大貫弁護士に、これまでの印象深い事件を尋ねたところ、次の2つを挙げてくれた。
「弁護士登録直後の頃、“オーバーステイの外国人が日本人と結婚してもビザが取得できないこと”に問題意識を持ち、数人の弁護士と共に弁護団を結成しました。この活動を受けて、92年に入国管理局の内部基準が改正され、以後、1年間に数千〜1万件が合法化されるようになりました。また同じく入管関係で、日本人女性と結婚したオーバーステイのバングラデシュ人側の代理人となり、勝訴率2%といわれていた国を相手とする行政訴訟で勝訴したこともとても思い出深い仕事ですね」
そのように数々の外国人事件に一石を投じてきた大貫弁護士。現在、国内のオーバーステイ外国人就労者数は、大貫弁護士が独立した20年前に比べ、約4分の1に減少している。つまり、外国人にとって、合法的な立場で定住できる環境整備が進んだといえるだろう。
「昨今は外国人の定住化が進み、国際離婚・相続、および離婚に伴う親権や子どもの国籍問題も多く扱うようになりました。外国人との子どもの問題に事務所として対応しているのは、とても少ないと思います」
もちろん、日本人が依頼者となる事件も扱うが、受任業務の約8割が外国人に関する案件。入管事件、刑事事件、家事事件、国籍に関する問題、労働事件と、在日外国人のコミュニティなどを通じて口コミで寄せられる依頼、大使館からの紹介で受任する事件が非常に多いという。