岡田氏は、これまでどのような案件に対応してきたのか。
「非航空事業では、空飛ぶクルマやドローンの実証実験、NFT販売事業など様々なプロジェクトに携わりました。例えば、鹿児島県大島郡瀬戸内町と当社は、共同出資にてドローン運航事業会社を設立し、災害発生時の孤立集落への緊急支援物資輸送や、島民向けの医療関係品や日用品の定期配送など、島の暮らしを支える住民向けサービスを開始しました。運航管理や物資輸送に関し、自治体、荷物を受け取る島民の方、物資の卸・小売り各社と様々な契約を締結するにあたり、各プロセスにおけるリスク評価にとどまらず、プロジェクト全体を鳥瞰して多角的な検討を行う必要がありました」
岡田氏の仕事の原動力は、「飛行機・空港が好き」という思いが叶えられる業務内容と、現場や事業部との距離の近さにある。
「空港本部や客室本部の案件では、お客さま対応に関する相談を現場のスタッフから直接受ける場合もあります。また、海外拠点からも直接相談が寄せられるため、航空事業=グローバルということも実感できます。そのように国内外の“航空の現場”を直接肌で感じられることが、インハウスローヤーの魅力だと思います。一方で、非航空事業では、未知・未経験の領域かつ最先端の法分野もかかわってくるので、私にとっては弁護士としての知見を広げられる良い機会となっています。ドローンプロジェクトもそうですが、新しい技術やビジネスモデルについては、事業部の方々が初心者の私でも分かるように教えてくれます。事業部の皆さんと積極的にコミュニケーションを取ることで、私自身の知見を深めながらも、事業部の皆さんが気軽に法務相談できるインハウスローヤーとして、事業部に寄り添いながら新しい事業を一緒に実現していきたいです」
西村氏は異なる観点から、同部の仕事のやりがいを話す。
「法務の立場から、JALグループ全体の経営にとって重要な案件に関与できることが、この仕事の醍醐味です。新型コロナ禍では旅客需要が大きく落ち込み、航空業界は未曽有の危機に直面しました。当社がその時に得た教訓の一つが、あらゆるリスクを想定した備えの大切さです。この教訓を踏まえ、当社は非航空領域を中心に事業の多様化を進めており、グループ外の企業と合弁会社を設立する案件が増えています。私は会社法担当として、これらの案件に初期段階の議論から参加しています。また、それ以外にも調達本部の担当として、英文で数百ページにも及ぶ航空機の売買契約のレビューや、メーカーとの交渉の進め方に関する提言を行うこともあります。私は入社5年目、当部に配属されて3年目ですが、仕事において年次は全く関係ありません。自らの見解がすなわち法務部の見解として取締役会の資料に記載され、経営判断の参考となることもあります。その責任の重さを常に感じていますが、非常にやりがいの大きい仕事です」