一般企業法務や相続なども取り扱うが、特に損害賠償請求事件、保険金請求事件といった訴訟案件を多く引き受けるのが同事務所の特徴だ。所属弁護士のなかでも、同分野を多く担当する吉野慶弁護士に、過去に関与した案件についてうかがった。
「保険金請求事件でいえば、モラルリスク案件と呼ばれる保険金の不正請求事案を相当数担当してきました。印象に残っている判決のほんの一例をあげると、傷害保険の被保険者が車内で一酸化炭素中毒死したという事案について、事故当時、車外にいた被保険者の兄が故意に事故招致をしたと認定し、保険金請求が棄却されたという富山地裁の判決。また、火災保険の契約者が所有するゴルフ場のクラブハウスで火災が発生し、保険金10億円あまりが請求された事案で、契約者の故意の事故招致が認定され、保険金請求が棄却された東京高裁の判決などがあります」
このように、実質的にはいわゆる保険金殺人や保険金取得目的放火事案でありながら、刑事事件としてほとんど立件されない事案について、保険会社側の代理人として裁判に進展した場合の見とおしやリスクを考慮しつつ、民間の保険・事故専門の調査会社と連携して証拠を集めて保険金支払いの可否について判断し、裁判になれば主張立証活動をしていく。事案によっては、専門家に法医学や火災に関する鑑定を依頼したり、各種再現実験なども行いながら訴訟活動を進める。
「なお、前述の富山の事案では当初、警察は事故と判断して問題視しなかったのですが、保険会社に保険金請求があり、調査が必要となって証拠を集めていったところ、兄が弟に酒を飲ませて車内で寝かせ、豆炭を焚いたまま車内を密閉状態にして一酸化炭素中毒で殺害した可能性が高いと判断し、保険金の支払いを拒否したのです。そうしたところ、兄から保険金請求訴訟を提起され、最終的に富山地裁で上記判決が出たので、『さすがにこれは殺人だから、警察のほうでも動いてほしい』とかけあい、結果的に警察が立件し、被保険者の兄を殺人容疑で逮捕、有罪に至りました。この事案については、ありきたりかもしれませんが社会正義の実現に寄与できたわけで、弁護士として大きなやりがいがありました」(吉野弁護士)
こうした事案以外にも、同事務所が関与した様々な裁判の判決が、多数の公刊物に掲載されている。
「多様かつ多数の案件にかかわり、1年目から訴訟対応を任せるなど、勉強の機会がふんだんにあります。当事務所であれば、入所から7~8年ほどで一人前の弁護士になれると思います」(吉野弁護士)
入所6年目の萩生田知法弁護士は、同事務所の長所を次のように語る。
「早くから任せてもらえる風土ですが、“一人きり”ということはありません。案件規模にもよりますが、2名体制が基本です。私は、吉野弁護士と協働する機会が多く、尋問での質問の仕方を間近で見る機会も多々。事案によって弁護士の組み合わせを変えるため、所内ほぼすべての先輩弁護士と協働しますし、各弁護士の得意分野が異なるので、それぞれの最先端の知見を学ぶこともできます。また、当事務所の弁護士はいい意味で、必要以上に他人に干渉しないタイプが多い。かといって気難しいわけではなく、相談しやすい弁護士ばかりです。コミュニケーション上のストレスを感じない組織であることも、当事務所の長所といえるでしょう」