弁護士会などで公職・公務に就く弁護士も多い、企業法務を業務の中心に据えつつ委嘱業務も手掛ける弁護士事務所

半蔵門総合法律事務所は2003年4月、児玉公男弁護士(故人)、奈良道博弁護士らが中心となり、複数の法律事務所が統合して創設された。両弁護士が事務所をつくるにあたり抱いていた共通の思いは、「組織と個の融合」だ。
「一つの組織として動く以前に、それぞれの事務所の成り立ち、歴史、考え方や持ち味を尊重し、事務所内の人間関係をよりよく保ち、信頼関係を築く。“組織という大きな網”を被せて束縛するのではなく、ゆったりとしたつながりで、しかしやるべきときは絶対の信頼を持って協働する。それに立脚するスケールメリットを生かして、あらゆる事案に対応できる事務所をつくる。これが設立時のコンセプトです」と、奈良弁護士。
現在、同事務所は奈良弁護士、齋藤祐一弁護士、岩田拓朗弁護士、野﨑修弁護士をそれぞれ代表とする4つのユニットで構成され、どのユニットも企業法務を業務の中心に据えつつ、破産管財人など裁判所から委嘱される業務も手掛けている。日本債券信用銀行破たんの際、関係会社の破産管財人を数多く務めた奈良弁護士は不動産に強く、齋藤弁護士はトンネルじん肺訴訟やC型肝炎薬害訴訟(いずれも企業側)に長らく関与、岩田弁護士は証券や不動産の事件を多数手掛け、野﨑弁護士はエネルギー関係の法務を業務の中心としている。

また、公設事務所の所長経験を持つ島田一彦弁護士がおり、製造業や流通業に強い井上裕明弁護士、行政事件を多数手掛ける三浦繁樹弁護士、保険法務に詳しい北村聡子弁護士、知的財産法に強い佐久間幸司弁護士など、「多種多様な人材が事務所の理念に共鳴して集まっています」と齋藤弁護士。野﨑弁護士も続ける。
「若手弁護士は、定期的な勉強会などを通じて切磋琢磨に努めており、企業法務に加えて、“市民のための、市民の権利を守る”分野にも力を入れていきたいと考えているようです。離婚事件や相続事件を含め、各ユニットに“この業種・分野が得意”という人材がいて、案件に応じ事務所全体で協働します」
“個を大事にし、ゆるやかにつながる”は、事務所運営にも反映される。人材採用も、ユニットごと。ヒエラルキーやトップダウンがなく、各ユニットが判断をするので、意思決定のスピードも早い。
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201号執務室は奈良弁護士以下4名。島田弁護士、奈良ルネ弁護士(妻)とは大学の先輩後輩の関係で50年来の付き合い -
202号執務室には書棚の横にソファセットが。打ち合わせのほか、事務所泊まり込み時にはこのスペースで仮眠をとることも
「そうしてユニット間で適度な距離感を持ちながら、バランスよく業務に取り組んでいます。大きな事件を持つ弁護士一人に皆でぶら下がるということがないので、ユニットごとに各弁護士が責任を持って事務所全体を支えています」と、野﨑弁護士は語る。
同事務所のもう一つの特徴は、弁護士会などで公職・公務に就いている弁護士が多いことだ。児玉、奈良両弁護士が第一東京弁護士会会長、日弁連副会長を務めたほか、島田、齋藤、井上の各氏も、弁護士会の副会長職を務めた。齋藤弁護士を筆頭に裁判所調停委員を務める者も多く、三浦弁護士は現職の司法研修所刑事弁護教官だ。奈良弁護士は言う。
「会務に向かいやすい雰囲気は事務所全体にあるでしょうね。弁護士会活動の中で『デキるな』と思った弁護士は、まず例外なく仕事もできる。委員会できちんと話せるか、ペーパーをきちんと書けるか、弁護士会で問われる能力は、普段の仕事でも問われるものですから。会務はボランティアなので、弁護士として熱い思いがなければ続けられない。しかし続けた先には多くの出会いがあり、業界における視野、人生における視野が広がり、目に見えないかたちのプラスが必ず得られる」
親分肌でバランス感覚に優れていたという児玉弁護士、品と指導力に溢れる奈良弁護士の両弁護士が目指した事務所の在り方に共感し、個性豊かな弁護士が集結する半蔵門総合法律事務所は、4つのユニットが協働しながら、太い幹から新たな枝葉が伸びるように、次のステージに向けて有機的なつながりを育み続けている。
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301号執務室は岩田弁護士以下4名。新人教育もユニット内でのOJTが基本だが、ユニット横断的に相談・指導を行い、若手同士の横のつながりも強い。執務室の雰囲気が各部屋異なるのも、パートナーの個性が現れているようで面白い -
402号執務室は齋藤弁護士以下5名。齋藤弁護士は児玉弁護士の下でイソ弁を経た後、児玉・齋藤法律事務所を共同運営。301号執務室の岩田弁護士も同事務所出身 -
ゴルフコンペ、忘年会など事務所全体行事のほか、奈良弁護士らと若手弁護士が酒を酌み交わす機会も多い