不二製油グループ本社株式会社は、植物性油脂や業務用チョコレート、乳化・発酵素材、大豆加工素材などの開発・生産・販売を行う食品素材メーカー・不二製油グループの持株会社で、グループ全体の戦略立案および各事業会社の統括管理を担う。設立は1950年で、国内の主要事業会社(不二製油)はヤシ油の圧搾抽出をはじめとして“日本初の技術・製品”を多数有する。70年代からマレーシア、フィリピンなど現地企業との合弁会社設立を開始。現在は欧州、中国、東南アジア、オセアニア、米州に主要会社27社を展開、国内7社と合わせ34社の法務を法務部門が統括する。部門長の酒匂真純氏に同部門の仕事をうかがった。
「部門内のメンバーは、日本の事業所を担当する専任者以外、ほぼ全員が海外会社を含むグループ全体の法務を担当しています。契約書レビュー、法律相談、コンプライアンス施策の企画実施、組織再編やM&Aなどのプロジェクト支援といった一般的な企業法務に幅広く対応していますが、特に国際法務の割合が高いことが当社法務部門の特徴だと思います。法務メンバーの総合力・リーガルセンスを向上させるため、あえて業務の細分化を行っていないので、全メンバーが、国内外にまたがる案件を始めから終わりまで担当するチャンスを有しています」
同社は2024年までの中期経営計画 中計基本方針で、「事業基盤の強化」「グローバル経営管理の強化」「サステナビリティの深化」を掲げて成長戦略を推進中だ。
「米国、ブラジル、オーストラリア、および東南アジアの複数社をM&Aするなど、ここ数年、当社事業のグローバル化が加速しています。こういった動きを受けて、各社におけるPMIを我々も事業部門やほかの職能部門と連携して進めています。地域によって言語や法制度も異なるので、それぞれの難しさがあり、それがまたメンバーのやりがいにもなっているようです。また、米国子会社で保有していた大型プラントを他社へ売却するなど、近年は“買い”だけでなく“売り”の事案も増えています。そうした海外でのディールも、日本の法務部門が中心となって進めます。当然、現地法律事務所の弁護士にも協力してもらいますが、我々の仕事はプロジェクトの審査業務にとどまらず、“現場対応”の多いことが特徴です。総員7名という小規模な法務部門だからこそ、全員が“当事者”として関与し、プロジェクトリーダーとして案件を遂行する――それが仕事の醍醐味だと思います」(酒匂氏)
北米エリアのCLOを務めているRobert W. Karr, Jr.氏も、「我々は、契約業務、訴訟、労働、知的財産など様々な案件に関与しています。北米チームも日本と同様に少人数なので、必然的に各自が主体的に担当案件に臨むことが求められます。そのなかでメンバーが互いに協力し合い、事業部、プロジェクトの目標や課題解決を達成できた時は、大きなやりがいを感じますね」と語ってくれた。
そんな不二製油グループ全体の法務機能のミッションについて、酒匂氏およびKarr氏は次のように語る。
「やはり、“ガーディアン機能とナビゲーション機能”の両立です。重大な法令違反を生じさせないよう、コンプライアンスをしっかり遵守しつつ、積極的に現場に出て問題を見つけてくる姿勢を大切にしています。事業と経営に寄り添い、各国におけるリスク分析・低減策を考え抜き、法務の観点から戦略・選択肢を提案する――“受け身ではない法務”であることが我々に求められています」
このガーディアン機能の部分について、中国エリアの法務責任者、張潔敏氏が教えてくれた。
「私が3年前に入社した時、不二(中国)投資有限公司は全社員20名足らずの組織でした。当時は専任の法務担当者も不在でしたが、組織再編を経ながら、現在150名規模の組織になっています。急拡大が進むなか、従前の“人治型”から“法治型”の組織に変えていく必要もあります。そのために内部通報などの制度設計と、何よりも社員一人ひとりのマインドをどのように高めていくかといった観点でのコンプライアンス教育に注力しています」