Vol.96
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法務部所属のインハウスローヤーは、元検事の園田恭子氏(68期)、中村安利氏(63期/前列左から2人目)、西島真璃恵氏(71期/前列右端)。リーガルエキスパート制度により、専門性に応じて、役職者でなくても同等の報酬を得ることが可能。撮影場所は、2025年4月竣工のグループ新拠点「LIFE CARD銀座ビル」(東京)。今後、多くのグループ会社を同ビルに集約する

法務部所属のインハウスローヤーは、元検事の園田恭子氏(68期)、中村安利氏(63期/前列左から2人目)、西島真璃恵氏(71期/前列右端)。リーガルエキスパート制度により、専門性に応じて、役職者でなくても同等の報酬を得ることが可能。撮影場所は、2025年4月竣工のグループ新拠点「LIFE CARD銀座ビル」(東京)。今後、多くのグループ会社を同ビルに集約する

THE LEGAL DEPARTMENT

#173

アイフル株式会社 法務部

“テックドリブン”な総合金融グループを目指し、全社の“変革のための加速”を法的側面から伴走

金融機能の違いで法務体制を設計

金融ビジネス市場は現在、デジタル技術の進展や異業種との融合などを背景とした〝変革期〟にある。各社が事業ポートフォリオの再編とビジネスモデルの再設計を進めるなか、アイフル株式会社も、M&Aを通じた企業変革を加速させている。同社は、個人向けローン事業、事業者向けローン事業、信用保証事業、個別信用購入あっせん事業という4事業を軸に、クレジットカード、売掛債権ファクタリング、診療報酬担保ローン、クラウドファンディング、不動産リースバックなどの領域にも進出。積極的なM&Aおよび新規事業の立ち上げにより、事業基盤を拡張中だ。2026年4月から、単独株式移転により、純粋持株会社ムニノバホールディングス株式会社を設立し、持株会社体制へと移行。グループとしての統治機能強化や事業多角化に伴い、法務の重要性が一層高まっている。こうした〝経営の高度化〟を支える法務部のミッションについて、法務課の園田恭子氏に聞いた。

「当グループは、27年3月期を最終年度とする中期経営計画で、最大600億円のM&A投資を行うことを明示しています。システムエンジニアリングサービス会社、プリペイド事業会社やペット保険を扱う少額短期保険業者などのM&Aを行いつつ、〝テックドリブンな総合金融グループ〟への転換を推進中です。この活動を支えていくために、法務部では3つのミッションを掲げています。一つ目は、急速に拡大する事業領域に即応できるよう、関連法令を早期にキャッチアップしていくこと。二つ目は、今後も継続的に推進すると見込まれるM&Aについて、法務機能の内製化を進め、意思決定の迅速化を図ること。三つ目が、各事業分野における当グループの強みを生かしながら、事業部門からの相談に留まらず、経営課題のような大きなタスクに対しても、法務部自ら新解釈や新領域に踏み込んで新たな価値を生み出し、提供していくことです。これらの遂行に注力しながら、グループ各社の円滑な事業推進と経営判断に日々伴走する役割を担っています」

法務部は、京都と東京の2拠点体制を敷いている。

「京都の法務メンバーは、アイフル株式会社における貸金業務を中核とする事業に加え、事業者向け融資などの融資関連業務、サービサー業務、ならびにコーポレート関連業務を担当。一方、東京の法務メンバーは、ライフカード株式会社を中心とするクレジット事業を中心に、個別信用購入あっせん事業、前払い式支払い手段に該当するプリペイド事業、後払い決済事業など、決済領域にかかわる周辺事業を担当しています。また、事業内容に応じてグループ会社をそれぞれの拠点に割り振り、各社からの法律相談にも対応。金融庁をはじめとする当局対応や、許可・届出にかかわる業界団体の対応については、京都・東京の2拠点で連携しながら、担当しています」

多様な金融機能を持つ同社グループでは、金融機能ごとに法務の担当領域を切り分けている。各事業における専門性と即応性を高める体制をとっていることが、法務部の特徴と言えるだろう。

同部では、リモートワークやフレックス制度を活用し、自由な働き方をデザインできる。子育て中の西島氏も、週2回のリモートや、時短勤務を活用している

様々な法律を駆使してビジネスを創造する

同社グループが近年注力しているM&Aは、特に法務部の力が発揮できる領域だ。園田氏は言う。

「当グループでは、23年1月以降、8件の買収・事業譲受(M&A)を実施しています。これらのM&Aにおいては、独占交渉権を取得した段階から法務部の関与が本格化します。法務デューディリジェンスについては外部アドバイザーにも依頼しますが、全面的に委ねるのではなく、当社の事業特性やリスク認識を踏まえながら、外部の専門家と協働で進めます。また、株式譲渡契約書(SPA)の作成においても、当社特有の事情やグループとして重視する観点を反映させるため、主体的に関与し、柔軟な解決策を提示しています。さらに、クロージング後のPMIにも関与。M&Aは買収して終わりではなく、グループシナジーの創出やガバナンス体制の整備が極めて重要です。私たちも、買収先企業のガバナンス強化やコンプライアンス体制の構築に向けて、グループ全体としての統制機能の向上を目指し、プロアクティブに活動しています」

東京拠点に所属する西島真璃恵氏に、仕事のやりがいを聞いた。

「スキームが固まっていない構想段階から事業部門の企画検討に加わり、既存サービスの拡張や新金融サービスの立ち上げに必要なビジネスモデルや契約構造、規制対応の観点で意見を述べ、かつ法的リスクの指摘に留まらない実現可能なスキームをともに検討していきます。このように、一つの事業をつくり上げるプロセスに、当事者としてかかわれる点が、私が思う仕事の醍醐味です」

同じく東京拠点所属の中村安利氏は、「〝総合金融企業〟を名乗るとおり、商品が多様で、関連する法律の幅も非常に広い。弁護士15年目だが、初めて開く法律書もある」と話す。中村氏は続けて言う。

「前勤務先はマンション開発を手がける不動産デベロッパーで、扱う法律は限定的でした。しかし現在は、貸金業法はもちろん、割賦販売法や資金決済法を調べたり、民法(保証契約)に金融庁の監督指針や消費者保護法制を絡めて法的整理をしたりと、新鮮な刺激が得られる毎日です」

さらに中村氏は「クレジット事業における加盟店契約や広告宣伝の事前チェックといった日常業務に加え、各事業部門からの法律相談対応が業務の多くを占める」と具体的な業務内容も話してくれた。

「なかにはイレギュラーな対応が必要なケースも。その際、杓子定規に事業を止めず、代替案を提示するようにしています。私たちの仕事は、直接的に収益に結びつく業務ではないかもしれませんが、そうした対応ができた時は、事業推進を支える役割を果たせていることが実感できます」

法務部長の山本敬志氏は、法務部の業務について、こう語る。

「既存継続事業、新規事業、M&Aであっても、当部の場合は案件の初期段階からかかわるため、『特別なプロジェクト名がないまま、いつのまにかプロジェクト化していた』ということがよくあります。その場合は、案件の内容を見ながら、インハウスローヤーが必要な案件であれば、中村さんや西島さんに個別に声をかけてアサインするといったスタイルが多いです。また、法務部担当の常務執行役員から、週次で開催される経営会議での方針が速やかに我々に共有され、『次の打ち手や改善すべきこと、今後こういうことをやりたいから検討着手しよう』といった〝報連相〟も役員を交えながら頻繁に行います。〝経営との距離が近い法務部〟と言えるでしょう」

法務部メンバーは、京都13名、東京8名、全21名の陣容(法務部長の山本敬志氏は後列左端)。インハウスローヤーの採用は、グループ全体で2020年から開始した(なお、写真は京都のメンバー)

多様な意見や発想を尊重し合える風土

〝テックドリブンな総合金融グループ〟へと進化するため、多くの施策を進める同社グループ。経営からは、常にスピード感を持ち、あらゆる事業部門と協働しながら経営方針をかたちにしていくことが期待されている。

「新規施策やM&Aが増えるなかで、求められる法分野も広がっています。そのようななか、我々は必要な知識を早期に身につけ、現場の意図を素早く汲み取り、適切な解決策を迅速に示すことが重要と考えます。外部に相談すべきか社内で判断できるかを見極め、スピードと正確性を両立させることが、今の課題であり、提供すべき価値だと思っています」(園田氏)

山本氏に、これからの法務部のあり方を聞いた。

「我々は、『For Colorful Life.(自分の色が輝く社会に)』といったVISIONを掲げ、一人ひとりの個性や価値観が生かされる社会の実現を目指しています。ゆえにグループのなかでも、多様な意見や発想を尊重し、変化を前向きに受けとめていく風土を大切にしています。法務部も、〝守り〟の機能だけに留まらず、企業や事業部の様々な意見を聞きながら、『どうすれば実現できるか』を考え、主体的に提案できる存在でありたい。チャレンジして仮に失敗しても、その失敗を〝許容〟できる度量も持ち続けたいと思います。多様な視点を尊重し、事業の可能性を広げていく――その思いを共有できる方と、グループの成長を支えていきたいと思います」