また、ほかのNPOと連携して性風俗店で働く女性向けに、毎月待機部屋を訪問して無料法律相談も実施(通称「風テラス」)。法律相談をきっかけに債務整理を引き受けることもある。
「大事にしているのは多様性。違うものがたくさんあることがこの社会の厚みであり強さだと考えます。それが許容され、保障され、〝そのままでいい〞が認められる社会が目指すべきところではないでしょうか。障がいといっても一人ひとり環境も事情も違う。多数派に無理に合わせたり抑圧されず、そのままで生きられるということを、法的な側面から解決し、支援できるよう仲間と取り組んでいます」
また髙橋春菜弁護士は、仕事のやりがいを次のように語る。
「マイノリティの属性を持つ方は、気づかれていないだけで、実は社会の中に大勢おられます。例えば一般民事事件の相談でも、どの弁護士ともうまくいかずに当事務所にたどり着く方がいますが、その背景に発達障がいが隠れている場合があります。こちらが気づくことさえできれば、ほんの少しの配慮でスムーズにコミュニケーションがとれるようになる。きちんと向き合えるようになると、これまで〝厄介なクレーマー〞と扱われていた方が、実はまともな権利主張をしていたのだと気づかされたこともあります。多数派には理解されない何かを抱えた方、心の中に生きづらさを抱えた方、理解されづらいけれどその人なりの合理的な考えや言い分を持っている方など、その人たちが抱えているものを多数派にもわかるよう通訳し、橋渡しすることが私の役割であり、やりがいです。目の前の依頼者に対してそのような役割を果たすことで、多様性ある社会を実現することにつながると思っています」
浦﨑弁護士、髙橋弁護士ともにあらゆる人が同等に「司法アクセス」できるよう取り組む。浦﨑弁護士は、事務所の未来の姿を次のように話してくれた。
「興味・関心・価値観を共有できる弁護士や福祉専門職を巻き込み、その力で多様な活動をしていきたい。弁護士50人とソーシャルワーカー50人の100人規模が理想。1カ所の事務所ではなくネットワークでもいい。これからの若い専門家たちにも参加してほしい。私は気づけなくても、感性ある若手弁護士や社会福祉士なら気づける問題がきっとある。そういうものをキャッチしながら発信し、突破していくための仕組みづくり、事務所づくりをしていきたい。ネットワークを生かし、障がいのある方の支援、ホームレス、LGBT、性産業の問題など、世の中の様々な課題の解決に貢献していきたいと思います」