Vol.79
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前列左より、川島章裕弁護士(62期)、トビン・アーロン米国カリフォルニア州弁護士、杉本武重弁護士(59期)、伊藤美奈子弁護士(67期)、グレゴリー・キナガ米国カリフォルニア州弁護士

前列左より、川島章裕弁護士(62期)、トビン・アーロン米国カリフォルニア州弁護士、杉本武重弁護士(59期)、伊藤美奈子弁護士(67期)、グレゴリー・キナガ米国カリフォルニア州弁護士

STYLE OF WORK

#155

S&K Brussels法律事務所

グローバルのデータ保護法制を熟知し、企業の挑戦を支援するブティック型事務所

強みは海外当局と直接交渉できること

東京、ブリュッセル(ベルギー)、ニューヨーク(米国)に拠点を構えるS&K Brussels法律事務所。米国、EU、中国、英国、日本の5カ国を中心とし、各法域のデータ保護・プライバシー法とAI規制に特化したブティック型法律事務所だ。創業者の杉本武重弁護士に設立背景をうかがった。

「GDPR(一般データ保護規制)施行以来、グローバルベースでデータ保護・プライバシー規制強化の動きが活発化しています。そうした環境下で、日本企業が海外のデータ保護・プライバシー規制に違反する、データ保護監督当局(以下、海外当局)による法執行で巨額の制裁金決定を受けるなどのリスクが高まっています。個人データ処理の禁止命令を受けて事業継続に支障をきたすことがないよう、日本企業による海外のデータ保護・プライバシー規制へのコンプライアンス対応を支援することが私たちのミッションです」

その特徴は、米国・EUの弁護士資格を有する所属弁護士が、現地弁護士として直接、当該法域のデータ保護・プライバシー規制のコンプライアンスに関する助言を日本語・英語で提供できること。つまり、海外当局と“直接交渉が行える・コミュニケーションが取れる”弁護士が揃っているのだ。データ保護法の立法・改正などが活発化するなか、依頼者が期待する役割も多様化している。

「顧客はグローバルに事業展開する日本企業が中心ですが、最近は海外の企業から、日本の個人情報保護法に対する法的助言を求められるケースも増えています。海外当局主催のシンポジウムなどにスピーカーやパネリストとして招かれ、日本の個人情報保護法に関する解説を英語で行うことも。私たちは元々EUがベースなので、EUとの比較観点で日本の状況を説明すると、海外企業の方々も納得しやすいようです。そうした海外当局との協力関係を発端に、グローバル巨大テック企業からもご依頼いただいています。また、EUや米国のデータ保護法制のみならず、中国、英国、日本のデータ保護法制に関する相談も増加しています。そのように世界各国の依頼者の期待に応えるべく、多様な法域のデータ保護法制に関するサポートを提供。また、当該法制に密接に関係するAI規制などデータ関連規制についても、『将来の規制のかたちを読む。Future Proof』というスローガンを掲げ、注力しています」

S&K Brussels法律事務所
杉本・川島両弁護士とアソシエイトのミーティングは、二人が培ってきた知見や最新情報が得られる貴重な場。データの利活用=“伸びる分野”で国際的な潮流を感じながら仕事ができる

“想像力”と“創造力”を駆使

同事務所が“直接交渉が行える・コミュニケーションが取れる”ことを示すエピソードを聞いた。

「欧州のデータ保護監督当局に対する、企業グループ内の個人データ自由移転の枠組みであるBCR(拘束的企業準則)承認に関する申請という当局交渉案件において、承認取得に成功しました。承認取得にあたり、英国のEU離脱(ブレグジット)があった都合で、審査の主担当の役割を英国の監督当局からEU側の監督当局に引き継いでもらわなければならない局面がありました。英国の監督当局とEU側の監督当局のいずれの担当官とも良好な協働関係にあったことが功を奏して、早期に引き継ぎを行ってもらい、比較的スムーズに残りの審査手続きを進めてもらうことができました。海外当局とコミュニケーションを取りつつ、日本企業がこの承認取得にこぎつけたケースはかなり希少であり、当事務所だからこそ実現できた成果であると自負しています」(杉本弁護士)

東京オフィス開設時から参画しているトビン・アーロン弁護士(米国カリフォルニア州弁護士)は、仕事のやりがいを次のように語る。

「データ保護・プライバシー規制分野は、非常にユニークでエキサイティングな業務分野です。AIなどの先端技術についても学ぶことができるうえ、世界中の規制がそれらの技術に対応するために、どのように発展・適応していくか、その経過をリアルに見ることもできます。また、各国政府によってデータ保護・プライバシー規制がどのようにかたちづくられていくのか、世界の政治とデータ保護法の相互関係を知ることも面白い。当事務所の案件は真にグローバルなので、私もこれまで、米国、EU、英国、タイ、中国、日本の案件に携わりました。この分野は日々拡大しているので、私たちの取り扱い案件は、今後も確実に増加していくでしょう。ここでの仕事は、学ぶべきことが多く、わくわくします」

創設メンバーであり、パートナーを務める川島章裕弁護士は、自動車の安全運転技術、配車アプリに関する事業、IoT事業の海外展開、クッキー規制対応、大規模な情報処理を伴うデジタル・マーケティング活動など、先端的な事業分野での支援を多く行う。

「データ保護法対応は、租税法のように詳細な規定がなく、規制の枠組みが抽象的に記載されているケースが多いことが特徴です。また、監督当局が公表するガイドラインが企業の実態と合わないケースも往々にしてあります。当該分野は平たく言えば『ある程度原則的な内容を定めるから、その枠内で解決していきなさい』という建て付けなので、依頼者にとって最善な具体的・実務的対応をどうするか――“想像力”と“創造力”を駆使しながら仕事ができる、弁護士の力の発揮しがいがある分野だと思います」(川島弁護士)

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「私は、杉本弁護士をTakeさん、川島弁護士をAkiさんと呼んでいます。二人とも尊敬すべき存在であり、よき同僚です。一緒に仕事をするのがとても楽しいです!」(アーロン弁護士)

変容しながら拡大していく

同事務所では、先述の5カ国を中心に、データ保護・プライバシー規制法の立法・実務の最前線を追いかけ、セミナーや受託レポートの執筆といった対外的な発信活動にも力を入れる。そうした発信がきっかけとなって、新規の相談者からの依頼が増え続けている。そのため昨年、新たに2名の弁護士を採用した。その教育方針と、教育体制について、杉本弁護士にうかがった。

「この規制分野のスペシャリストを育成していくには、とにかく基本的な概念の理解、実務上の取り扱いについて、実際の案件を通じて解説するとともに、毎日コンスタントに“議論”することが不可欠。逆に言えば、自学自習のみで、効率的かつスピーディに成長することが難しい分野であるとも。ですから、毎日アソシエイトと1時間程度のミーティングを行い、案件のアサインメントや進捗報告に加えて、最新情報に関する講義的な内容を私がレクチャーし、議論するという流れにしています。そうして一つひとつ基本的な考え方を身につけ、キャッチアップした最新情報などを他のメンバーに自ら発信・共有し、議論が進められる“自走できる弁護士”に育てていきたいと思います」

事務所の今後の展望などについて、杉本弁護士にうかがった。

「2019年に、ブリュッセルで事務所を開設した当時は、EUの競争法とデータ保護・プライバシー規制の両輪で業務を行っていました。今でも競争法は取り扱っていますが、お客さまの目線に立った時、データ・個人情報保護の分野に寄せながらも、そこから生起する新たな規制法をどんどん追っていくことになるであろうと考えています。例えば、すでに特化しているAI規制もしかり。今、私が個人的に注目しているのは量子技術ですが、そこも将来的には何らかの規制がかかってくることは間違いないでしょう。そのように、当事務所のプラクティスを変容させていくことで、グローバルなインパクトを生み出していきたい。一言で規制法といっても法域は広いし、動きも早い。変容を恐れず、常に最先端を追いながら、弁護士としてのエクスパティーズを確立していく。そうして、依頼者の実状・実態に合った最適解を出せる。そのようなプロフェッショナル弁護士の集まりであり続けたいと思います」

※取材に際しては撮影時のみマスクを外していただきました。

S&K Brussels法律事務所
東京・ブリュッセル・ニューヨークに拠点を構え、杉本弁護士が代表取締役を務める規制関連のコンサルティングファームを合わせて、S&K Brusselsグループとして活動する

Editor's Focus!

事務所設立の地・ブリュッセルのオフィスはEU立法機関を見渡せるビルにある。写真(提供/杉本弁護士)は、グランプラスという市役所前の広場で2年に1度開催される行事「フラワーカーペット」の様子。「仕事の合間にほっと一息つけた、“季節の思い出”の景色です」(杉本弁護士)

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