Vol.17
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今年4月に大きな組織改編があり法務部も相当数のメンバーが入れ替わった。結果として組織は若返り30歳代が最も多い層になっている。ちなみに法務部在籍年数としては3、4年のメンバーが多い。

今年4月に大きな組織改編があり法務部も相当数のメンバーが入れ替わった。結果として組織は若返り30歳代が最も多い層になっている。ちなみに法務部在籍年数としては3、4年のメンバーが多い。

THE LEGAL DEPARTMENT

#12

全日本空輸株式会社 法務部

ANAの前線勤務を経たメンバーが、現場感覚でリスクマネジメントを行うエアラインの法務部

日本を代表する航空会社とグループ72社の法務業務を遂行

1952年にヘリコプター輸送事業を開始し、航空機による貨物輸送・旅客輸送と事業を拡大してきた全日本空輸株式会社(ANA)。2003年にはグループ全体の累計旅客数が10億人を超えた。日本を代表するエアラインは整備や地上支援を行う多数のグループ企業に支えられ、旅行業をはじめとした周辺ビジネスの系列会社も増えている。それら72におよぶグループ企業の法務業務をコントロールする、本社法務部の小安土宗勲氏に取材した。

「ANAの法務部は15名体制です。部長と私以外はほぼ30代という若い組織で、女性社員が2名在籍しています。今年4月に3名を増員して体制強化を図ったところですが、ANA本社の法務はもちろん、グループ企業(連結子会社)72社の法務支援も行っているため業務量が膨大。その大量かつ広範な仕事に対応するため、内部処理とアウトソーシングを柔軟に使い分けています。本社では予防法務・契約支援・調停など業務の大半を内部で解決しますが、訴訟の多くは顧問法律事務所に依頼。グループ顧問制で系列会社も自主判断で外部に出せるシステムです。私たちは『まずビジネスパーソンであり、その次に法律を扱うエキスパートという立場にある』と自覚しています。原則的にビジネスリスクは社内でマネジメントし、専門知識を要する案件については適宜、外部に依頼。案件によって新たに弁護士を探す場面では、弁護士である法務部長の人脈や高度な判断が存分に発揮されています。資格者はそのほかに司法書士が1名います」

保険契約を管理するなど、幅広い業務をカバーする法務部

ANAならではの特徴やエアラインの特殊性は、どんな点にあるのか。

「法務が保険契約の管理を行っている点が特徴的だと思います。例えば航空機や航空運送にかかわる航空保険、社有資産についての自動車・火災保険など。『保険もリスクマネジメントの大きな要素』という経営判断に基づいて草創期から法務が担当しているのです。日常的には契約支援業務がいちばん多いのですが、前述したような仕事を遂行するにあたって (1)航空運送法のチーム (2)労働法・労務関係のチーム (3)債権回収・独禁法など経済法のチーム (4)保険のチームと法分野で担当分けしています。業務の専門性が高いためチームに分けていますが、メンバーはその枠にとらわれ過ぎることなく積極的に仕事に取り組んでおり、例えば本社・グループ企業から寄せられる日々の法務相談は、最初に電話を取った人間が担当にかかわらず責任を持って行う慣習が定着しています。そのほかの業務では組合対策を行う勤労部のバックアップも大切な仕事。コンプライアンス委員会はCSR推進部が運営していますが、リーガルコンプライアンスは法務が担っています。グローバルに展開する航空会社ということで、おそらく皆さんがイメージするほどは、海外とのやりとりは多くありません。航空機そのものが外国製品ですから機体・部品の契約は英文で行われますし、賃貸など中国語ほか現地の言語によるものもあり、契約金額としては海外の方が大きいのですが、航空券の販売契約をはじめ対応件数は国内が圧倒的に多数。外国とのやりとりでは、スターアライアンス(※)の業務も受け持つ運送法のチームが海外との連絡が多いこと、保険チームがロンドンの保険会社とコンタクトを取ることなどが目立つ程度です。スターアライアンスでは提携会社とのルール作り、それに基づいた契約書起こし、独禁法などに触れないかチェックして修正をかけるなどのワークがあります」

全日本空輸株式会社 法務部
保険チームをメインとしながら法務部全体の業務を見渡す小安土氏。談笑しているのは保険と経済法のメンバー。

目指すは、ビジネスパーソンによる「現場感覚」を持ったリスク管理

「私たちは航空運送に伴う各種のクレームにも対処しています。ほとんどのケースは法務部に来る前に担当部署で解決できますが、難しい折衝や調停が必要になった場合、対応を委ねられるのです。一例をあげればお預かりした荷物が破損したときのクレームなどがあります。それらの対応では、しゃくし定規に約款や条約などをあてはめて解決するのではなく、お客さまの声に真摯(しんし)に耳を傾けることを心がけています。現場のビジネス感覚とお客さま視点を意識してリスクマネジメントにあたるのが私たちの信条。ですから専門性と経験が重要な法務であっても、ここだけに在籍して「現場」を忘れるようではいけない。また整備・運航など、ほかにも専門職が多い会社ですからビジネス全般を理解するためにも現場に出ることが不可欠。そこで3、4年間、法務に籍を置いて専門性を磨いた後は、生産本部などに異動するジョブローテーションを行っています。入社後すぐには法務に配属されないのも前述の考えに基づいたもの。一部の専門職を除いて、すべての社員が複数部署での勤務経験を持っています。私自身も入社後は東京空港支店で旅客サービスを身につけ6年後、法務部配属になりました。そして法務で5年勤務した後は、成田空港支店でグランドサービスを6年経験。再度、法務に戻って今年が3年目です。法務部ではOJTや外部セミナーも積極的に活用してメンバーのスキルアップに努めていますが、部の外でも多くを経験して初めて一流のビジネスパーソンとして法務に携われると考えています。また法的な思考・知識を持った人間が各部署に広がることによって会社全体でリスクマネジメントをしやすくなるはずです。法務部がトラブル対応のセミナー・社内講座を主導し、グループ企業に契約や法務業務のマニュアルを配布して啓発に努めているのも、一つは少人数で効率よく法務業務を遂行するためですが、同時に会社全体の意識をボトムアップすることを目的としています。今後もこれらの施策を推進して、リスクマネジメント体制を全社レベルで強化していきたいと考えています」

 

※世界的な航空会社による提携ネットワーク。加盟航空会社にはユナイテッド航空(アメリカ)、ルフトハンザ・ドイツ航空、シンガポール航空などがある。ANAは1999年に加盟した。