Vol.81
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日本アイ・ビー・エムの法務は、総合法務、知的財産、輸出法管理、政策渉外、セキュリティ、環境対応などを担当。なお、総合法務のメンバーは、法律事務所やインハウスローヤー経験者が多数

日本アイ・ビー・エムの法務は、総合法務、知的財産、輸出法管理、政策渉外、セキュリティ、環境対応などを担当。なお、総合法務のメンバーは、法律事務所やインハウスローヤー経験者が多数

THE LEGAL DEPARTMENT

#122

日本アイ・ビー・エム株式会社 法務・知的財産・コンプライアンス

ビジネスとの強いパートナーシップを重視。
グローバルな案件を組織力でリードする

“パートナー”としてできることを考える

米国に本社を置き、175カ国で事業を展開する世界最大級のグローバルITカンパニー、IBMコーポレーション(以下、IBM)。高い技術力を武器に、コンピューター・システム製品などのハードウェア、各種ソフトウェアなどの開発を手掛けてきた。近年は、最先端テクノロジーを駆使したコンサルティングサービスなどにより、ビジネスプロデューサーとしての役割も期待されている。その日本法人である日本アイ・ビー・エム株式会社の法務は、総合法務、知的財産、輸出法管理、政策渉外、セキュリティや環境対応といった役割に分かれ、それぞれが複数の案件を幅広く担当する。総合法務のメンバーは法律事務所やインハウスローヤー経験者が中心だが、一番の特徴は海外にバックボーンを持つ人材が多い点。取締役常務執行役員、法務・知的財産・コンプライアンス担当のアンソニー・ルナ氏は、次のように語る。

「日本国内の法務を中心に、海外の関連企業や本社に対してアドバイスを行う機会も頻繁にあります。ゆえに各国の事情を踏まえ、円滑な連携・報告ができるメンバーが多数活躍しています。ここで語学力以上に大切なのが、互いの文化が違うなかで意識合わせをしながらビジネスを進める力と国際的な視野を持つことです」

そのミッションは、「デジタル時代の最先端技術を提供するIBMのビジネス部門から信頼されるパートナーとしての法務」。

「特に“パートナー”という意識を重視します。我々の仕事は契約書をレビューして終わりではなく、ビジネスの目的においてどんなチャレンジができるか、できなければどのようなオプションがあるかをともに考え、成し遂げること。そのために、あらゆる部門やリーダーたちとリレーションシップを図り、法務の枠に囚われず、我々にできることを考え抜きます。場合によって法務の領域外にも目を向けて課題を見つけ『話を聞いてほしい』とビジネスサイドに呼びかけることもあります」

なお日本アイ・ビー・エム代表取締役社長 山口明夫氏は「多様な経験を持つメンバーで構成される当社の法務部門は、社内の事業部やプロジェクトチームに寄り添い、何がベストな解であるかを常に考えてくれています。お客さま、IBM、社員、そして社会での公平な取引のために、組織の枠を超えたワンチームとなって取り組む頼れるパートナーです」と、社内での法務の位置付けとチームメンバーとしての重要性を語る。

海外の法律事務所や外資系インハウスの経験を持つメンバーの巻田隆正氏は「トラブル回避やリスク軽減のために、プロジェクト立ち上げ時から法務に声がかかるケースが増えています」と話す。

「メンバーはあらゆる領域の案件を手掛け、数カ月で当該領域の専門家になれるほどの知識を習得します。だからこそ、チャレンジできるかどうかが重要です」(ルナ氏)

法務がリードしてやり遂げた“難案件”

チームワークについて、ルナ氏は「我々は一つのコミュニティ。昨今のIT企業が直面する課題は分野も多岐にわたり、技術進化も早く、一人ですべてを解決するのは難しい。だからこそ力を合わせて、やり遂げるのです」と語る。

それを実感したのが、IBMが戦略的に「マネージド・インフラストラクチャー・サービス事業」を分社化した案件。それは2020年から約14カ月に及んだ。

「同事業部門にはグローバルで9万人以上、日本法人で数千人の社員が所属。関連する契約数は数千を超えました。グローバル規模の分社化の複雑性などもあり、毎日何かしらの課題(チャレンジ)が発生。タイトすぎる日程のため、最初は『非常に困難だ』と思ったが、すぐに『このチームならできる』と頭を切り替え、分社した先に移った法務メンバーや外部法律事務所も含めた“ワンチーム”で連携し、なんとか多くの難題を乗り越えることができました」(ルナ氏)

この案件を通じて、メンバーは「法務がプロジェクトの重要な箇所をリードしたこと」「難易度が高い案件に取り組み、企業の成長に法務として貢献できたこと」「結束力が強まり、仲間意識がさらに高まったこと」といった成長実感を得た。日系大手金融機関法務部の勤務経験を持つ村田慧氏に、やりがいを聞いた。

「当社法務は経営サイドの信頼が厚く、経営陣とじかに意見交換できることが醍醐味。そんな経営陣との距離の近さと、意思決定のスピードの速さが特徴です。それはひとえに、歴代の法務メンバーが、経営にしっかり貢献してきた証。その厚い信頼関係のなかで、責任ある仕事を任せてもらえることに、大きなやりがいを感じます」

21年12月に外資系金融機関から転職してきた三保友賀氏は、コンプライアンスも兼務する。

「IBMの製品・サービスについて学べば学ぶほど、社会的インフラを支えている会社であることを実感します。なおかつそれらが、法務がかかわった契約やアドバイスを通してかたちになったものであることは、やはり嬉しい。働き方においても、トップダウンではなく、『こういうことを考えているんだけど、どうか』と気軽に相談でき、しかもイニシアチブを取ることを非常にポジティブに受け止めてくれる風土です。自分が主体的に取り組みたいと思った仕事について、背中を押してくれるメンバーが多く、様々な案件に積極的に挑戦できる楽しみもあります」

巻田氏は、「プロジェクトで感じられる一体感・スピード感がやりがいの源泉」と話す。

「一つのプロジェクトの成功が、さらに大きな仕事を任せてもらえるチャンスにつながります。社内の期待値が高まるごとに、その思いに応えて自分自身のレベルを上げていこうとも思える。自ら望めば成長できる職場、そして、成長を加速してくれる環境です」

ルナ氏は、メンバー全員に「将来的に自分がゼネラルカウンセル(GC)になることを想定して物事を考えるように」と伝え、その意識づけを行うという。

「そのおかげでGCの立場で考えるなら、どう判断すべきかと意識して仕事に臨むようになりました。また自分自身が歩んでいきたい未来のキャリアの多様性、選択肢の広がりも実感しています」(村田氏)

日本アイ・ビー・エム株式会社
外資系金融機関、外資系法律事務所、日系大手企業法務部出身者など、メンバーのバックグラウンドは多様。英語力の高いメンバーが揃う

教育や職場環境づくりに根付く精神

社員教育におけるサポートの充実度も、IBMならではだ。AI、クラウド、量子コンピュータなど、あらゆる最先端分野において、本社から研修プログラムが提供される。特に最近は、企業が扱うデータ・レギュレーションや、その関連法の知見が業務に不可欠で、当該分野をフォローアップするプログラムも増え始めているそうだ。

「各メンバーは、IT業界に関する知識を深める研修をベースに、自己啓発、よりよい働き方を考えるための独自の研修なども受けられます。対面研修ではなく、AIやeラーニングを活用したプログラムが多いので、自分に必要なものを、都合のよいタイミングで学ぶことができています」(ルナ氏)

こうした教育環境の背景にあるのは、IBM創業者であるトーマス・ワトソン氏の、「教育に飽和点はない」という理念だ。

「従来は部署ごとに実施していた専門的な研修も、オンライン研修が浸透したおかげで、他部署に向けても開かれるように。そのため、部署を超えて社員同士の顔・人となりが一層とらえやすくなりましたね」(三保氏)

新型コロナ禍で出社制限やリモートワークが続くなか、雑談レベルのやりとりも含め、ほぼ毎日メンバー同士がコミュニケーションする機会を設けている。そうした時間をとることで、出社していた時よりもむしろ、現在のほうが互いの関係が深まったという。

「働きやすさ、やりがいをサポートするIBMの精神は、単に制度的に充実しているだけでなく、人をきちんと財産として扱ってくれることに現れていると感じます。それを、トップやミドルマネジメント層が理解し、自らも積極的に利用する風土。彼らの言動と行動が一致していることも、私たちメンバーの働きやすさにつながっているのだと思います」(三保氏)

今後について、ルナ氏に聞いた。

「デジタルデータやサイバーセキュリティ、それらに関連する法律の適用は非常に複雑で、法務として会社をリードするのは簡単なことではありません。そのためにも、法律への理解はもちろんですが、ビジネスがデータをどのように扱うかを詳しく把握していく必要があります。今後、プライバシーやサイバーセキュリティについては、インハウスローヤー、企業法務担当者をはじめ、すべての弁護士が知るべき時代になるというのが私の考えです。ですからIBMにおいても、我々がその先端に立ちたい。そしてさらにグローバルな環境下で円滑に役割を果たせるよう、人材育成とチーム力向上にも力を注いでいきたいです」

※取材に際しては撮影時のみマスクを外していただきました。