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河村 敦志 Atsushi Kawamura
東京あおい法律事務所 
パートナー弁護士
第二東京弁護士会所属

河村 敦志

銀行でのリスクアドバイザリー経験を生かし、
リスクプロファイルの“見える化”で
能動的かつ健全な経営をサポート

東京あおい法律事務所 パートナー弁護士

資源高、原材料高に加え、急激な円安もあって、6割超の企業が業績へのマイナス影響を感じている(2022年7月帝国データバンク調べ)。また、脱炭素やデジタルトランスフォーメーションが叫ばれ、目まぐるしく変化する経営環境下で“先を見通す力”が必須の時代において、弁護士は、紛争解決のみならず、経営のよきアドバイザーとしての役割が求められている。銀行員時代にリスクアドバイザリー業務を経験し、これまで多くの経営者に数々の有益なアドバイスを行ってきた河村敦志弁護士は、まさにその役割に任じている一人。そんな河村弁護士の“これまでと、これから”を聞く。

弁護士の道

金融業界の“激動期”を経て法曹界へ

銀行員時代は、企業が有するデリバティブ(金融派生商品)などの価格や様々なリスクを算出してレポートしたり、金融当局を含め、各機関や企業が自身で管理できるようアドバイスしたりするリスクアドバイザリーという部署に所属していました。金融業界の“護送船団方式”廃止以降、多様なデリバティブ商品が発達してきたわけですが、お客さまのニーズをしっかりとくみ取り、頭を使って共に管理手法を考え、市場リスクや信用リスクなど計量のための数値を得やすいものから、オペレーショナルリスクなどの計量が難しいリスクまで、様々なリスクの発生状況を分析し、納得して導入していただけるプロジェクトに仕上げるという仕事は、非常にやりがいがありました。
私がロンドンの現地法人に赴任した年に山一證券が破綻、相前後して日本版ビッグバン(金融大改革)も本格化。そうした金融業界の環境変化を銀行員として肌で感じる一方、学生時代に法学部および大学院で法律を学んでいたこともあって、「弁護士に挑戦する道もあるのでは」と考えるようになりました。そこで、ロンドン赴任中に一念発起して司法試験の勉強を開始。司法改革で日本にも法科大学院ができたことを機に、ロースクールを経て司法試験に合格、金融業界から法曹界へと転身しました。

得意分野

高度な金融の知見を生かして経営者を支える

私の得意分野は、金融法務、企業再編・M&A、事業再生・倒産などです。お客さまは金融関連企業をはじめ、製造業、不動産関連、サービス、医療関連と様々。大手企業をはじめ、中堅中小企業も数多くサポートしています。事業を行っていれば、業種・規模によらず“ヒト、モノ、カネ”の問題が必ず生じます。私の場合、特にこのうちのカネ(金融)に関する問題解決のお手伝いで、元銀行員という特性(視点・経験)を生かせていると思います。
現在はだいぶ沈静化していますが、数年前、「為替リスクを避ける」という名目で金融機関が売り出した“為替デリバティブ商品”を買い入れた中小企業(経営者)が、その後の急激な円高で多額の損失を出し、資金繰りに窮した結果、破産申立が急増、社会問題になった時期がありました。その時の中小企業側の対応は、金融機関を相手とする訴訟またはADR(裁判外紛争解決制度)が一般的でした。
私のクライアントにおいても、あきらかに不要なデリバティブ商品を多数契約してしまい、ADRで解決したというケースがありました。その際、相手方が提示してきた和解金の額に対して、簡易的に、ブラック・ショールズ・モデル(BS式)というオプション価格算出モデル(オプションの価値を解析的に算出する手法)およびこれを改良したモデルを用いて計算した理論値などの具体的数値を参照しつつ、交渉を進めました。相手方(金融機関)と対等に、なおかつ相手方の専門領域に踏み込むかたちでの交渉です。それができたのは、銀行でリスクアドバイザリーという業務経験を積んだおかげです。
一方、そこまで専門領域に踏み込まなくても、BS(貸借対照表)、PL(損益計算書)、CF(キャッシュフロー計算書)などをもとにした“おカネの流れ”(資金繰り)から、その企業にどんなリスクあるいはどんなチャンスがあるかを見いだし、アドバイスをすることもよくあります。売り上げ、総利益、営業利益、経常利益……と、それぞれ切り分けて数字を見ながら、企業の状態を測ることが“元銀行員”として身についているようです。これと同じように、問題の“切り分け”や、事態がもつれた原因を分析・解析し、“数値化あるいは見える化”することが一番の得意かもしれません。

  • 弁護士 河村 敦志
    東京あおい法律事務所代表の森島庸介弁護士と(写真右)

こだわり

戦略、作戦、戦術を練って勝ちにいく

弁護士 河村 敦志

私は、どんなに複雑化して難解に思える事態でも、まず問題を切り分け、切り分けたそのレベルごとに、「戦略、作戦、戦術」と3つの視点それぞれをあてはめて対応法を検討すれば、解決の道筋が必ず見えてくると考え、実行しています。前述のADRの交渉段階では、まず“戦略”の視点で、その企業の商流からすると、そこまで大きなボリュームの“為替デリバティブ”の取引は不要であることを見いだし、これをもとに交渉をする“作戦”を立て、BS式(およびその改良版)を用いて理論値を計算するという“戦術”を駆使。結果、クライアントが納得する結論に至りました。

近時は、新型コロナ禍の影響などもあってか、サービス業や医療法人のクライアントからヒト(労働)の問題もよくご相談いただきます。規程類や制度の見直しのほか、労働組合との団体交渉も。しかし、私自身に団交の経験が十分になかった時は、高校の先輩の社会保険労務士と力を合わせて、団交の場に臨みました。この時は団交という“戦場”において、組合側の“ブレーン”と“ソルジャー”をその場で瞬時に見極め、それぞれへの対応の仕方を変えるという“戦術”を用いて、結果的に交渉を有利に進めることができました。

また、個人のクライアントも多数サポートしています。勤務先である医療法人の役員として個人保証をしていたクライアント(医師)が、その医療法人の経営悪化に伴って保証債務の履行を求められてしまいました。ご高齢のため有料老人ホームへの入居が決まっており、その契約上の都合で、破産回避が必須でした。大口の債権者は金融機関であったことから、経営者保証ガイドラインに従って特定調停を利用して、破産手続を選択せず、一定の資産を残す形で(一部の債権者とは手続外で同条件の和解をして)保証債務の整理をすることができました。破産せずに、ある程度の資産を手元に残すことができたわけです。この時は、特定調停という手法を使うという破産手続を用いない“戦略”目標があるなかで、一定の資産を残すために経営者保証ガイドラインに基づいて特定調停を用いるという“作戦”が機能したのだと思います。

物事を実行するにあたり――特に紛争回解決する際には――“資源”が必要です。“資源”の代表例の一つは、紛争解決手段を利用するために用いることのできる“おカネ”です。また、クライアントが紛争の相手方に対して持っている、何らかの有利な事情も“資源”の一つと言えるでしょう。こうした“有利な手持ちのカード”を持っていると、クライアントは、そのカードを切りたくなることが多々あります。しかし、トランプゲームを思い起こせばわかるとおり、手持ちのカードをいったん切ってしまったら、取り戻すことはできません。切ってしまってから後悔しないために、「今このカードを切るべき時かよく考えましょう」「カードを切った時に何が起き得るかをしっかり考えてからやりましょう」と、丁寧に一つひとつ対話を重ね、お客さまが納得できる“戦略、作戦、戦術”を練ったうえでどのように“資源”を使うべきか答えを導き出す――それが、私のこだわりです。

展望

数学的手法や統計的手法を用いて明解な課題解決を目指す

私は、「数学的な手法や統計的な手法を自分自身の仕事の武器にしたい」と考えています。ADRでの交渉段階での“戦術”が一例ですが、ほかのプラクティスに広げていくことで、もっと明解かつ様々な立場の人たちが納得する解決が得られるかもしれないからです。そこで、まずは公刊物からデータを得ることができる刑事事件で、そうした手法の活用を試みています。例えば控訴事件などで、「刑が重すぎる(量刑不当)」と主張する際に、過去事例から同種事件を集め、量刑の平均および標準偏差から(裁判官にもわかるように)一審での量刑の偏差値が高すぎることを示す――といった具合です。

また現在、信用金庫の監事とベンチャー企業の監査役として、それぞれのコーポレートガバナンスや、コンプライアンス強化のお手伝いもしています。そのように、企業のリスクマネジメントに積極的にコミットする活動も進めていきたいと思います。

月並みですが、法律の力、日本語・英語などの言葉の力(および数学・統計の力)、過去の経験から培った金融的な知識・見方といった、自分の持てる力をフル活用しつつ、実際に今困って相談に来られる方々、そして潜在的に困り事を抱えている方々も含めて、少しでもよりよい状況がそれぞれに訪れるよう、全力でサポートして参ります。

  • 監査役を務めている企業にて

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自社が行っている業務を分析してリスクを数値化/図示し、変動の可能性を見積もることで、これまで見えていなかったリスクの種類や量を、その発生頻度と損失額を見積もることによって明らかにする――そうした自社のリスクプロファイルを、一度つくってみることをお勧めします。そこに法律的な問題が絡むなら、私にご相談いただくもよし。おカネの問題なら金融機関への相談を勧めますし、ヒトやモノの問題なら保険をお勧めするかもしれません。貴社の事業を構成する“ヒト、モノ、カネ”の問題をいったんすべて俎上に載せて、数値化・見える化したうえで、問題を切り分ける作業、およびその対応方法を、ぜひ一緒に考えさせてください。また、金融関連の高度な専門知識を必要とする場面などでお声がけいただき、リーガルサポートをすることも多々ありますので、セカンドオピニオンとしても、気軽にご相談ください。

※取材に際しては撮影時のみマスクを外していただきました。