本社管理本部法務部は、契約書審査・管理や大型プロジェクト支援などを担当する法務課と、輸出審査や、国内外の輸出管理規制の調査を行う輸出管理課で構成される。最近は米中貿易戦争のあおりで米国レギュレーションの解釈が困難でもあり、同社の対応に関するガイダンスやインストラクションをグローバルで発出するといった業務も輸出管理課が担う。この2課と、2020年に新設したコンプライアンス部を合わせ、“リーガル・ヘッドクォーター”を構成する。
18年、同社初の弁護士として入社し、法務課長を務める佐藤仁俊氏は、仕事のやりがいを次のように語る。
「法律事務所勤務時代、社会の動きやビジネスの仕組みを十分に知らないまま企業法務に携わっているという危機感がありました。また、外から関与できる“一部の業務”ではなく、ビジネスの初めから終わりまで当事者としてかかわり、世界とつながるような仕事をしてみたいという思いもあって入社を決意。現在の業務は、まさに世界の動き・社会の動きと直結する内容で、〝ビジネスの最前線にいる〟というダイナミズムを日々感じることができています」
入社後、特許関連の戦略策定プロジェクトメンバーに抜擢され、現在は、法務課と知的財産部のIP戦略課を兼務。新たな特許分析手法に関する意見交換、内部統制の説明会(コンプライアンス部新設以前)などのためドイツに出張し、新たな電子署名システムの社内導入の際は、現地管理部門のメンバーとディスカッションするためシンガポールに出向くなど、国内外を飛び回っていたそうだ。「やはり直接会って話したほうがスムーズに話がまとまります」と笑う。
近年、同社が行ってきたМ&Aについても、佐藤氏は東氏の仕事ぶりを間近で見てきたという。
「M&Aについてはトップシークレットで動くケースが多いため、主として東が担当しますが、米国Astronics社の半導体関連テスト事業買収であったり、米国Essai社の買収であったり、米国PDF Sоlutiоnsとの業務提携および資本参加などのプロジェクトへの対応を間近で見て、米国でのディールではありますが、東を含む日本のプロジェクトチームが、しっかりと存在感を発揮しているという印象を持ちました。例えば、海外の拠点にもインハウスローヤーがいますが、彼らに対しては、日本チーム主導で指示を出しますし、こちらの“決”がなければ先に進ませないというのは、あまり他社ではないことのように感じます。そういうと強権的に聞こえてしまうかもしれませんが(笑)、責任感が非常に強いのだと、前向きに理解しています」
2人目の弁護士として20年に入社し、コンプライアンス部でリーダーを務める松岡佐知子氏にも、仕事のやりがいを尋ねた。
「海外案件に携わりたい、英語で仕事ができるようになりたいと考え、当社に入社しました。法務課配属だと思っていたら、『新設のコンプライアンス部を牽引してほしい』と。もともと課題を発見し、対策を考え、実行して、新たな問題点を見いだす企画的な仕事が好きなので、コンプライアンス部での仕事は、私の興味・関心、得意とぴったり合いました。また、私の業務は、国内はもちろんグローバルグループ全体に影響を与えるため、自分で考えたことが波及・浸透していくことの楽しさと、大きな責任を背負っているというプレッシャーがあります。そこに、この仕事の醍醐味を感じています」
英語が得意ではなかったという松岡氏だが、グローバル会議などに参加する機会が増えたため、TOEICでかつて採ったスコアを、まったく勉強せずに上回ることができたそうだ。
「逃げられない状況に自分を追い込んだことで、自然と鍛えられたみたいです(笑)」