Vol.31
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学生時代は体育会アメフト部で活躍した芝昭彦弁護士(57期、写真右)、テニス部キャブテンだった藤戸久寿弁護士(59期、写真左)。両氏の仕事に対するスタンスは、スポーツマンの名にふさわしい。

学生時代は体育会アメフト部で活躍した芝昭彦弁護士(57期、写真右)、テニス部キャブテンだった藤戸久寿弁護士(59期、写真左)。両氏の仕事に対するスタンスは、スポーツマンの名にふさわしい。

STYLE OF WORK

#54

芝経営法律事務所

コンプライアンスによる真の問題解決を“組織の論理”への深い理解をもって図る

コンプライアンスや危機管理分など組織運営上の問題に取り組む

芝経営法律事務所
芝弁護士と藤戸弁護士は、大学および警察庁での先輩・後輩の間柄。「いわば同じ釜の飯を食ってきた、信頼できる同志です」(芝弁護士)

最高裁判所や国立劇場などに近く、紀尾井町という都心ながら閑静な一角に立地する芝経営法律事務所。コンプライアンスおよび危機管理分野など、組織運営上の諸問題への対応を専門とする。所属する弁護士は、芝昭彦弁護士と藤戸久寿弁護士の2名。事務所スタッフを加えても3名という小規模な事務所だ。しかし、芝弁護士と藤戸弁護士がともに警察庁出身であることが、この事務所を特徴づける。事務所奥には寝袋が置かれ、いわく「うちは体育会系です」と笑う二人の多忙さを物語る。

両弁護士は、昨年わが国憲政史上初めて国会に設置された東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(国会事故調)の調査メンバーとして各種調査に携わり、原発事故当時首相官邸にいた政治家や、関係官庁の幹部など膨大な人数へヒアリングも行っている。

 

芝経営法律事務所

「原発事故直後の首相官邸と役所の対応、つまり〝国の危機管理〞の調査に携わりました。真に危機的状況と対峙し、日頃の備えを機能させることがいかに難しいか、調査をすればするほど痛感。リスク管理と危機管理のあり方を考えるうえで、大変勉強になった経験です」と、芝弁護士と藤戸弁護士は声を揃える。この国会事故調と並行して、ある著名上場企業の不祥事に関する特別調査委員会にも、芝弁護士が委員として関与。この調査を担った藤戸弁護士は言う。

「取締役会議事録、監査役会議事録、内部の各種委員会の議事録などのリストを作成し、『関係する資料は全部出してください』と要求したところ、すべて開示いただきました。社長自身が『組織を変えていかねばならない。そのためにはなぜ不祥事が起こってしまったのか、その経緯を徹底的に調べて原因を明らかにしなくてはいけない』という意向を示したからです。こうした危機的状況での対応の仕方に、経営者の意思、企業の姿勢の真の姿が浮き彫りになります」

芝経営法律事務所
二人が顧問を務める日本プロサッカーリーグが昨年暴力団等排除宣言を行った際には、警視総監を来寶として招くなど、その暴排活動においては警察と緊密な連携を行っている

芝弁護士は、断言する。

「我々は、アリバイ的な委員会の設置で難局を乗り切ろうとする姿勢が感じられた場合、依頼をお断りすることも。コンプライアンスに真剣に取組み、本気で『変わろう、組織をよくしよう』と考える企業であれば、客観的視点で徹底的に事実を整理し、問題の原因を分析して再発防止のためのアドバイスを行います。その過程では、様々な組織のしがらみ、あるいは『上司の命令でやらざるを得なかった』というような事実も噴出します。そうした組織の実像をきちんと把握し、真の解決を見据えたサポートをしたいのです」

芝弁護士がそう考えるのには、理由がある。なぜなら神奈川県警外事課長時代に、県警が組織的に不祥事を隠ぺいしたとして、他の幹部らと共に刑事事件の被疑者(最終的には不起訴処分)になった苦い経験を持つからだ。芝弁護士は、当時を次のように語る。

「警察組織内では絶対的と捉えていた上司の命令に従い、〝思考停止〞状態で正しい判断ができなかった……。事実を正そうとしなかったことが私の過ちでした。しかし、私にそうした挫折経験があるからこそ、企業組織が抱える根深い問題までを汲み取ったアドバイスができているのかもしれません」

弁護士としては異色のキャリアを持つ両氏に、これから弁護士を目指す人たちへのアドバイスをうかがった。

「アメリカでは、政治家、役人、企業幹部として、弁護士資格を持つ人が活躍しています。弁護士として鍛えられる論理的思考力や事実認定能力は、一素養にすぎません。日本もそのように、有資格者の進路の選択肢がもっと広くてもいいと思う。法曹資格を得てすぐに弁護士にならなくても、民間企業や役所などの組織で働いたり、海外留学したりするなど遠回りしてから弁護士活動を始めてもいい。そうして積み上げた経験が多いほど、それが糧となって視野が広がり、クライアントに対してより深い提案やサポートができる弁護士になれるのではと思います」

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    「経済学部卒業だが、警察庁時代は法改正の機会が多い部署で法律になじみがあった。現場で仕事ができ、法律知識が生かせて社会正義の実現ができるのが弁護士。それがキャリアチェンジした理由です」(藤戸弁護士)
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    福島原発の国会事故調は、日本の憲法史上初めて国会に設置された国民のための調査委員会。国家的な危機管理の実態を分析評価するため、官邸や省庁、東京電力等の関係者らに対するヒアリング等の調査を遂行