Vol.12
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前列左から松岳祥児弁護士(新61期)、岡野武志弁護士(61期)。後列左からスタッフの松井正広氏、法科大学院生の岡嘉紀さん(研修中)、Webコンサルタントの高橋忠正氏(株式会社Total Art Development代表取締役)。「若い事務所なので自由闊達(かったつ)な雰囲気。刑事事件を扱っているため1年もいれば所員間である程度話ができるようになります。皆で共通の話題を持てるのがいいですね」(岡野弁護士)

前列左から松岳祥児弁護士(新61期)、岡野武志弁護士(61期)。後列左からスタッフの松井正広氏、法科大学院生の岡嘉紀さん(研修中)、Webコンサルタントの高橋忠正氏(株式会社Total Art Development代表取締役)。「若い事務所なので自由闊達(かったつ)な雰囲気。刑事事件を扱っているため1年もいれば所員間である程度話ができるようになります。皆で共通の話題を持てるのがいいですね」(岡野弁護士)

STYLE OF WORK

#18

アトム東京法律事務所

私選の刑事弁護に特化した若き法律事務所。ネット戦略と早期受任でニーズに鋭く切り込む

刑事事件が100%。依頼人とのコミュニケーションを大切に強みは早期の受任

アトム東京法律事務所
「今考えているのは『刑事弁護人の使い方』という本を書くこと。被疑者国選の対象事件が拡張され刑事弁護人が氾濫(はんらん)する中で、弁護士に何をどこまで頼むべきなのか、何をしてくれる弁護人がいい弁護人なのか。依頼者の判断材料となる情報を世のなかに広く提供したい」

「起業を成功させるためのノウハウに『ナンバーワンになる』というのがありますよね。たとえば日本で一番高い山はすぐに分かりますが、二番目になった途端に名前が出てこない。それを弁護士業界で考えたら、刑事事件の分野には技術も経験も豊富な先生はいらっしゃるけれど、一般市民からは誰が刑事弁護に熱心な弁護士か見えにくい。であれば刑事弁護専門を打ち出せば依頼者のニーズを取り込めるはずだし、事件を受けることで経験も自然と身についていく。そう確信して事務所を立ち上げました」(岡野武志弁護士・現61期)

私選の刑事弁護専門を看板に昨年9月、産声をあげたアトム東京法律事務所。設立にあたっては集客の仕方が肝と考え、ウェブマーケティングを徹底研究。数カ月をかけて作り上げた入魂のサイトは実例などの具体的な情報、万全のSEO対策で数多くの依頼者を呼びこんだ。

設立からわずか1年で受任件数は年間100を優に超えるペースに。最近では薬物問題などに関するメディアへの出演依頼も急増している。

アトム東京法律事務所
練り上げたサイトは岡野弁護士が文章を、高橋氏がデザイン、コーディングなどを担当。「配慮したのは一般の方からの視線をくみ取ること。敷居を下げて、事務所の中身が具体的に見えるようなサイトづくりを目指しました」(高橋氏)

「扱うのは刑事事件が100%。内容は薬物問題、性犯罪、交通事故、財産犯がそれぞれ4分の1です。依頼は何らかの手段でサイトを見た方がほとんどで、弁護人を替えたいという相談も結構あり、原因の8割はコミュニケーション不足。たとえば身柄を拘束されていて家族にこれを伝えておいてほしいと弁護人に話しても、結局家族には届かない。こういったケースは多いですね」。依頼者との信頼関係を崩さないために、報告など細かい部分も徹底して行うのが岡野弁護士のやり方。被告人の言い分は、経験則でこれはダメだと切り捨てず、気持ちをくんで意見書に反映させる。

同事務所の強みは早期の受任。「事件を放っておいて被害者との関係が悪化し、処罰感情が高まり起訴になるケースがありますが、早い段階から着手すれば不起訴で落とせる確率は上がります」。

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    「たとえ有罪に終わったときでも、しっかりと感謝される活動をする」――これが岡野弁護士のモットー。明らかに実刑だと思われる場合でもどう実刑に持っていくか。依頼者にとって最善の結論にどうたどり着くかが、刑事事件の弁護人を務める大切なポイントだという
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    国会議事堂の裏に位置する新オフィス。広々としたフロアの中央には一直線にデスクが並ぶ。コミュニケーションがスムーズに図れるよう弁護士のデスクは事務スタッフの対角に配置。パーテーションのないレイアウトは開放感を感じさせる

日々感じているのは「あきらめモードでやって来る相談者が多い、実際に話を聞くとまだどうにでもなる事件は多い」ということ。振り込め詐欺で3件起訴され、3件目が起訴される直前に弁護人を替えたいと依頼を受けた事件。最終的に実刑にはなったが、最初の弁護人が求刑8年程度と言っていたのを2年6カ月の判決に持ち込んだ。こうした依頼者から届く感謝の手紙は日を追うごとに増えている。「事件はとても流動的で、相談者は緊急性が最も高まったタイミングで飛び込んで来る。そこですぐに始められるのが、この仕事のやりがいです」

現在弁護士は2名。事件は主任制で各自が受け持つ。松岳祥児弁護士(新61期)は、働く魅力を「自由に意見が言えるところ」と語る。この8月にはオフィスを移転。広くなったスペースにはこれから入所する62期2名のデスクも用意してある。今後は「法人化と大阪事務所の設立を計画している」という岡野弁護士。数ある法律事務所のなかでダントツの刑事事件数を誇る同事務所。課題を聞くと「タフな人材を育てること」と笑顔で答えてくれた。

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    刑事弁護を選んだのは弁護士業のなかで非常に基本的な部分であるにもかかわらず、それに特化している事務所がなかったから。設立から1年、業績は順調に伸びている。「起業の教科書どおりにやっただけ。他業界では当たり前の基本的なことしかやっていません」(岡野弁護士)
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    手紙につづられた感謝の言葉。その一文字、一文字に込められた依頼人の思いが、次の事件へと気持ちを奮い立たせる。振り込め詐欺や痴漢などの場合は弁護人が入ることで被害弁償がはかられ、被害者から感謝されることもあるという
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    会議・打ち合わせ室は2部屋。若い事務所らしく、シンプルかつ清潔感あふれるインテリアでまとめられている。人材が育てば大阪事務所を開設すると意気込む同事務所。今後の展開もしっかりと描いている