法務最前線:2016年11月号 Vol.54

法務最前線

アトーニーズマガジン 法務最前線

経営そのものに深くかかわる企業法務部。現場からの相談に瞬時にかつ的確に判断することが求められる組織に必要なファクターとは、その精鋭が弁護士に期待することとは何か?各社の法務部長へ伺いました。

新時代のWork Front

法務最前線

楽天株式会社 法務部

限界を定めず 貪欲に。受け身では 務まらない

「楽天市場」に代表されるインターネットサービス事業およびFinTech(金融事業)など、約70のサービスを提供している同社。2015年通期の売上収益は7000億円超。「インターネットで人はモノを買わない」といわれた90年代に創業した同社は、その黎明期から国内のEC市場をけん引してきた。現在、国内外に多くのグループ企業を持つ。法務部はガバナンス・リスク・コンプライアンス部と共にコンプライアンス・ディビジョンの構成部として、本社機能を担っている。西川夏子氏に法務部法務課の役割と気質を聞いた。

「我々法務課は、すべてのインターネットサービス事業と、楽天EdyなどFinTech領域の一部事業の法令遵守、および事業推進をサポートしています。現在、法務課は約15名。取引法務は全員で分担し、かつ各メンバーに担当事業領域をアサインしています。サービス規約のチェックはもちろん、新サービスの立ち上げやM&A、国際法務的な業務が生じた場合も、担当者が中心となって動きます。当社事業は多様で、関係する法律は、インターネット関連の法令はもちろん、資金決済、通信、食品、エンタメ、エネルギーなど多岐にわたります。事業ごとに、その事業に通じた担当者をアサインすることで、法的側面からの支援もスピードを緩めることなくできるようにしています。事業・サービスの数が多いため、一人あたりの業務量は相当なものですが、20〜30代が多いせいか、みな貪欲に取り組んでいます。『事業と一体になって役に立ちたい』と、現場へ仕事を取りにいくタイプが多いです」とはいえ、各々勝手に動くのではない。知識やノウハウの共有、業界動向などに関する情報交換は、まめに行う部内文化だ、と西川氏。

「月並みですが、上下関係なく意見が言い合える、極めて風通しのよい職場だと思います」

新事業・サービスの創造を共に 楽しめる人材を求む

「新サービス立ち上げなどのプロジェクトは、常にユニークで多彩です。思わず頭を抱えてしまう相談もありますが、アイデアを実現するために事業と一緒に知恵を絞る毎日は、法務として飽きがくることはありません」と、西川氏。法務部創設時からのメンバーで、法務部長を務めている渡邊真氏は、それを体現してきた人物だ。渡邊氏は、同社のコアとなるサービスの立ち上げ、M&A、球団設立、JASDAQから東証一部への市場変更など、数多くのダイナミックなプロジェクトに関与してきた。渡邊氏が手がけてきたような仕事は、若手でも望めば得られる機会があると、西川氏は語る。

「日々、様々な規模で新規サービス・機能がリリースされています。それらの法務チェックは、〝ありえないスピード感〞で対応を求められることがほとんど(笑)。本音をいえば、スキームの検討から、提案にも時間をかけたい。だからこそうちのメンバーは先んじて、現場に〝仕事を取りにいく〞。日常業務をこなす一方、既存の法律が想定していない新ビジネスを事業部と共に考える――そんなクリエイティブな取り組みを楽しめる人なら、必ずやりがいある仕事ができる環境です」

さて、周知のとおり同社の社内公用語は英語だ。実際、業務でどれほど必要なのか。西川氏は「開発部門など外国籍社員が多い部門からの相談は英語になることがありますが、日本人からの相談には日本語で対応します。相手に伝えるための手段の一つに英語があるわけですが、うまく話せなければ書く、ほかのメンバーに助けてもらうなど、〝伝える方法〞を工夫する、その労力を惜しまない人なら、英語が流暢でなくても問題ありません」と言う。では、どんな人ならフィットするのか?

渡邊氏と西川氏は語る。
「シンプルですが、何事も前向きに楽しめる人。そして、高い母国語の力と論理的思考力を有すること。法務に求められるのは、事業部のニーズを理解し、法的な観点から多様な解決策を提案することなので、伝える力と納得してもらえる力が必要。そうした力を元に、事業部や経営をうなずかせるアイデアが次々出せるような方と一緒に働きたいですね」

■企業概要

  • 設立:1997年2月7日
  • 資本金:2035億8700万円
  • 連結従業員数:1万2981名(2015年12月31日現在)
  • 所在地:〒158-0094 東京都世田谷区玉川1-14-1 楽天クリムゾンハウス

  • ■プロフィール

  • 渡邊 真(わたなべ・まこと)
  • 楽天株式会社
  • 執行役員 法務部長 
  • コーポレート部門統括部長
  • 東京大学法学部卒業、同大大学院法学政治学研究科修士課程修了。1998年4月、三井海上火災保険(現三井住友海上火災保険)入社。国際事業を担当。2003年7月、楽天入社。法務部配属。04年2月、同部副部長、06年11月、同部長、11年2月、執行役員に就任。

  • 西川 夏子(にしかわ・なつこ)
  • 楽天株式会社
  • 法務部 法務課 課長
  • 一橋大学法学部卒業。同大法科大学院法学研究科修士課程修了。1998年4月、日本電気に入社。法務部に配属。2007年4月、リスク・コンプライアンス部門兼務、二度の育休を経て14年間、法務畑を歩む。12年4月、楽天入社。法務部法務課に配属。14年8月、同課課長に。