ところで同部には、現在8名(関連会社への出向者を含めると10名)の弁護士がいる。かなりの比率の高さだが、最初に採用した2005年当時は、「インハウスロイヤーを置くことについては、まさに手探り。正直、社内には不安もありました」と内田氏は明かす。
「法務に求められる仕事の質が高まり、量も増えてきていました。新人を育てているだけではそのレベルに届かないのではないか、という〝限界感〞もあって、思い切って採用したのです。結局、様々な懸念は杞憂に終わり、すぐに周囲に溶け込んで、仕事をこなしてくれました。他部署の人間は、言われなければ弁護士と気づかなかったくらい(笑)。この成功体験が大きかったですね」
以降、結果的に1〜2年に1人ぐらいの割合で弁護士採用を続けている。ちなみに10名中8名は、法律事務所勤務の経験もなく、司法修習を終えて直接入社している。これも「結果的にそうなった」のだそうだ。
ほかのチームを兼務しているメンバーが多いのも、同社法務部の特徴といえるだろう。
「いたずらに人員を増やせないという事情もありますが、ベースには一人の人間がいろんなことをこなせるようにしたい、という考え方があります。先ほど述べたように幅広い領域を相手にする法務だということもあり、専門性をさらに細分化させるよりマルチプレーヤーを数多く育てたほうが、組織の力は高まるはずなのです。兼務でいろいろな現場に行くだけでなく、ローテーションでほかのチームに移ったり、将来的には一度法務部を出てほかの部を経験してもらう、といったことも検討したいと思っています」
求める人材は、「法的なスキルはもちろん大事ですが、何よりも現場がどこを目指し、何に悩んでいるのかを、理解しようとする人」だという。
「そのうえで、自分なりの考えを話せることが大事。独りよがりだったり、逆に相手の言うことになびいてばかりだったりでは、当社の法務の仕事は務まりませんから」