こうしたサービスと、大本弁護士自身の姿勢が事務所をかたちづくる。その姿勢とは、「どんな相談が来ても断らない」だ。相談はメールやファクスでも受け付けるが、電話も365日24時間対応。夜間休日の電話の受け手は大本弁護士自身。休みなく電話を受ける体制を敷くと所員が気の毒、しかし困っている人に窓口は常に開いておきたいという理由からで、夜中3時に新規の相談が来たこともあったそうだ。また1件1500円の書面作成も厭わない。支払いが困難な依頼者には着手金の分割払いを提案することもある。
「“入り口”が小さくても、相談者が困っていたら“基本、やる”が私のスタンス。その代わり受けたら途中でやめない、やめさせたくない。確かに経営者の立場からすると、着手金だけで終わってしまっては経営が立ちゆかない。しかし何より顧客の信頼を裏切ることになるのは、弁護士としての自分を許せない。ですから所員にもミスの報告は会議で必ず行ってもらいます。わずかなコミュニケーションの行き違いによるクレームなどが出ないよう、目配りします」
事務所へ依頼があった案件は、最初から弁護士が聞き取り対応する。その後、大本弁護士と内容を協議し、担当弁護士を決め任せるが、“交渉”の場面では大本弁護士が出張ることが多い。
「相談者が弁護士に求めるのは、法律の知識以上に相手方との交渉能力。しかし残念ながら判例や法律知識を教える授業はあっても、弁護士の交渉術を教える授業はない。所員にはOJTで、私の交渉を見て学んでもらうのです」
過去に受任した不動産取引事件、巨額詐欺事件、いずれも被告側の弁護に立ち、被告に有利な判決を勝ち取ったものの成功報酬を支払ってもらえなかったという苦い経験もある。「失敗ばかり」と笑う大本弁護士。しかしそれが糧となって現在がある。
「若い弁護士には、専門性もさることながら“弁護士としてあるべき姿”を保ち続ける代理人・弁護活動をするよう指導しています。お金を稼ぐために弁護士になったのではないという、志を忘れるなということです。たくさんの信頼を得ることで仕事も増えるという側面はありますが、それを第一目的にするのではなく、一つひとつの案件を大切にクライアントと向き合って処理していくという基本を、まずはじっくり実行し、継続していくことが大切。それができた時に初めて、“法律を使って”弁護士が仕事をするやりがいを得られると思うのです」