Vol.76-77
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法務グループ8名のうち、4名が有資格者。なお現在は在宅勤務が全社的に推進されているため、法務グループも約半数ずつ、シフトを組んで出社している状況だ

法務グループ8名のうち、4名が有資格者。なお現在は在宅勤務が全社的に推進されているため、法務グループも約半数ずつ、シフトを組んで出社している状況だ

THE LEGAL DEPARTMENT

#110

トヨタコネクティッド株式会社 グローバル経営企画部 法務グループ

10年先の“新たな世界”構築に向け、最先端のビジネスをつくり上げる法務

攻める法務と守る法務を両立

「100年に一度の変革期」にあるといわれる自動車業界。IoTや5GといったITの進化に伴い、Maas(マース/移動すること自体をサービスと捉える)という概念が生まれ、新たなモビリティ社会が到来している。そうした変化の兆しをいち早く捉えていたのが、トヨタコネクティッド株式会社だ。クルマの自動化、電動化、情報化などの技術革新にアグレッシブに取り組み、世界中のコネクティッド車両から収集したデータを活用して新たなサービスやプラットフォームの開発・提供などを行っている。同社事業の多角化・進化に伴い、法務機能も強化が進む。法務グループを立ち上げ、育ててきた事業部長の鬼頭克仁氏に、法務のミッションを聞いた。

「“強い法務をつくる”をミッションとしています。それは、攻める法務と守る法務、その両面をしっかり育てるということです。ご存知のとおり、自動車業界全体が今、大きな変革期にあります。当社は創業以来、様々な先進的事業に取り組んできましたが、これからもそのスピードを緩めることなく、新しい事業に挑戦していこうとしています。挑戦にはリスクが伴うことも多く、法律の解釈上、白か黒かと聞かれたら“白”とはっきりとは答えられない場面も多々あります。しかし、白と答えられないから“ノー”というのではなく、どうしたらビジネスを前に進められるかに知恵を絞り続けたい。そのためには各自が事業のフローを理解し、現場のメンバーと何度も協議・調整することが基本。そうして現場に不安がない状態でGOできるように後押しすることを各メンバーに求めています。それが攻める法務の意味。一方、守る法務は、ガバナンスを効かせるということで、情報セキュリティ関連を含む法的対応を、法務主導で確実に行っていってほしいということです」

トヨタコネクティッド株式会社
コネクティッドサービス「T-Connect(ティーコネクト)」。対応車には専用の通信機が装備されており、エンジンをかけるとすぐに通信が始まる仕組み。世代ごとに利用規約を見直しており、最新版は香川氏が主導で対応した

まだ見ぬ世界をつくっていく醍醐味

同社は、ビッグデータ、モビリティサービス、UXプロモーションの3領域で多様な事業を展開する。法務グループ内で業務担当をある程度決めてはいるものの、各自が全事業を把握できるよう、担当ローテーションを適宜行っている。日々の業務としては、契約書作成・レビュー、規約作成・変更などをはじめとして、プロジェクトベースで他部署と協業することも多いそうだ。グローバル経営企画部法務グループのグループマネジャー武並剛史氏が、具体的な仕事について教えてくれた。

「一例ですが、当社のメイン事業であるテレマティクス事業では、車載した通信機(カーナビ)を介して、お客さまに様々なサービスを提供しています。例えば、お客さまが事故に遭われた際はご自身が緊急通報のボタンを押して当社に事故を知らせる、またはエアバッグの作動検知により自動的に専門オペレーターに接続される仕組みです。いずれかの方法で情報を受け取り、お客さまにお声がけをして緊急車両を派遣しますが、大事故により応答できない場合にも、救急車やドクターヘリを要請します。そうしたサービスの利用規約について、現場から運用方法を変えたいと言われた時に、関連する他部署のメンバーとディスカッションしながら、内容を精査していきます。精査にあたっては、現場と同じレベルでサービス内容や業務フローを理解していなければならず、そこが仕事の面白さでもあり、大変なところでもあります。また、案件によって、当社メンバーはもちろん、トヨタ自動車をはじめとする関連会社とのディスカッションの場に入ることもあります。“社内に閉じていない”仕事ができることは刺激的です。ちなみに前述のサービスには、一見関係なさそうな警備業法が関係するのも面白い点です」

鬼頭氏も次のように付け加える。

「今後、自動運転やEVなどの台頭で、誰も経験したことがない世界が広がっていくことは間違いありません。スマートフォンで自動運転車を呼び、それに乗って移動するということが、10年後は当たり前になっているかもしれない。そうした大きな変化を見逃すことなく、むしろ法務が先導して対応していく必要があるでしょう。例えば、今は法的に整理されていない部分についても、実証実験を通じて整理し、安心して使えるサービスであることを行政側に発信する。それによってある法令が改正され、事業者は安心してサービス提供でき、利用者は安心安全でより便利な世界を経験していく。そんなダイナミックな経験が積めるのが、当社法務の仕事の醍醐味だと思います」

“まだ見ぬ世界”を先陣として切り拓き、時代の進化を後押しする法務。法律をどう守っていくか、ビジネスをどうつくっていくか、法律を変えるほどの影響力・発信力を持てるか問われるのが、同社法務の仕事なのである。

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    「限りなくカスタマーインへの挑戦」を掲げ、サービス開発・提供を行ってきた同社の歴史をたどる展示物が本社共有スペースに設置されている
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発信力と存在感ある法務に育てる

現在、同社は世界5カ国に拠点を置く。

「北米はコネクティッドビジネス最前線の開発地域。研究開発系のため、知的財産権の取り回しや法令対応もあり、法務を設置している」と鬼頭氏。法務グループは、そうした海外拠点のグローバルヘッドオフィスとして、各拠点の法務ともやりとりするそうだ。

法律事務所を経て、同社に入社した佐藤美波氏と、香川姉守絵氏は、インハウスローヤーとしての仕事の醍醐味を次のように語る。

「やはり“当事者になれる”ということが面白い。法的なアドバイスに留まることは許されず、ビジネスの後押し、グループ全体の仕事の効率化をどう進めるべきか、チームとしてパフォーマンスを最大化するにはどのように進めたらよいかという、法律事務所時代には持ち得なかった視点で、物事を見られるようになりました。法務のみならず他部署との連携も含め、チームとして動いていくダイナミズムも、日々の仕事の中で感じています」(両氏)

また、「法律事務所時代は経験したことのなかった電気通信事業法や警備業法、旅行業法などにもかかわれることも面白い。しかし、あまりに斬新なことばかり、かつ最先端のビジネスであるため、とにかく情報のキャッチアップが大変。社内からは当然、そうした法律を知っているという前提で相談が来るので、毎日必死に勉強です。わからないことは、社内で詳しい人をつかまえて、『教えてください!』となんでも聞く習慣がつきました(笑)」と笑顔で語る両氏だ。

なお佐藤氏は最近、海外で始動した車両の位置情報・移動情報を取得して“見える化”するための「G-Fleet」というシステム提供に携わった。

「まっさらな状態から規約をつくってほしいと相談がきたので、どんな規約・条件をどのように入れていけばよいかを、現場のメンバーと議論を重ねて作成しました。その際、直接聞かないとわからないこと、想像も及ばない要望などがあることを実感。そのように、“紙の上”だけではわからない情報を得て、侃々諤々、現場のメンバーとやり取りし、関連企業とも連携を取りながら調整して規約をまとめ上げる経験は、非常にやりがいがありました」(佐藤氏)

「社内の営業や開発はもちろん、関連企業やパートナー企業とのコミュニケーションの重要性を肌身で感じています」と、香川氏も語る。最後に、10年先の未来を見据えてどんなチームに育てていきたいか、武並氏に聞いた。

「今後、事業のグローバル展開が急速に進んでいくため、海外拠点との連携を緊密に行いながら、海外の法務リスクもきちんと押さえられるような組織でありたい。また、新たなサービス・事業も次々と出てくるので、知的財産権についても精力的に最新情報をキャッチアップし、きちんと権利を守る役割も。そうして、法務グループからの発信力をさらに強化し、法的視点をサービスに生かすことをメンバー全員で推進していきたいと思います」

トヨタコネクティッド株式会社
「副社長・中田雅人の『有資格者を増やして盤石な法務に』という思いもあり、有資格者比率が高くなってきています」(左/鬼頭 克仁氏 談)