濱崎氏は「鉄道会社は安全が最優先。だから全社員のコンプライアンス意識が高い」と言う。
「例えば“線路沿いの樹木の伐採”に関して、改正民法(不動産登記法)の社内講習会を開催した時は、多数の参加がありました。景品表示法や下請法の講習会などをグループ会社も含めてリモート開催した時も同様です。法務部門主催で宿泊型の研修も行っていますが、毎回参加希望者が絶えません。会社として、法務リテラシーのある人材を全社に増やし、コンプライアンス意識の向上を図るという方針もあって、講習会は頻繁に開催しています」(濱崎氏)
「中建部でも、部内向け講習会を開催しています。法務担当者自身の法務教育も兼ねるので、講師担当になったメンバーには、2、3カ月をかけて基礎から勉強して講習会資料を作成してもらい、例えば不動産分野や工事請負契約など、講習会で扱った分野の専門家になってもらえるよう指導しています」(岩佐氏)
同部門でのメンバー教育は、そうした講習会業務の経験も含め、OJTが基本だ。松田氏に、働き方についてもうかがった。
「フレックスタイム制や、在宅勤務の活用度は高いです。また当社独自の制度として、東海道新幹線の全区間で新幹線通勤が認められていて、関西方面から名古屋本社に通うメンバーもいます。その際、新幹線車内での執務が週に7.5時間まで認められます。自らのタスクに応じて最適な時間と場所を選択して、生産性高く働くことができます」
最後に部門の課題をうかがった。
「当社では、インハウスローヤーも含め、法務部門のメンバーも他部署の社員同様に事業部門への異動があり、一方で、事業部門や出向経験者など様々な経歴を有する社員を法務メンバーに迎え入れています。これは前述のとおり、“法務リテラシーのある人材”を全社で増やすという目的があるためです。メンバーが幅広い分野で経験を積めることは利点ですが、教育の観点ではインハウスローヤーや法的知識を有する管理職層のメンバーが中心となって、常に一から法務人材を教育していかなければならないことが課題とも言えます。そのため、インハウスローヤーをはじめとした法務人材の専門性の向上と、法務未経験者の法務リテラシーの向上――そのバランスを取りながら、経営に資する法務部門として組織力を高めるべく、私たち法務部門は取り組んでいます」