法テラスや弁護士会の法律相談名簿に登録し、メーリングリストもフル活用。債務整理や離婚、当番弁護などの刑事事件も「片っ端から引き受けた」と、竹森弁護士は当時を振り返る。
「弁護士として独り立ちしたい、目の前の人の役に立ちたい、仕事も欲しい(笑)、そんな思いで突き進みました。すると徐々に“自分の顧客”も生まれ、事務所との契約が切れるタイミングで、開業を決めました」
2012年、前身となる世田谷総合法律事務所を開業。その翌年、現事務所名に変更し、銀座に移転して以降も、独立当時の顧客(企業)が継続している。現在は、“3本柱”以外の残り4分の1が交通事故や債権回収などの一般民事事件。企業法務は契約書作成や人事労務、コンプライアンス関連のほか、社員の相談も受ける。相続では相続診断協会の理事を務め、講演も頻繁に行っている。営業活動は、顧客や知人の紹介が主だという。
「私の長所は、“いかにも先生”ではなく、気軽に話せる雰囲気があることかもしれません。営業活動もガツガツせず、ふと困った時に思い出してもらえるような接し方、関係性を大事にしています。『他の弁護士なら、もっと早く仕事につなげられるだろうな』と思うこともしばしば(笑)。でも、それが今の私らしい弁護士としてのスタイルなのです」
来所する相談者に対しても、決して煽ったりしない。
「相続や離婚など、家族や男女の問題は、こじれると長引きます。相談者にとって何が利益かを考えると“できる限り、もめずにまとめる”が一番。当然、戦うべき時は戦いますが、語弊を恐れずにいえば“戦わない弁護士”といわれてもいいと思っているくらいです」
そんな柔らかく、しなやかな弁護・仕事スタイルが竹森弁護士の特徴だ。最後に事務所の今後について聞いた。
「元々、私が弁護士として携わりたいと思っていたのは、医療機関のサポートでした。病院は人が究極に困った時に訪れる場所。常によりよい場所を目指してほしいし、そのお手伝いをしたい。もともと渉外事務所時代も、病院関係や薬事法が絡む業務を担当させてもらっていました。独立後しばらくは、幅広い分野の案件を必死でやってきましたが、実は昨年、乳がんが見つかり、入院して手術を受けたんです。幸い初期だったので仕事にも無事復帰できましたが、病院側の法務に携わりたいという思いが再燃しました。まずは手術の同意書等の書面や労務管理などを手始めとし、病院関連分野を開拓していきます。また、経営的には、事務所運営を安定させるために、優れた人材を採用し、規模を拡大していきたい。私自身“ワークライフバランスの充実+稼ぐ”というのは大事なことだと思っています。ただし、そのためには必死で頑張る時期も不可欠。明確な目標と覚悟を持って『この分野を開拓したい』『地方で開業したい』と考える弁護士を積極的に応援できる事務所にしていくことも、一つの目標です」