同事務所では、専門性を備えた弁護士を育てる方法として、“外部での経験”を推奨する。
例えば、行政機関や企業法務部での勤務経験、プロボノ活動や個人受任などの所外経験である。現在も70期台の弁護士2名が、行政機関や企業法務部で勤務中という。野田学弁護士は、入所6年目の時に任期付職員として公正取引委員会に勤務し、経済産業省で競争法関連の仕事にも従事してきた。こうした経験を生かし、同事務所で独占禁止法、中小受託取引適正化法(取適法)などの専門家として活躍中だ。
「もともと独禁法を専門に扱いたいと考えて入所したわけではありませんが、所内の様々な案件に携わるなかで、独禁法分野に関心を持つようになりました。当時、事務所内に同分野を専門的に扱う弁護士が少なかったこともあり、公正取引委員会で任期付職員の募集があった際、希望して赴任したのです。事務所の皆さんが快く送り出してくれたこと、大変感謝しています。在任中は行政の実務を通じて、独禁法をどのような視点で捉え、運用していくのかを学びました。事務所に戻ってからは、独禁法に加え、取適法に関する顧問先からの相談にも数多く対応しています。赴任中に得た知見を、日々の案件対応や事務所運営に還元しています」(野田弁護士)
「事務所としては、顧問先企業への対応をはじめとする企業法務を基盤としながら、特に訴訟・紛争対応で強みを培ってきました。一方で、各人がプロフェッショナルとして自らの専門分野を切り拓き、知見を深めていくこともしっかりと支援。そして、各人が培った専門分野の経験や知識を若手弁護士へ継承することで人材育成につなげていく。その積み重ねを通じて、事務所を発展させ続けているのです」(橋本弁護士)
事務所の強みである訴訟・紛争対応は、若手弁護士にとっては基礎力を鍛える場にもなっている。橋本弁護士は続ける。
「当事務所では、時間をかけて事実関係を調査し、法的な分析を尽くしたうえで説得力のある書面を起案することを重視しています。事案の方向の見極め、尋問への対応、依頼者への丁寧な説明や意向聴取なども重要ですが、特に大切にしているのは、事案全体を俯瞰し、この事件をどのように進めるべきかを考え抜く姿勢です。これらの点を、依頼者から評価いただけているのではないかと思っております。若手は、そうした一連の作業を厭わず、地道に積み重ねることで、弁護士としての基礎力が鍛えられていきます」
事案を十分に分析・調査し、メンバー同士で徹底的に議論を重ね、方針を導き出していく手法は、第三者委員会の業務にも生かされている。実際、同事務所には調査案件の依頼も多い。公表された事例としては、「種苗法違反等に関する調査報告書」が挙げられる。同報告書は、「第三者委員会報告書格付け委員会でも非常に高い評価を得た。もっとも、橋本弁護士は「我々は“黒子に徹する”ことも多いです。この件は、公になる案件であったため、対外的にも評価いただけましたが、公になるかどうかにかかわらず、良い仕事をしなければなりません」と、控えめに語る。