「日常のあらゆる場面で“決断”を求められる」と、両弁護士。
「自分の出した答えが日本全体、時には海外にまで影響を与えることもあるので、自分の考えは本当に正しいのか常に自問自答します。規制を緩める際には、ほかの法律に抵触しないか、公益や投資家保護の観点からの問題点はないかなど、関係者としっかり議論し、関係部局と相談しながら方針を決めていきます。しかしそれ以前に、問題となる法律の条文といったミクロな視点だけでなく、関連する分野や様々な法令・制度を勉強しておかなければ、確信を持って議論や交渉を行い、制度をつくることはできません。多角的な視点から考え、分析し、議論し、決断するための学びを日々深め続けています」(津江弁護士)
「弁護士業においても“業界知識”は必須ですが、制度をつくっていくには、より深く正確に業界の実態や業界慣行などを理解する必要があります。それは“本を読んで知識を蓄える”ことだけでは得られない知識です。他の部局の職員と意見交換したり、事業者や関係者の話も聞いたりしながら、必要な知識を吸収して決断しています」(寺川弁護士)
金融庁が両弁護士に期待するのは、最先端分野も含めた金融関連法令の幅広い知見を持って、周囲へよい刺激をもたらし、職員および組織の専門性向上に寄与してくれること。その期待に応えつつ、どのようなキャリアを描いていくかをうかがった。
「金融分野は、証券会社なら金融商品取引法、銀行なら銀行法、保険会社なら保険業法など横への広がりがあり、さらに各法律の下には施行令や府令、監督指針などがあって縦へも広がるほか、業界団体が策定する自主規制規則や金融事業者の自主的な取り組みを期待して金融庁が公表しているプリンシプルがあるなど複雑な分野です。このように幅広で、複雑難解な金融の法分野に興味関心を抱いていたのと同時に、一度、しっかり“中(金融庁)”で腰を据えて向き合う時間があればとの思いもあり入庁しました。仕事を通じて、金融分野に関する様々な知見の体得、法律を精緻に読み解く力が身についたと感じます。特に、行政組織の論理や考え方、物事が決定していくプロセス、法改正の流れなどを内部で実感できていることも、私にとっての大きな価値であると感じています。こうした様々な経験を広く社会に還元していくことが、今後のキャリアのなかでは求められていると思いますし、個人としてもそうしていきたいと考えています」(寺川弁護士)
「法律事務所にいた頃から、銀行、保険、証券分野で、様々な金融法務に携わってきましたが、金融法務や関連する法律は“知れば知るほど奥深い”と感じる毎日です。これからも金融規制の専門性の深化を図っていきたいです。また、海外の金融規制も学びたいと考えているので、海外留学も視野に入れています。ちなみに省庁勤務は土日祝の休みが取れるので、留学に向けた語学の勉強などの時間もしっかり確保できています。国内外の法制に関する理解を深めていきつつ、さらにその先は、社会をよりよいものにしていくための仕事もできる弁護士になっていきたいですね。こうした目標は、会議体運営などに携われたおかげで見いだせたこと。ここでの一つひとつの経験が、自分自身のキャリアの礎になっていることを実感します」(津江弁護士)