このように、業界は特化しているもののエンターテインメント・アートロイヤーの業務範囲は広いのが特徴だ。「契約や倒産処理といった企業法務から一般民事まで、業務が多岐にわたるため、ゼネラリストであることが求められています」(北澤弁護士 53期)
また、同事務所では作品や製作現場を尊重しており、作品のサルベージというのも重要な仕事の一つである。「10社で共同製作した映像作品があるとして、そのうち1社の経営が破たんした場合、作品の利用が害される可能性もある。その際は作品を救うことに最善を尽くすよう努力します」(福井弁護士)
さらに、作品や業界の主要プレーヤーはもちろん、特有の業界用語や慣習、ビジネスの進め方を知ることも重要である。「法律のためでなく、面白い作品をつくり出すためにアドバイスする。契約に関する相談でも、法律家が理解しやすいように業界用語を法律用語に翻訳すれば、そこでそぎ落ちてしまう大事な要素があったりします。私たちは業界事情を十分に理解した上で、現場に最も即したアドバイスができるよう意識しています」(福井弁護士)
一方、同事務所では他業界の企業法務や紛争処理も取り扱っており、今後も幅広い分野に力を入れていく方針だ。「現に情報問題やファイナンスに強いメンバーもいますし、業務は多岐にわたりますから各分野に精通している弁護士がいた方が組織としても強い。事務所の適正規模、各弁護士のキャリアの幅などを考慮すれば、取り扱い案件には広がりがあった方がいいと思っています。その中で、自分たちの好きなことや面白いと思うことをやりながら、社会にとって、ちょっとは役に立つことをやっていけたら…」と福井弁護士は今後の展望を語ってくれた。