Vol.97
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左から、藤本拓大弁護士(71期)、森下太智弁護士(78期)、清水勇希弁護士、谷口陽輔弁護士(71期)

左から、藤本拓大弁護士(71期)、森下太智弁護士(78期)、清水勇希弁護士、谷口陽輔弁護士(71期)

STYLE OF WORK

#205

弁護士法人リット法律事務所
(大阪弁護士会所属)

スタートアップ法務×介護など新領域を開拓。“分野の掛け合わせ”で唯一無二の事務所に!

“負けない領域”をどう築いていくか?

2022年10月に大阪で産声を上げたリット法律事務所。「既存かつ特定の法分野が専門であり、得意というだけでは、もはや弁護士として差別化できない」と語るのは、創業者の清水勇希弁護士だ。

「会社法や労働法などを専門とする弁護士、英語力があって渉外が得意といった弁護士は、すでに何千人もいます。我々は『日本一の法律事務所になる』というミッションを掲げていますが、新興である当事務所が突き抜けた存在となっていくためには、『これだけは負けない』という、独自の領域を持つ必要があると思っています。その“負けない領域”として、我々は『スタートアップ法務×介護』『渉外×医療』『渉外×相続』など、多様な“分野の掛け合わせ”に挑戦しながら、新たな市場の開拓にまい進しています」

「成長していく事務所で、所内ルールなどを一緒につくっていけることもやりがいの一つです」(森下弁護士)。なお森下弁護士は、ロースクールで教鞭を執った清水弁護士の教え子

掛け合わせの要素の一例が、身寄りのない高齢者の生活支援を行う「身元保証」である。これまでも同分野を手がける弁護士は存在したが、リット法律事務所では、「株式会社あかり保証」というスタートアップ企業を立ち上げて、全弁護士が法的支援だけにとどまらず、事業者として現場運営にも関与する。また、厚生労働省や各業界団体とも連携しながら、業界ルールの整備や制度設計にも踏み込んでいるという。

「これまで『あかり保証』の運営において、デット・エクイティの双方を含め、累計約3億円の資金調達を行ってきました。自ら事業者として資金調達、VC対応、アライアンスなどの難しい経営判断をしてきたからこそ、法律事務所の業務において、クライアントに寄り添った助言ができていると自負しています。一方で、我々自身も事業運営においては、外部の顧問弁護士に相談する立場にあります。だからこそスタートアップのクライアントに対しては、『事業者が本当に必要とする回答は何か?』『どのようなスピード感や粒度で助言を求めているのか?』『リスクの許容範囲は?』といった課題を常に意識して、向き合う。杓子定規な法的助言を行うのではなく、クライアントの置かれている状況や意思決定の背景を理解したうえで、事業を後押しすることを大切にしているということです。一例ではありますが、身元保証という新しい市場とスタートアップ法務、その双方で“突き抜けた知見”を蓄積しつつあることが、我々の強みとなっています」

また“渉外×医療”という掛け合わせ分野では、「医療集中部」での経験を有し、多数の医療裁判に携わり、英語も堪能な藤本拓大弁護士(元裁判官)が牽引している。清水弁護士も医療機関の倫理審査委員会で外部委員を務めているなど、医療分野における同事務所の実務・制度の理解は深い。

清水弁護士は、こう語る。

「当事務所に所属する谷口陽輔弁護士と藤本弁護士は71期の司法修習同期で、気心の知れた間柄です。また、今年の4月からは78期の森下太智弁護士が、5月からは77期の弥永隼典弁護士が加わってくれました。個性豊かな経歴・人柄の弁護士が集まっていることも、当事務所の大きな強みといえますね」

あかり保証は経済産業省・大阪府からも優良なスタートアップ企業として認定されている(写真は、各種ビジネスコンテストで表彰された時のもの)

社会の変化を読み解きニーズを掘り起こす

そもそも、なぜ「身元保証」に着目したのか? その理由を、清水弁護士に聞いた。

「ある高齢の依頼者からの相談が発端です。老人ホームへ入所する際に、『身元保証人と連帯保証人になってほしい』という相談を受けました。頼れる家族がいないと、施設に入所することが難しい現実を目の当たりにし、身元保証は単身高齢者にとって、安心を提供する必要不可欠なサービスであることを痛感したのです。同時に、社会の仕組み自体が整っていないこと、こうしたニーズに十分応えられる弁護士が不足しているということも問題だと考えました」

きっかけは、そんな日常的な法律相談だった。しかし、日頃から弁護士として多様な社会事象にアンテナを張り、チャンスを探し続けてきた姿勢が、仕事領域の拡大につながっている。

例えば、日本では26年前に介護保険制度が導入されているが、これは、“家族が高齢者を支えることを前提とした制度”である。

「現在の日本は、単身高齢者や身寄りのない方が増え、制度の前提と実態が乖離し、ひずみが生じ始めています。海外に目を向ければ、韓国ではすでに高齢者向け介護保険制度が導入され、中国では介護保険制度の整備が進められています。日本は世界で最も高齢化が進んでいる国ですから、未来の課題が先に顕在化していきます。ですから、日本で培われてきた身元保証や終活支援のモデルは将来的に、高齢化が日本より遅れて訪れる海外各国で必要とされる可能性が大きいと予測しています。社会情勢や制度変化を自分なりに読み解き、その先にあるニーズをとらえることができれば、これまで存在しなかった法務のニーズや、新たな支援領域が見えてくるはずです」

「何を専門領域として打ち出すか」を考える際、清水弁護士は、市場性と競合優位性を重視すると言う。

「ニーズのないところにサービスを展開しても、自己満足で終わってしまいかねません。そのため、法改正の情報は当然、毎日のニュースも欠かさずチェックしています。そして、『なぜこのニュースが報じられているのか?』『そこにどのような社会変化や新たなニーズがあるのか?』『我々のお客さまにはどのような影響がありそうか?』など、“自分の頭の中”で何度も問答することを習慣化しています」

職人であり経営者。それを全員で目指す

同事務所が取り扱う業務は、“掛け合わせ”の領域に限らず、M&A、不動産・建築法務、エンターテインメント法務、家事事件など多岐にわたる。こうした既存の法分野と何かを掛け合わせることで、また新たな領域が生まれる可能性が十分にあり得るわけだ。その可能性を広げていくには、さらに多くの仲間が必要となる。

「弁護士は、“個人商店”の集まりだと思っています。『〇〇事務所に仕事を頼みたい』ではなく、私ならば『清水に、また仕事を頼みたい』とクライアントに思っていただけることが大切。つまり、“求められる弁護士”でありたいわけです。弁護士は職人でもあり、経営者でもある難しい職業といえます。当事務所では、アソシエイトも経営者意識を持てるよう、国選も含めて個人事件に積極的に取り組むことを推奨しています。個人事件を通じて、自分の頭で考え、依頼者との接し方を学び、将来パートナーとして活躍するための土台を早い段階から築いてほしい。そうして優秀な仲間と切磋琢磨しつつ、全員で日本一、世界一の法律事務所をつくっていきたいと思います」

今年4月には、東京事務所を開設。弁護士法人化も行っており、3年後には拠点数をさらに増やしていく計画だ。

最後に、清水弁護士にどのような弁護士と仕事をしていきたいか聞いてみた。

「これからは、リーガルテックをはじめとするテクノロジーの進化により、弁護士に求められる価値が一層変化していくと思います。生成AIの普及によって、わざわざ弁護士に相談しなくても、人々は“なんとなく理解した気”になれる。そんな時代に、弁護士までが生成AIと同じような答えを相談者・依頼者に返していたのでは、相手の心には何も響きません。相手に寄り添って一緒に悩み、一緒に乗り越えながら、その人を勇気づけられるような言葉、自分自身の経験や生き方から出てくる言葉を届ける――そのように、“言葉に力がある弁護士”でありたいと思います。事務所の志に賛同し、言葉の力を信じる仲間を増やしながら、これからも事務所を盛り立てていきたいと思っています」

リット法律事務所と、あかり保証を合わせて30名強の陣容。後者には、司法書士、公認会計士、保健師、介護福祉士なども所属する。「メンバー間の風通しは極めて良い」と、森下弁護士(写真は、食事会での一枚。“リット”のLで決めポーズ)

Editor's Focus!

「清水はバイタリティとエネルギーの塊。周囲も、その熱量や魅力に引っ張られています」と笑う、谷口弁護士。清水・谷口両弁護士は、漫才日本一を決める「M1-グランプリ」にアマチュアとして2回出場(今年度も出場予定)。藤本弁護士は、事務所のYouTube配信に出演し、元裁判官の日常などを紹介。そうした取り組みからも、親しみやすく風通しの良い雰囲気がうかがえる。