近年携わった国内の労務案件の中で、先進的な取り組みの例として、 “人生100年時代”に備えて、会社を早期退職して個人事業主として活躍する場を提供し、新規事業創出のきっかけづくりを目的とする――といったことがありました。70歳までの継続雇用が努力義務となり、“働き続けられる環境の整備”が国内企業に求められている昨今、将来の最適な組織運営のための準備として、ミドルからシニア社員の雇用のあり方を検討・議論し、労働法の観点から助言しました。労使間の紛争といった事後的な処理も多い中で、前向きな新しい取り組みに関与することができ、刺激をもらいました。
現在、日本企業は“少子高齢化による労働人口の減少”“長時間労働の増加”“物価上昇するも賃金は上がらず”“正規雇用労働者と非正規雇用労働者の賃金格差”など、様々な課題に直面しています。そして「働き方改革関連法」(2018年)の公布、「コーポレートガバナンス・コードの改訂」(2022年)、「人的資本の情報開示」のための「人的資本可視化指針」(2022年)、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023改訂」といった、日本経済と日本企業の価値・競争力を高め、直面する課題を解決していくための法整備や指針の打ち出しが継続的に行われています。また、有価証券報告書を発行する上場企業においては、2023年3月期決算から人的資本の情報開示が義務化されるなど、経営における“人的資本”の重要性が注目を集めています。経営戦略としての新しい人事制度の導入を検討される企業も増えてきていますが、人事制度の変更においては労働法の規制にも目を配る必要があります。紛争対応や危機管理的対応はもちろんですが、人事面での新しい取り組みについても、法務・人事・労務、経営層などの連携を促す橋渡し役となり、提案していきたいと思っています。