PHOTO INFO. 樋口 一磨 Kazuma Higuchi 弁護士法人 樋口国際法律事務所 代表弁護士 東京弁護士会所属 国際ビジネス法務にフォーカスした リーガルサポートに強み。 中小企業、ベンチャー、スタートアップの “挑戦”を積極支援 樋口 一磨 弁護士法人 樋口国際法律事務所 代表弁護士 新型コロナ禍や地政学的リスクの増大、大幅な円安の進行など、国際ビジネスにおける不確実性が高まる環境下でも、海外事業を継続する企業はもとより、新たに海外進出を行う中小、ベンチャー、スタートアップ企業が増えている。こうした企業に特化し、次世代に向けたその挑戦を法的に支援しているのが、樋口一磨弁護士だ。そんな樋口弁護士の“これまでと、これから”を聞く。 弁護士の道 国際ビジネス法務支援のため国内外に人脈を広げる 帰国子女でもなく、最初に勤めた事務所も国内企業法務が中心。しかし、大手渉外事務所や外資系事務所がカバーしきれない中小企業のための国際案件のリーガルニーズが多々あることを、仕事をとおして痛感したのです。そこで、一念発起して外国法資格取得を目指して自費留学。ニューヨーク州弁護士資格を得て、シカゴの法律事務所で実務経験を積み、帰国後の34歳で独立しました。独立後は、大手法律事務所の費用感では対応が難しい、しかし中小企業にとっては重要な事案に多数関与してきました。決して派手ではないけれど、誰かがやる必要がある案件ばかりといったところです。そうしているうちに、香港や英国での企業買収、米国での物流拠点設立のような案件も舞い込むようになりました。 AIJA(国際若手法曹協会/日本代表も経験)やIBA(国際法曹協会)といった国際団体に加盟して世界にネットワークを広げ、地域を問わず、顧客の希望を叶えるための土壌づくりも進めてきました。そうしたネットワークを通じ、現在は、日本企業の海外進出だけでなく、外資系企業のインバウンドにおけるリーガルサポートも行っています。また、日弁連の活動を通じて、これまで国内案件しか扱ってこなかった弁護士に対して、自分のようなドメスティックな生い立ちでも国際業務ができることを伝え、中小企業のための国際ビジネス法務支援が提供される裾野を拡げる活動も行っています。 得意分野 中小、ベンチャー、スタートアップ特有の国際ビジネス法務 当事務所のクライアントは、メーカー、商社、IT、サービス・小売り、エンタメなど実に多様です。上場企業とのお付き合いもありますが、圧倒的に中小、ベンチャー、スタートアップ(以下、中小企業)のサポートが多くなっています。また、事務所の取扱案件の約9割が企業法務で、その半数が渉外要素のある案件となっています。 これからの日本は、少子化に伴う国内市場のシュリンクが明白です。一方で、モノ・カネ・情報のボーダーレス化が急速に進むなか、中小企業が海外に活路を見出すのは自然な流れであり、なおかつ“越境ECビジネス”に見られるように、その実現が容易となりました。とはいえ、そうした企業の案件規模は比較的小さく、コストもかけられないケースがほとんどで、この分野のリーガルサポートを担える弁護士の数は足りていません。海外では、アジアを含めて弁護士が国際的なビジネスサポートを行うことが当たり前ですが、日本の多くの中小企業が、法的サポートがない状態で国際ビジネスに打って出ざるを得ない――つまり“防具なしで戦場に行かざるを得ない”状況であると、私は感じています。そこで、都市部以外でも国際ビジネス法務支援ができる弁護士仲間を増やす活動を行いながら、全国の中小企業の国際ビジネス法務を積極的にサポートしています。 私が関与してきた事案は様々ですが、例えば……ホテルオーナーを代理して国際的なホテルブランドとの契約交渉を結実。日本初の“宇宙葬サービス”を提供するベンチャー企業を代理して、米国の航空宇宙企業と交渉し、契約締結とロケット打ち上げを実現。医薬治験サービスを提供する中小企業の、フランスでの合弁企業設立と、現地でのサービス開始をサポート。スポーツ用品メーカーがオーストラリアの代理店を閉鎖する際の撤退交渉。カナダの機械メーカーの日本における販売店を代理し、同メーカーが事業撤退する際に、当該知的財産のライセンスを受ける契約を交渉し、事業継続に寄与――などがあります。 中小企業からの依頼は、英文契約書のチェック・作成など予防法務的な案件も多いものの、「どこから手をつけるべきかわからない」といった場合の問題点の洗い出しなどもあり、いわば法律を熟知した経営コンサルタントのような役割を果たすケースも少なくありません。また、現地の法律の情報収集や、裁判になる手前の交渉ほか、必要に応じて現地弁護士との橋渡し・コミュニケーションなどをワンストップでお任せいただいています。 こだわり クライアントの納得感を第一に 微力ではあるものの、供給が不足しているニーズ(中小企業の国際ビジネス法務支援)に応えられているという充実感が仕事の原動力。近年は、「一歩踏み出して、国境を超えてビジネスをしてみよう。チャレンジしてみよう」という中小企業経営者が増えているように感じます。中小企業の一歩は、大手企業と比べるととても小さいものですが、それは勇気ある大きな一歩に間違いありません。どのような環境下でも、たくましくビジネスをやっていこうという意気込みのある中小企業経営者と仕事をするのは非常に面白い。また、常に日本以外の国の法制度や文化にアンテナを張り続けることは大変ですが、学ぶことが多く刺激的で、日本という島国を常に客観的に見ることもできる。国際的な人的ネットワークが広がり、自分自身の生きる楽しみにもつながる。そのようなやりがいをもたらしてくれるのが、中小企業の国際ビジネス法務支援なのです。 そんな私のこだわりは、契約交渉でも紛争解決でも、“クライアントの納得感を得ること”を第一とすること。どんな事案でも必ず相手がいて、その相手にも守るべきものがありますから、Win-Winで進むには、ある程度の譲歩が必要です。その前提として、“納得いただくこと”が一番大切だと考えています。そのために、クライアントとタイムリーかつきめ細やかなコミュニケーションを取り、どのような相談も真摯に受け止め、常にクライアントに寄り添い、そのうえで堅固な信頼関係を築くことを心がけています。 国際ビジネス法務支援に限りませんが、弁護士歴20年を経過し、自分自身がまず大局的な視点を持てるようになりました。挑戦(新規事業、海外進出など)でも紛争でも、一番大切にしたいものは何か?を早い段階で確認し、それを守るためのバランス感のあるアドバイス・支援を行おうと心がけています。前述のWin-Winを達成するため、クライアントにとって大切なことだけでなく、相手方にとって大切なことが何かも見極めること、スタートに立った時点から着地点を見据えて“どのカードをどのタイミングで切るか”を考えつつ交渉していくことにもこだわっています。 展望 経営者の身近な相談相手として 「顧問はいらない」「そもそも弁護士に相談したことがない」といったクライアントから、「国内市場のシュリンクで、海外に市場を広げなければいけなくなった」とご相談いただくことが多いです。そして国際ビジネス法務に関する支援として「こんなリスクがあります」「ここは注意したほうがいいです」「こんなふうに手当てできます」と具体的にアドバイスをしていくうち、そこを入り口として「弁護士はこんなふうにいろいろ相談に乗ってくれる、考えてくれる」と知っていただき、国内での心配事についても徐々に気軽に相談してくれるようになります。そのように、ご縁ができたクライアントのために、地に足をつけて案件一つひとつに力を尽くしつつ、一人でも多くの弁護士が日本の中小企業の国際ビジネスを法的にサポートできるようになるための土壌づくりを継続していきたいと思っています。法律という道具をもって、ご縁のできた経営者の方々、その企業の従業員とご家族の不安やストレスを取り除き、安心して仕事・生活していただきたい。これが弁護士としての私の願いです。 message 当事務所の国際ビジネス法務支援では、契約書のチェック・作成といった基本作業だけでなく、ビジネスの構想段階からローンチまでかかわることがほとんどです。どのような組織・スキームがよいか、どのようなリスクをはらんでいるか、身を守るために何を意識し、何を準備すればよいかなど、一つひとつのステップ、エグジットのイメージに至るまで、ビジネスの構想段階から、ぜひ気軽にご相談ください。必ずお役に立つアドバイスを提案・提供させていただきます。 ※取材に際しては撮影時のみマスクを外していただきました。