内閣府の規制改革推進室(以下、規制室)は、規制改革推進会議の運営や規制改革ホットラインの対応、規制改革に関する企画・立案、他省庁との調整を行う部署だ。内閣総理大臣の常設諮問機関として設置される規制改革推進会議には、「公共」「スタートアップ・投資」「働き方・人への投資」「健康・医療・介護」「地域産業活性化」といった5つのワーキング・グループ(以下、WG)があり、各分野の規制のあり方についての調査・審議が行われている。同室の役割を、平池大介弁護士にうかがった。
「例えば、コロナ禍を経て隔地者間でのサービス需要は増加しています。また、少子高齢化による人手不足は深刻化していますし、インバウンド観光客の増加への対応も必要です。他方で、それらを解決するための科学技術が進歩しているなど、社会環境が急速に変化し複雑化している昨今、特定分野の制度を所管する省庁だけでは、従来の規制(法令・運用)の適切なアップデート(緩和・強化)が難しくなっています。そんな状況下、硬直化した省庁の意思決定に対する“外圧”として正しい政策実現に関与することが我々の責務と考えています。例えば、各省庁が通常意見を聴取する業界団体や職能団体以外の観点から、国民全体の利益になり得ると判断できる政策について、要望者の意見を基に議論、調整を行います」
任期付職員の山下豪弁護士が、具体的な仕事の内容について、次のように教えてくれた。
「私はスタートアップ・投資WGの事務局として、主に金融庁、法務省、経済産業省がカウンターパートとなる案件を担当しています。スタートアップを含めた企業の活動を後押し、経済を活性化させる政策の取りまとめが主業務です。企業や団体からの、『時勢に合わなくなった規制は緩和すべき』『経済活動を推進するための環境を整備すべき』といった“規制改革要望”を受け、議論の場となるWGを開催し政策として実現すべく、実務実態や法令などの調査、各方面との折衝・調整を行っています」
山下弁護士が手がけた仕事の成果として、株式報酬に関する会社法制・金融商品取引法制の見直しや、M&Aの活性化、リーガルテックの推進などが挙げられる。
「特に、AIによる契約書審査と弁護士法との関係が問題となった案件では、弁護士業の在り方を考える意義深い経験ができました」
一方、平池弁護士は、健康・医療・介護分野を担当し、オンライン診療とオンライン服薬指導の恒久化をはじめとした医療DXに取り組んだ。
「国民がオンライン診療を利用しやすくするため、制約の撤廃と診療報酬の適正化を提起しました。そのほか、医療の質向上や公益性のある創薬・感染症対策に向けた医療等データの利活用法制等の整備なども。様々な要望者・有識者、現場の方々へのヒアリングとリサーチ、議論を基に論点整理を行い、制度改革のための企画を立て、案件実現に向けて各省庁とハードな交渉・意見調整などを行う――非常にエキサイティングな仕事だと感じています」