクリエイティブとビジネスの橋渡しをし、消費者が楽しむコンテンツとその裏側をどうつなげるかに、全力を注ぐ法務部だ。

  • HJホールディングス株式会社 法務部
    「法務部では私が一番の新参者(笑)。二人には“現場”で鍛えてもらっています」と安田氏
  • HJホールディングス株式会社 法務部
    社長や取締役とデスクを並べて仕事をする

自由を謳歌できる社風

同社は元々、米国Hulu社の日本法人としてスタート。今も“外資系的”な風土を継承する。例えば、メンバー同士、下の名前に“さん付け”で呼び合う。働き方や働く場所は、個人の裁量を尊重。社長以下、経営陣もメンバーと机を並べ、気さくに話せる。ダイバーシティ&インクルージョンが浸透している。法務部が主張せずとも、自然な流れで“攻めの法務”を実践できる体制・環境ができている、などだ。長年、米国で暮らし、多くの“外資系企業”を見てきた安田氏は、「これほど自由で、居心地のよい風土の企業はない」と笑う。中本氏が“自由”の意味について補足する。

「自ら『やりたい』と手を挙げることについて否定されない。もちろん部署ごとに役割や垣根はあるが、それを越えて法務がビジネス目線で提案することも受け入れてくれ、協働を歓迎してくれる。そういった自由さがあるということです。伝統的な法務の役割にとどまらず、ビジネスプロデューサー的な立ち位置で全社的に絡んでいける柔軟性も当社の強みですね」

なお安田氏は、今年の夏に同社に入社したばかりだが、同氏の参画は、より強固な組織づくりに欠かせないという。法務及び人事総務担当取締役の鈴木啓子氏に説明いただいた。

「当社は、来年ようやく10周年を迎える若い企業です。メンバーも若手を中心としたプロフェッショナル集団ですが、これからは一人ひとり“それぞれの枠組み・職種ごとのプロ意識”からステップアップし、ビジネスパーソンとしての総合力や人間力を伸ばしてほしいと思っています。飛躍を期する当社および社員の成長のため、現場を熟知し、ガバナンス強化の経験があり、グローバリズムも熟知する安田氏の力を借りるべく、参画いただきました」

安田氏に、今後、法務部が求める人材について聞いた。

「当社の代表は『完成形がない仕事だからこそ、常に最良を追い、〝道なき道〟を歩める人を』というメッセージを発信しています。法務部もそれぞれがプロ意識とクリエイティビティを持ち、“道なき道”を模索し、進んでいます。そしてここには、肩ひじ張らずに“攻めの法務”を実践でき、多様な個性を発揮して活躍できる環境があります。ユーザーの皆さまのみならず、働く私たちも含めて『Happyになれる!』事業の創出に寄与し、当社の無限の可能性を法務部として追求していきたい。そのためにも、道なき道を共に歩き、未開の地を開拓する“仲間”となってくれる意欲のある方と働きたいと思います」