Vol.75
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本社管理本部法務部12名(法務課6名、輸出管理課6名)、コンプライアンス部3名の陣容。有資格者は3名。プロパーと中途入社者は約半数ずつ。中途入社者の前職は、法律事務所、商社、製造業、運輸業など

本社管理本部法務部12名(法務課6名、輸出管理課6名)、コンプライアンス部3名の陣容。有資格者は3名。プロパーと中途入社者は約半数ずつ。中途入社者の前職は、法律事務所、商社、製造業、運輸業など

THE LEGAL DEPARTMENT

#105

株式会社アドバンテスト 法務部/コンプライアンス部

半導体試験装置のトップランナー。活躍の舞台はグローバルに広がる

合言葉は〝ワンリーガル〟

株式会社アドバンテストは、半導体試験装置などを開発・製造する東証一部上場企業。主力製品の半導体テスタ(メモリ・テスタ、SоCテスタ)は世界トップシェアを誇り、5G(第5世代移動通信)半導体用テスタでも先行する。

同社は国内の営業拠点、研究・開発拠点、工場のほか、アメリカ、ヨーロッパ、東南アジア、韓国、台湾、中国にヘッドオフィスや事業所などを有する。本社管理本部 法務部/コンプライアンス部は、ヘッドクォーターの一部門として、海外子会社のリーガル部門と緊密に連携しながら、グローバルな視点で法務業務の管理を遂行している。同部部長の東健介氏に部のミッションを伺った。

「“リーガル・ヘッドクォーター”として、社内規程や契約書、ソフトウエアライセンス・約款などのグローバルテンプレートを策定・運用しています。また、海外で起きているインシデントを即座にキャッチし、マネジメントに正しく報告する役割も。常に国内外の事業・社員に目配りする必要があるため、グローバルで緊密な連携を維持し続けなければなりません。いずれにせよ、“ワンリーガル”を合言葉に、世界中どこの拠点でも、情報の偏りやサービスレベルの格差なく、同品質のリーガルサービスを社内外に提供することが重要なミッションといえるでしょう」

新型コロナ禍以前は頻繁にあった海外出張も、今は「グローバルリーガルラウンドテーブル」というオンライン会議で代替。国内については社会情勢とのにらみ合いだが、必要に応じて各地のR&Dセンタなどへ出向き、現場で法務相談などを受けることもある。

「状況が許す限り“対面で話を聞く”が、私の方針です。法務の仕事は、私たちが必要とする情報を社内の人間からどれだけ引き出せるかが肝。直接会って話すからこそ、言葉の端々や態度から相手の考えや本音に気づけることも多い。いずれ新型コロナが落ち着けば、国内のみならず海外も同様に、メンバーにはどんどん出張してもらいたいと思っています」

株式会社アドバンテスト
各国のメンバーが集結する「グローバルリーガルミーティング」。写真はアメリカの様子(日本からは、東氏と佐藤氏が参加。撮影:東氏)

前向きに、目を外に向けて仕事ができる

本社管理本部法務部は、契約書審査・管理や大型プロジェクト支援などを担当する法務課と、輸出審査や、国内外の輸出管理規制の調査を行う輸出管理課で構成される。最近は米中貿易戦争のあおりで米国レギュレーションの解釈が困難でもあり、同社の対応に関するガイダンスやインストラクションをグローバルで発出するといった業務も輸出管理課が担う。この2課と、2020年に新設したコンプライアンス部を合わせ、“リーガル・ヘッドクォーター”を構成する。

18年、同社初の弁護士として入社し、法務課長を務める佐藤仁俊氏は、仕事のやりがいを次のように語る。

「法律事務所勤務時代、社会の動きやビジネスの仕組みを十分に知らないまま企業法務に携わっているという危機感がありました。また、外から関与できる“一部の業務”ではなく、ビジネスの初めから終わりまで当事者としてかかわり、世界とつながるような仕事をしてみたいという思いもあって入社を決意。現在の業務は、まさに世界の動き・社会の動きと直結する内容で、〝ビジネスの最前線にいる〟というダイナミズムを日々感じることができています」

入社後、特許関連の戦略策定プロジェクトメンバーに抜擢され、現在は、法務課と知的財産部のIP戦略課を兼務。新たな特許分析手法に関する意見交換、内部統制の説明会(コンプライアンス部新設以前)などのためドイツに出張し、新たな電子署名システムの社内導入の際は、現地管理部門のメンバーとディスカッションするためシンガポールに出向くなど、国内外を飛び回っていたそうだ。「やはり直接会って話したほうがスムーズに話がまとまります」と笑う。

近年、同社が行ってきたМ&Aについても、佐藤氏は東氏の仕事ぶりを間近で見てきたという。

「M&Aについてはトップシークレットで動くケースが多いため、主として東が担当しますが、米国Astronics社の半導体関連テスト事業買収であったり、米国Essai社の買収であったり、米国PDF Sоlutiоnsとの業務提携および資本参加などのプロジェクトへの対応を間近で見て、米国でのディールではありますが、東を含む日本のプロジェクトチームが、しっかりと存在感を発揮しているという印象を持ちました。例えば、海外の拠点にもインハウスローヤーがいますが、彼らに対しては、日本チーム主導で指示を出しますし、こちらの“決”がなければ先に進ませないというのは、あまり他社ではないことのように感じます。そういうと強権的に聞こえてしまうかもしれませんが(笑)、責任感が非常に強いのだと、前向きに理解しています」

2人目の弁護士として20年に入社し、コンプライアンス部でリーダーを務める松岡佐知子氏にも、仕事のやりがいを尋ねた。

「海外案件に携わりたい、英語で仕事ができるようになりたいと考え、当社に入社しました。法務課配属だと思っていたら、『新設のコンプライアンス部を牽引してほしい』と。もともと課題を発見し、対策を考え、実行して、新たな問題点を見いだす企画的な仕事が好きなので、コンプライアンス部での仕事は、私の興味・関心、得意とぴったり合いました。また、私の業務は、国内はもちろんグローバルグループ全体に影響を与えるため、自分で考えたことが波及・浸透していくことの楽しさと、大きな責任を背負っているというプレッシャーがあります。そこに、この仕事の醍醐味を感じています」

英語が得意ではなかったという松岡氏だが、グローバル会議などに参加する機会が増えたため、TOEICでかつて採ったスコアを、まったく勉強せずに上回ることができたそうだ。

「逃げられない状況に自分を追い込んだことで、自然と鍛えられたみたいです(笑)」

革新や挑戦に意欲を燃やす

「創業時の当社は、タケダ理研工業という小さなベンチャー企業で、自由闊達な風土であったと聞いています。その風土が大きくなった今も残っているのか、上場企業の社員にありがちな“単なる歯車”ではなく、一人ひとりに一定の裁量があり、責任感を持って仕事をさせてもらえます。一方で、上場企業の法務として必要な素養も求められるため、法務のカバレッジは広く、そこが面白い」(佐藤氏)。

佐藤氏の採用も、コンプライアンス部の新設も、東氏が「社長や役員に直談判して実現した」という。グローバル企業でありながら、ベンチャー的な色を残した、風通しの良い風土であることも同社の特色だろう。

「私たちは常に新たな分野に乗り出すこと、新たなものをつくり出すことを目指しています。必要があれば社内のルールも変えるし、グループ全体で向上するには何が必要か、常に頭を使います。そうした前向き、かつ、外に目を向けて仕事ができることが当社法務の魅力です」(東氏)

今後を見据えて、東氏は管理本部におけるグローバルな人材交流を計画している。

「“リーガル・ヘッドクォーター”として、グループ企業に対してメッセージやインストラクションをきちんと出していかなければ、私たちの存在意義はありません。そのように国際的に働けるリーガルパーソンを育成するために、不足するスキル・ナレッジは、海外で経験を積むなどして補ってもらおうと思いますし、逆に海外のメンバーに日本に駐在してもらうなど、グローバルリソースマネジメントのありようを様々検討しているところです。海外案件に興味があり、世界を舞台に活躍したい方にとって、当社法務は非常に適した環境です。そうした志向があり、新しい挑戦を楽しめる方と、ともに働いていきたいですね」

※取材に際しては撮影時のみマスクを外していただきました。

  • 株式会社アドバンテスト
    同社事業は、半導体・部品テストシステム事業、メカトロニクス関連事業、サービス・新規事業の3本柱で構成される(写真は 、V93000 EXA ScaleTM)
  • 株式会社アドバンテスト
    東氏の発案でつくった、お揃いの“チームマグ”を全員で愛用。また社内では、下の名前やニックネームで呼び合う。チームの結束力や、風通しの良さが伝わってくる