大阪市中之島にオフィスを構え、西日本で唯一国際企業法務においてTERRALEXに加盟する

大阪市のビジネス中心地、官公署にも近い中之島にオフィスを構える、きっかわ法律事務所。創立者は、元裁判官であり立命館大学で教鞭も執った吉川大二郎弁護士で、民事保全分野の草分けとして知られる。2代目代表を務めた原井龍一郎弁護士は、弁護士として民事保全法の制定に携わった人物だ。1942年の創立以来、労働・倒産・公害など多様な分野で、社会インフラを扱う大手企業の事件に事業者側代理人として関与し、現在も損害賠償などの被告事件に多くかかわっている。その背景を、小原正敏弁護士は、こう話す。
「例えば、大きな消費者被害が生じた公害・薬害事件で企業側の代理を務める場合、単に企業が勝てばいいという考えに立つことはしません。和解による早期解決と原告側の救済を促し、企業の社会的使命を世の中に理解していただく。それが吉川弁護士の基本方針でした。日本社会をバランスよく成長させるには、裁判のなかで公益企業の主張も代理していく必要がある、と。健全な社会発展への貢献姿勢を受け継いでいるのです」

那須秀一弁護士も、「そうした損害賠償事件は、因果関係や過失の認定、法的な評価が難しい事件が多く、一つひとつの訴訟対応がオーダーメード。多くの難事件に取り組み、経験を積み上げてきたことが事務所の強みになっています」と付け加える。同事務所は、企業活動の複雑化に伴って生じた新法分野にも、いち早く挑んできた。独禁法分野では再販売価格維持に関する松下電器産業審決事件、知的財産分野ではパーカー万年筆事件、渉外分野では米国連邦最高裁判所まで争った松下対ゼニス事件を担当し、製造物責任紛争などにおいても法制定以前から取り組んだという素地がある。戦前・戦後と裁判手続を中心に行ってきたことで、裁判所からの信頼も篤い。「主張にしても立証にしても、決して防御のみに終始するのではなく、訴訟の審理においても〝審理の充実〞を重視した取り組み姿勢であることが特徴かもしれません。〝仕事の仕方が上品〞といわれることもあるんですよ」と笑う、小原弁護士だ。
ここでのやりがいを、那須弁護士と山本幸治弁護士に聞いた。
「一つは〝時間を贅沢に使う風土〞でしょうか。打ち合わせや準備書面の作成など時間をかけて丁寧に行うので、じっくり仕事に向き合えます。また各自が興味を持った分野で様々な経験をさせてもらえます。私は入所後、独禁法に興味を持ち、公正取引委員会に出向させてもらいました。加えて当事務所にはシニアカウンセルとして独禁法のエキスパートや元裁判官の弁護士も多数在籍していて、迷った時は気軽に相談させてもらえる環境です。そうやって知見を深められることもやりがいにつながっています」(那須弁護士)。

「私は、法律以外の土質学や物理学を学ばなければ尋問できないような事件も多く担当しています。そうした際に、自ら学ぶことはもちろんですが、クライアントも協力してくれて、専門家を連れてきてくださったり、積極的に時間をつくって尋問対策や裁判手続に関する準備に協力してくださいます。そうしたクライアントとの密接な関係を構築し、結果を出すことに、やりがいを感じています」(山本弁護士)
同事務所の若手弁護士の教育方針は、「初めのうちはなんでもやる」と、小原弁護士。
「アソシエイトについては3〜5年は特定の分野に絞らず、様々なパートナーと組んで仕事を経験してもらいます。そのうえでロースクール時代に学んだ分野や、本人が興味を抱いた分野について深掘りし、専門性を高めてもらっています。また顧問先などを招き、タイムリーなトピックを扱う『企業法務研究会』というセミナーを毎月開催していて、若手はパートナーの指導のもと、その講師を務めます。そうした場も含めて、本人の成長の機会としています」
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創立者・吉川大二郎弁護士が執筆した民事保全分野の著書(一部)。吉川弁護士は、囲碁九段、テニスは上級の“文武両道”の弁護士だった -
2017年12月25日、新事務所に移転。“大阪都心の玄関口”と呼ばれる、中之島エリアの超高層ビルにオフィスがある
創立者・吉川弁護士の精神を受け継ぎながら、次世代につなげていく一手として、小原弁護士は「国際企業法務、競争法、М&Aなどコーポレート全般、労働関係などのプラクティスに注力していく」と説明する。
「クライアントのニーズの変化に合わせ、特定の分野に深い知見や経験がある弁護士、つまり短時間で適切な回答が得られる弁護士を集めています。また、国際企業法務においてはTERRALEXに西日本で唯一加盟し、世界中の法律事務所と連携して業務を遂行。多様な分野で経験を積んだ弁護士とチームを組み、事件処理をしていきたいと考えます。我々が目指すのは、いわば中規模の専門性とサービスの質の高いブティックファームといったところでしょうか。時代と社会のニーズを敏感に察知し、良質なリーガルサービスをクライアントに提供するべく、今後も人材育成と組織づくりにまい進していきます」
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広々としたワンフロアの執務スペース。弁護士が合議などをしやすいよう、大きなテーブルを部屋の中央に配置することを検討中。職位に関係なく、弁護士は全員同じ広さの執務スペースが与えられる -
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