Vol.82
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消費者庁は、消費者政策課、消費者制度課、取引対策課、表示対策課など9課3参事官体制で、職員は385名(取材時時点)。うち、任期付弁護士(法曹経験を有する特定任期付職員)は20名超。(取材時(2022年6月10日)は、常勤職員を中心に集合)

消費者庁は、消費者政策課、消費者制度課、取引対策課、表示対策課など9課3参事官体制で、職員は385名(取材時時点)。うち、任期付弁護士(法曹経験を有する特定任期付職員)は20名超。(取材時(2022年6月10日)は、常勤職員を中心に集合)

THE LEGAL DEPARTMENT

#127

消費者庁 参事官(公益通報・協働担当)室 公益通報者保護制度担当

消費者行政の一員として、「法律を総合的に使いこなす力」を生かしきる

消費者と事業者のよき連携を支える

2022年6月に施行された改正公益通報者保護法。公益通報者保護法に関連する取り組みの企画・立案、同法を社会に浸透させるための周知広報活動、さらには改正法で設けられた行政措置の執行を一手に担うのが、消費者庁参事官(公益通報・協働担当)室だ。21年7月に新設された同室は、公益通報者保護制度の企画・立案・推進、事業者と連携した消費者志向経営の促進、物価対策など“消費者と事業者の協働に向けた取り組み”を担う。21年4月着任の政策企画専門官・金山貴昭弁護士に、業務の内容をうかがった。

「私の担当業務は、主に公益通報者保護法の法令業務や国際業務です。法令業務は、主に公益通報者保護法の解釈や法律自体の考え方を整理したうえで、法律を遵守するために事業者にとって必要となる情報を整理し、発信する業務です。公益通報者保護法の逐条解説の執筆に加え、国民の皆さまから受け付けている日々の相談も踏まえながら、消費者庁ホームページに掲載している法律に関するQ&Aを改定するなど、公益通報者保護法がよりクリアに理解してもらえるように日々取り組んでいます。加えて、OECDやG20などの国際会議対応――汚職や贈収賄防止などへの取り組みのサポート――も行います。国際機関でも、組織の透明性を高める手段の一つとして公益通報が注目されていて、私たちも関係省庁と連携し、その対応にあたります。現在は新型コロナ禍のためリモート会議が主となっていますが、会議の開催頻度や内容に応じて参加し、日本の公益通報者保護制度の説明や日本に求められる事項に関する達成状況などの報告を行っています。また、公益通報の対象となる法律を定めている政令に、新たに成立した法律を追加するといった仕事が年に数回必ずあります。これほど頻繁に政令改正を経験できるのは、霞が関でもめずらしいと思います」

通報の対象となる法律に新たな法律を加える場合は、検討後、書面にまとめて内閣法制局に渡し、政令に仕上げるというプロセスがある。内閣法制局対応はもちろん、各関係省庁との連携も必須。「いずれの業務でも、公益通報者保護法以外の多様な法律の理解も深まります」と金山弁護士。なお、こうした業務の最終決裁者は、消費者庁の担当大臣だ。大臣に、じかに説明するケースもあるそうで、これも得難い経験といえる。

同じく政策企画専門官の蜂須明日香弁護士は、法律事務所と事業会社の法務部を経て20年10月入庁、20年度は法令業務や国際業務を担当し、21年度以降は改正後の公益通報者保護制度の周知・広報のための企画・立案・推進等を担当する。民間企業や行政機関向け説明会の企画、分かりやすい周知方法としての説明動画・広告動画、制度説明のためのハンドブックや改正法施行について案内するチラシといった周知資料の頒布などの企画も進めているという。

「改正公益通報者保護法では、退職後1年以内の者や役員も公益通報者になることとなり、法律上保護される公益通報者の範囲が拡大しました。今般の改正で、常時使用する労働者の数が301名以上の事業者においては内部公益通報を受け付ける体制整備が義務化され、従事者の指定が義務化されました。このような義務に違反した場合の効果として、消費者庁が当該事業者に対して報告を求めたり、助言や指導、勧告を出すことができることとなりました。勧告に従っていただけない場合は、事業者名を公表することもできます。このように、改正後の公益通報者保護法に基づく権限として、行政措置に関する業務も含まれております」(蜂須弁護士)

消費者庁
改正法の周知のための説明会を開催し、説明者として出講することもある

多角的な視点や想像力を磨く

同室の仕事の面白さは、なんといっても新しい“ルールの明確化・制度の推進”にかかわれる点だ。蜂須弁護士と金山弁護士は、仕事の魅力について、それぞれ次のように話す。

「公益通報者保護法の解釈にあたっては労働法や行政法のみならず、民法、会社法、民事訴訟法、刑法など多数の法令を参照する必要があるので、“法律を総合的に使いこなす力”をお持ちの方にとって、やりがいを感じる職場といえるかもしれません」(蜂須弁護士)

「役所の一員としての私たちの解釈が公式見解となるため、発言一つひとつの影響力に強い責任とプレッシャーを感じますが、それも大きなやりがい。外部機関から見解を求められた際、参考となる過去の見解がない場合は、この法律がきちんと運用されていくためにどこまで何を示していくべきか、熟考して議論を重ね、発信するプロセスに充実感を覚えています」(金山弁護士)

そうした庁内の仕事では、“弁護士共通の力”を発揮できる場面や、期待される場面が多々ある。

「法律を解釈する時に、一貫した筋を立てられる論理的思考力、庁外の方々とのコミュニケーション力、調整力、企画立案力、やるべき業務を期限までにやり抜く力、法律を総合的に使いこなす力などが様々な場面で求められるように思います」(蜂須弁護士)

金山弁護士は都内法律事務所からいわゆる任期付弁護士として出向中のため、1年間の任期終了後(22年7月以降)は所属法律事務所に戻る。出向経験は今後、どのように仕事に役立ちそうか、うかがった。

「法律事務所入所当初は、争訟・紛争解決、事業再生・倒産案件を中心に関与していましたが、IT企業への出向や海外留学なども経て、現在は危機管理案件を多く取り扱っています。入庁理由は、危機管理や第三者調査委員会などの仕事に携わるなかで、不正の端緒を見いだす内部通報の重要性を感じたから。入庁後の日々の仕事において、弁護士の業務ではなかなか経験できないような幅広い利害関係者間の調整や意見の集約が必要になるので、多面的に利益衡量し、想像力をフルに働かせることが常に求められていました。それは、自分自身の“頭の体操”にもなり、新たな気付きがたくさんありました。公益通報者保護法について深い理解を得られたことは今後の弁護士業務に生かせることはもちろんですが、弁護士の業務ではなかなか経験できないような幅広い方々とのコミュニケーションは、自分の弁護士としての“幅”を広げてくれたと思っています」

消費者庁
消費者庁には、参事官(公益通報・協働担当)室をはじめ、異業種・異職種からの多様な即戦力が集まる。写真は、日本証券業協会や日本司法支援センター(法テラス)からの出向者

多様性を受容するベンチャー的な組織

同室はもちろんのこと、消費者庁自体が、“霞が関”では新しい組織だ。

「官僚も含めて“出向組”が多いことが特徴です。金融庁、公正取引委員会、関連団体、民間などからメンバーが集まっており、それぞれのカルチャーや仕事の進め方なども教えてくれるため、他の省庁の働き方が疑似体験できることが面白いですね。そんな消費者庁は、いわば“ベンチャー”といったところで、柔軟に仕事が進められる環境です」(金山弁護士)

あらためて蜂須弁護士に、ここで働く魅力をうかがった。

「消費者庁は他省庁・機関からの出向者も多い、多様性のある組織であるように思います。『自らの消費者としての気づき、思いを国の施策に反映させ、消費者すなわち全国民の生活を守り・向上する』という共通のマインドを持ち、それぞれの任期付弁護士が多様な仕事で活躍しているのではないかと思います。ぜひ、多くの方々に関心をもっていただけるとありがたく思います」

※取材に際しては撮影時のみマスクを外していただきました。

消費者庁
参事官(公益通報・協働担当)室が作成している『公益通報ハンドブック』