Vol.98
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所属弁護士は62名(2026年7月現在)。各世代がバランスよく所属。取材にお答えいただいたのは、辻畑弁護士と、原田優美弁護士(54期。2列目右端)、西山誠一弁護士(65期。中央の辻畑弁護士の左後ろ)

所属弁護士は62名(2026年7月現在)。各世代がバランスよく所属。取材にお答えいただいたのは、辻畑弁護士と、原田優美弁護士(54期。2列目右端)、西山誠一弁護士(65期。中央の辻畑弁護士の左後ろ)

STYLE OF WORK

#207

DT弁護士法人

総合プロフェッショナルファームとして、伝統と先進性で顧客のビジネスパートナーへ

AI時代の多様な法務課題に対応

DT弁護士法人はデロイト トーマツ グループのメンバーファームで、公認会計士、税理士、コンサルタント、ファイナンシャルアドバイザーなど多様な分野の専門家と連携し、企業の課題解決を支援している。その強みを、代表パートナーの辻畑泰伸弁護士に聞いた。

「私たちの強みは、大きく3つあります。1つ目は、〝AI時代の法務課題〟に対応できること、2つ目は、〝新しい弁護士のあり方〟を提示すること、3つ目が、グループ内の幅広い専門性を組み合わせ、顧客の経営課題に総合的に対応する『マルチディシプリナリーモデル(MDM)』を展開していることです」

昨今は、AIツールを導入して以降、運用方法や社内フローの整備に苦慮する企業も少なくない。

「私たち自身もツールを複数導入し、グループでのAI投資・活動も極めて積極的です。活用方法を試行錯誤しながら、顧客のAIツール導入後の課題解決に向けて支援するとともに、今後はむしろ弁護士としての人間力が試される時代になると考えています」と、辻畑弁護士。つまり、AI時代の法務課題の対応とは、AIガバナンスなどに加え、社内の業務フロー整備や人材育成、AIを前提とした法務機能と弁護士の役割分担といった、多様な経営課題までも受け止めきるということだろう。

DT弁護士法人の設立は2015年4月で、弁護士数が増加中。デスク周りは高いパーティションで仕切られ、執務に集中できる環境となっており、グループと共用の施設も多々ある

従来型の弁護士像にとらわれず、柔軟に!

辻畑弁護士は、2つ目の強みとして挙げた「従来の弁護士の呪縛を破り、新しい弁護士のあり方を提示すること」について、こう話す。

「有事となったり取引が発生した後に、自らを商品として売り出し、企業の法務が対応できない事項のみを業務提供するのではなく、日頃より顧客とコミュニケーションをとり、課題を把握し、顧客のビジネスパートナーとなるように努めることが大事だと感じています。結果、オペレーション支援などの従来の業務とは異なるニーズを感じる場面が増え、法務部以外からの相談も増えました」

そうした活動のなかから生まれた新サービスが、「法務コンサルティング、法務機能のアウトソーシング」。辻畑弁護士に内容を聞いた。

「法務コンサルティングは多岐にわたります。全社内にある法務機能としての契約審査やインシデント対応などの業務フローをどう改善し効率化してゆくかという提案もあり、それにAI活用を加えることも考えられます。また、顧客の法務機能の優れた点や課題を他社比較などから炙り出す法務機能評価の業務もあります。一方、法務機能のアウトソーシングは文字どおり、契約書レビュー、内部通報対応、不正対応などの日頃のオペレーションを引き受けています。つまり、顧客の法務業務をコンサルティングし、そこで顕在化した課題に基づき、オペレーションの一部を我々が運営したり、突発的な問題にはアドバイザリー業務を提供するというかたちです」 

これらのサービス提供は、〝従来の弁護士業務〟の枠にとらわれていると逃しかねない。顧客およびグループ内の専門家との密なコミュニケーションと、高い視座があってこそ〝問題の芽〟を拾う機会が得られる。辻畑弁護士は、「AI×グループ内の専門家×我々リーガルプロフェッショナルという組み合わせが、今後、我々のビジネスチャンスを広げていくことを確信しています」と語る。

これら新サービスの主戦力となっているのが、原田優美弁護士だ。

「当グループは、〝専門家の幅〟がとても広く、不動産ならば取引だけでなく不動産ファンドやREIT、コンプライアンスといった切り口で各専門家が揃い、それが有機的につながっています。また、業界ごとにグループ内の専門家が集まるセクター連携もあり、顧客企業や業界が直面する変化・課題について最新の情報を共有する機会も多々。法律事務所でよく見られる、コーポレート、ファイナンスなど特定のプラクティスに偏りすぎることなく、顧客における企業活動全体を見渡して最適なサービスを提供していけることも、当法人の強みです」(原田弁護士)

原田弁護士は前職の外資系企業で、法務部長も務めた人物だ。

「当法人での仕事は、コンサルティングの要素が強いと感じます。企業活動は、法務部だけ、営業部だけと、部署単体で完結するものではありません。役員にどのように説明していくか、ほかの部署とどのようにコミュニケートしていくとスムーズかなど、企業ならではの物事や人の動かし方があります。そのように、企業活動全体を俯瞰しながら、コンサルティング的視点を持って顧客にサービスを提供していくことが、これからの弁護士にも必要であると感じます。当法人の仕事の進め方は、そうした視点が学べますし、私のようにインハウスローヤーを経験した人にとっては、馴染みやすいと感じています」

ジョギングやフットサルなど、仕事以外の交流機会も多々。写真は、今年5月に実施した「皇居ランイベント」での一枚。なお、デロイトトーマツ グループの共用施設「Fitness Park」(ジム)も利用でき、日々の健康づくりを支える環境も整っている

M&A、危機管理でもデロイトの強みを生かす

同法人では、新たなサービスのみならず、M&Aや危機管理、人事労務分野などの伝統的なアドバイザリー分野にも強みを持つ。グループ内の多様な専門家との協働によって案件へのアプローチを変え、独自性を保っている。

M&Aを中心に手がける西山誠一弁護士は、ほとんどの担当案件で、所内の弁護士や税理士などグループ内の士業、ファイナンシャルアドバイザリー、コンサルタントといった専門家とチームを組み、それぞれの知見を持ち寄るMDMの仕組みを活用している。

「M&Aのストラクチャーを考える際、『税務上は望ましくても、法務上は別の選択肢が適している』と判断できる場合があります。税務、法務、会計、ビジネス、それぞれの観点をすり合わせたうえで、顧客にとって最適な解決策をグループとして提示します」

例えば、日本企業同士が複数国にまたがる事業を切り出し、ジョイントベンチャーを設立する案件では、各国の法制度や税制だけでなく、事業オペレーションやITシステムへの影響も検討しなければならない。そのような時は、デロイトの各国のメンバーファームの拠点と連携し、多面的に検討することで、実行可能性を伴う選択肢を示すことができる。

「法的な見解だけを示して終わるのではなく、実務的にどう解決していくのかまで考え、ほかの専門家とともに解決策を提示する。そういった意識を当たり前に持っている弁護士が多いことも、当法人の特徴だと思います」

同法人の弁護士には、セクター連携や案件ごとのグループ内他法人との協働など、グループ内部のネットワークを活用し、対話を重ねて課題を捉え、提案につなげていく力が求められる。

「一人ですべてやる必要はありません。企業法務弁護士としての実力を高めながら、他分野の専門家とチームを組み、自分の付加価値を増やし、それらを鍛えていくことが必要だと思っています。また、顧客やグループのメンバーの話をしっかり聞き、把握した課題を提案に変えていく行動力も大切です」(西山弁護士)

同法人では、若手が特定の部門やパートナーだけに固定されず、比較的幅広い弁護士と仕事を経験できる体制を現在採っている。また、事務所の戦略やグループの強み、将来の市場環境を踏まえて対話し、キャリアの方向性を一緒に考えたり、定期的なフィードバックやメンター制度に加え、コンサルタント向けの研修やグループ共通研修への参加や海外リーガル部門での研修など、グループの教育の仕組みも人材育成に活用する。

「我々は、伝統的な企業法務の弁護士としての個の力を高めてゆく胆力と、グループ・組織を活用してゆく好奇心や視座の高さを持っている人と仕事がしたいと思っています。当法人は現在、弁護士60名強の組織ですが、グループ内には日本だけで2万2000人の多様な領域の専門家の同僚がいます。リーガルプロフェッショナルとして着手できていない分野もあるので、グループ内の弁護士以外のメンバーを巻き込み、少しずつそこに挑戦していきたい。総合プロフェッショナル系のリーディングファームとして唯一無二の存在でありたいと思います」(辻畑弁護士)

Editor's Focus!

これからは「AIでは代替できない“人間力”が問われる」と、辻畑弁護士。「まず、傾聴力。そして、顧客との対話から課題を引き出す力、安心感を与えて背中を押す力、交渉の落としどころを探る力、パッションを持って働きかける力などが“人間力”だと思う。そうした力を備えた弁護士を、日々の業務や国内外での研修機会なども活用し、育成していきます」(写真は、社内での戦略会議での一枚)